特集

友だちづきあいで育む子どもの社会性(2)

社会生活で欠かせないルールの順守も学年によって認識に変化が

――提出物の期限を守らない、平気で遅刻するなど、ルールを守らないことを心配する保護者の方も多いものです。ルールを守るのも社会性の一つとのこと。学年が上がると守るようになるのでしょうか。

 単純に「守るようになる」とはいえないんです。そもそも社会的ルールは、絶対に守るべき「道徳」と、状況によって変わる「慣習」に分けることができます。人を傷つけてはいけないというのは道徳、ブランコを順番に使おうといったことは慣習に入ります。
 慣習に対する認識は、学年によって変わります。幼児期から小学校低学年ごろの子の多くは、親や学校の先生が決めた慣習を、素直に「守らなくてはいけないもの」と認識しています。しかし学年が上がるにつれて、決められた慣習を、内容によっては疑問に思い、自分たちで慣習をつくってもいいし、状況によって変えてもいいと考えるようになっていきます。考える力が発達し、他律的から自律的な考えになっていくと言えるでしょう。小学校の道徳などの授業では、社会的ルールにかかわる葛藤が生じたときにどう考えるか、子どもどうしで話し合う機会もあると思います。「自分だったらこう考えるけれど、友だちは違うようだ」「なぜそう考えるのだろう」と思考を巡らせながら、自律的な考えへと発達していくのです。

――高学年になると、友だちどうしの暗黙のルールのようなものもできます。これも慣習でしょうか。

 はい、そうです。それが親や先生の決めたルールと大きくずれる場合、どちらを優先するべきかという葛藤が生じます。これも学年が上がると増えるもの。その葛藤もまた、バランスをとりながら自分のしたいことを選択するという、社会性の成長を促す経験になります。

保護者が「真摯に向き合うこと」が子どもの学びの支えになる

――子どもが社会性を学んでいくために、親としてはどんなかかわり方ができるでしょうか。

 日ごろから親子でよく話し、子どもの意見に耳を傾けておくことが大事だと思います。
 たとえば、家庭でルールを決めるときには、親が一方的に「こういうときはこうしなさい」と決めずに、「こういう場合はどうする?」などと子どもと話し合い、子どもの自主性を尊重しつつ一緒に決める。ルールを守らないときは、なぜ守らなかったのか、子どもの意見をきちんと聞くことが必要でしょう。

――コミュニケーションのとり方を教えるのではなく、まずは親子でコミュニケーションをとるということ?

 はい。親子の密なコミュニケーションは、子どもの自律性を促し、また家で学んだことを仲間と共有することで社会性をさらに伸ばします。
 それに、子どもどうしのトラブルが大きな問題に発展することもあるものです。普段から会話をして、トラブルがあったら話せる環境をつくり、子どもの友だち関係を把握しておけば、問題が小さいうちに把握でき、必要に応じて介入できます。
 お子さんは、自分の力で社会性を学んでいきます。親御さんには、その支えになって欲しい。そして間違った方向に行きそうになったら止める。それも社会性を育むうえでの親の役目だと思います。

⇒次ページに続く 「具体的な保護者のかかわり方をご紹介します」

プロフィール

酒井厚(さかい・あつし)

首都大学東京人文社会学部准教授。早稲田大学人間科学部を卒業後、2002年同大にて博士号取得(人間科学)。国立精神・神経センター精神保健研究所、山梨大学を経て現職。専門は発達心理学,発達精神病理学。主な研究テーマは子どもが他者に抱く信頼感と仲間関係の発達プロセス。日本パーソナリティ心理学会賞、日本子ども学会優秀発表賞等受賞。日本子ども学会の理事であり、2019年10月に首都大学東京で開催する第16回子ども学会議では大会長を務める。

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