「化学」2019年度センター試験分析

投稿日時:2019年11月5日

■分量と難度の変化(理科(2)…時間/1科目60分・2科目120分/1科目100点・2科目200点)  ・昨年に比べて難化した。また、マーク数は28→29と、ほぼ変わらず、分量は昨年並である。ただし、見慣れないグラフを理解する問題や、複数段階を考える問題、題意の把握に時間を要する問題などが多く、瞬時に正解を選べる問題は少ない。全体として負担感は重くなった
■今年度入試の特記事項 ・昨年と同様の大問の構成で、第1問・第2問が理論、第3問が無機、第4問が有機、第5問~第7問は高分子化合物の出題だった。2016年度以降、この形式が続いている。 ・高分子化合物について、昨年と同様に必答問題と選択問題の両方で出題された。選択問題の配点は、昨年に引き続き5点であり、理科4科目中で最低である。 ・昨年は1題であった配点5点の問題が、2019年は2題あった(第2問の問3、第3問の問5)。 ・定性的に考察できる力や、数的センスを試す問題が、例年以上に多く見られた。 ・計算問題は、計算しやすい値となるよう工夫されているものが多い。ただし、単純な計算問題だけでなく、グラフから読み取った値を用いる問題や、複数の計算を必要とする問題など、ミスを誘いやすい問題が多かった

■いま解いておきたい問題

・第2問 問1、第3問 問4
これらの問題のような、満遍なく、また俯瞰して理解しているかを試すような問題を、正確に解けるようになってほしい。
■大問別ポイント

 第1問  理論
問1、問3、問5は、基本的・標準的な知識問題であり、理系受験生であれば確実に正解したい。
問2のダイヤモンドの結晶格子に関する問題は、一度は解いたことがあるはずなので、原子数などを落ち着いて考えて正解したい。
問4の分子量を求める実験は、まったく見たことがないと理解するのに時間がかかるが、演習をしたことがあれば平易な問題であった。
問6は、ヘンリーの法則に関する基本問題で、時間をかけずに正解したい。

 

 第2問  理論
問1の熱化学方程式に関する問題で、エネルギー図を直接埋める形式で問われるのは目新しい。本問は、高度な知識や思考力を要するわけではないが、満遍なく理解していないと正答にたどりつけない。熱化学の総合的な理解を試す良問といえる。
問2は、平衡状態では正反応と逆反応の反応速度が等しくなることから、等式を立てられたかどうかがポイント。立式ができれば計算は平易。
問3は、溶解度積に関する見慣れないグラフを理解する必要があった。また、グラフから溶解度積を求めただけで安心してはならず、溶液を「同体積ずつ混合」していることから、表中の各濃度を半分にして判断する必要があった。複数段階を経なければならず、引っかかるポイントもあるため、難度は高い
問4は、電解精錬に関する基本的な問題。
問5は、水溶液の温度変化を文字式で考える問題で、難度は高く、時間もかかるだろう。

 

 第3問  無機
問1、問2は、基本的な知識問題である。知識は正確に押さえておきたい。
問3で、四つの配位子の配置については、やや盲点だったかもしれない。正答以外の選択肢が判断しやすいので、消去法であっても正解したい。
問4のbは、オストワルト法の反応を定性的に押さえられているかを試す問題で、理解できている受験生にとっては平易だが、苦手な受験生は考え込んでしまうだろう。化学を俯瞰して理解できているかが試された
問5は、溶解度積に見えるかもしれないが、量的関係の問題である。題意とグラフの意味を把握しないと解けない問題で、定性的・定量的な考察力も求められ、受験生にとってかなり難しく感じられただろう。また、両試薬の体積を動かしており、そもそも何を目的とした実験かがつかめず、類題もないであろうから、どこに着目して解けばよいかがわからない受験生は多かっただろう。

 

 第4問  有機
問1は、標準的な知識問題。
問2は、アルコールと金属ナトリウムの反応で発生する水素の物質量から、アルコールの物質量を求められるかがポイント。
問3は、必要な知識は基本的なものであるが、題意がつかみにくい。反応物と生成物の関係にあるもの二組は探し出せても、問われている内容を正確に把握できずに誤ってしまった受験生もいたのではないだろうか
問4では、題意からC4H8Oを考えるのだと読み解ければ難しくはない。ただ、アルデヒド基(ホルミル基)のC=Oがカルボニル基に含まれるかどうかの判断に迷うかもしれない。2018年度から使用されている改訂版の教科書では、その分類が判然としないものがあるため、解釈によっては選択肢1も正答となり得る。問い方をもう少し厳密にした方が、紛れがなく適切であっただろう。
問5は、発生する気体がメタンとわかれば問題ないが、メタンの発生方法は、日頃の演習でそれほど登場することはなく、盲点だったと思われる。また、「酢酸ナトリウム」という言葉につられて「酢酸カルシウムの乾留」を考えてしまい、アセトンと判断してしまった受験生もいたと思われる。

 

 第5問  高分子化合物
問1は、数的センスが問われる目新しい問題である。化学では定性的な判断ができるようになってほしいというメッセージともとれる。
問2は、標準的な知識問題。

 

 第6問  (選択)合成高分子化合物
問1は、標準的な知識問題。この範囲は勉強が追いついていない受験生もいたと思われるが、きちんと勉強してきた受験生にとっては即答したい問題。
問2は、式量の計算をせずに解ける問題で、落ち着いて取り組めば難度は高くないが、解答の方針を決めるのに時間がかかるかもしれない

 

 第7問  (選択)天然高分子化合物
問1は、標準的な知識問題。選択肢3の「転化糖」はやや細かい知識かもしれないが、正答が明らかなので、きちんと勉強してきた受験生にとっては即答したい問題。
問2は、非常に目新しい問題で、化学の力以上に、数的センスの有無によって出来が分かれたと考えられる。

攻略へのアドバイス

~センター試験攻略のために~

・早めに化学の個別試験対策に着手しよう。
個別試験対策がそのままセンター試験対策につながるので、高3の夏休みの終わりまでに、一通りの範囲を終えられるような計画を立ててほしい。とくに高分子化合物は手薄になりやすい。高分子化合物についても夏休みのうちに概要をつかみ、知識を整理しておけると理想的である。早期に一通りの学習を終え、入試レベルの実戦問題演習を行うためのペースメーカーとして、Z会の通信教育・本科「化学」の受講をおすすめする。
・早めにセンター試験の形式に慣れておこう。
高3秋になって焦るのでは遅い。センター試験での得点力を着実につけるためには、早めに形式に慣れておく必要がある。センター試験形式の問題と付かず離れずの距離を保つには、Z会の通信教育・専科「センター攻略演習セット」で月1回の演習がおすすめだ。また、Z会の書籍「センター試験実戦模試 化学」のような予想模試も併せて利用するとよい。

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