生物 – 共通テストの分析&対策の指針

投稿日時:2024年1月16日

Z会の大学受験生向け講座の生物担当者が、2024年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

 

共通テスト「生物」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


全体の傾向

●難易度は2024年に比べ易化した。2023年度より、設問数・マーク数が減るとともに、複数のマークを同じ選択肢から選択する設問があるなどして選択肢数も減っている。

●考察を要する問題の比率は下がり、また、難度の高い考察問題も減ったことで、負担感はかなり軽くなった。

●2021年度以降と同じく、文A・Bに分かれていない(中問のない)大問を含む大問6題の構成である、また、多くの大問は1つの大分野に縛られることなく、題材に応じて個々の設問が複数分野から出題された。

●リード文について、会話文となっていたのは2023年度に続き第6問だけである。


生物の「カギとなる問題」は?

次に、生物で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第3問:問2

筋収縮に関する実験1〜4の結果を踏まえて、3つの実験の結果を予測する設問である。スキンド筋は見慣れないと思うが、設問文の説明から、細胞膜がないことから細胞質基質はなく、筋原繊維が筋小胞体に包まれている状態であると気づきたい。そのうえで、実験1と実験3ではCa2+濃度が異なることや、実験4では「しばらく浸した」後であることなどを、読み落とさずに検討することが求められた。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、生物の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問: 細菌の糖代謝とその発現制御  [標準]

・細菌の糖代謝の制御を題材に、異化や、遺伝の発現制御について問われた。

・問3は「グルコースのみ」に注目して検討する。


第2問:細胞膜の輸送タンパク質とその働き  [やや易]

輸送タンパク質と輸送のしくみ(問1)、気孔の開口と物質輸送(問2)、興奮の発生と輸送タンパク質(問3・4)と、細胞膜の輸送タンパク質とその働きについて問われた大問であった。

・取り組みやすい設問が多く、確実に解いていきたい。


第3問:筋収縮の仕組みと筋細胞の発生  [標準]

・骨格筋収縮の仕組み(問1)、筋原線維のみのグリセリン筋と細胞膜を除去した筋細胞であるスキンド筋の収縮の実験(問2)、筋細胞のもとになる皮筋節の誘導に関する実験(問3)が出題された。

・問3は、実験8・9で体節から生じる組織が変わることから、実験を行った「ある発生段階」の体節の発生運命はまだ決まっておらず、周囲の誘導に応じて分化するものとして考える。


第4問:生殖と植物の光環境への応答  [標準]

・植物の生殖と環境応答を主題にした大問で、有性生殖の特徴(問1)、ジャガイモの塊茎形成に影響する暗期の光中断実験の計画(問2)、ジャガイモの塊茎形成と同化産物分配の実験の計画(問3)について問われた。

・問2は、ジャガイモは短日条件で塊茎を形成することがリード文に、また、ジャガイモは日長をフィトクロムで感知することが設問文に書かれている。これらのことから、短日植物の花芽形成と光中断の実験を踏まえて考えればよいとわかる。

・問3の測定項目は、同化産物がどう使われるかを忘れないようにしたい。計算式では、栽培条件2・3が、栽培条件1の後日照条件を変えていることから、栽培条件2と条件1を比べれば短日条件での分配、栽培条件3と条件1を比べれば長日条件での分配がわかることから考えを進めていく。


第5問:陸上の生態系の物質生産と利用  [標準]

・陸上の生態系に関して、森林の生産構造図と植生内の相対照度のグラフ選択(問1)、森林と農耕地の物質生産(問2)、森林を農耕地にした場合の物質生産(問3)が問われた。

・問1の生産構造図(ⓐ・ⓑ)は、森林は非同化器官が大きいこと、牧草はイネ科主体で植生の内部まで光が届くことから、森林はⓑである。森林の生産構造図がⓑであるなら、同化器官は高さ0.8あたりで最も多く、したがって上方からここまでで多くの光を吸収するため、下方の照度は大きく下がることになる。

・問2は、選択肢をすべて検討するならば計算が必要だが、明らかに適当でないものがあるため、そちらを選んで計算せずに先に進むこともできる。


第6問A:動物の分類  [やや難]

・動物の定義(問1)と、無脊椎動物の分類(問2)が出題された。

・問1の「動物」にはさまざまな考え方があるが、教科書に沿って3ドメイン中真核生物(ユーカリア)を原生生物・菌類・植物・動物に分けた場合の「動物」について考える。このとき、動物的な特徴をもつ単細胞生物は原生生物に分類される。

・問2は、学習が遅くなりがちな無脊椎動物の分類である。カメノテ・ウメボシイソギンチャク・ムラサキウニの3種を、動物の系統樹に当てはめる問題であった。発生で学習したウニが新口動物でZに当たること、刺胞があるイソギンチャクが刺胞動物門(W)であることは比較的解きやすい。カメノテは、「ノート」にある「節のある器官」「脱皮」を手がかりに、線形動物と同じ脱皮動物(の節足動物)と気づきたい。


第6問B:進化のシミュレーション  [標準]

・6個体の集団を仮定してサイコロを使い遺伝情報の世代間伝達を実験する設問(問3)と、遺伝子頻度の変化(問4)が問われた。

・問3空欄アは、「シミュレーションの方法」より、図4の世代7は、左から1・2・4・5番目は1個体、3番目は2個体、6番目は0個体の世代8を得る。こうして得た世代8の祖先を世代1までたどって答える。

・問3空欄イは、変異型遺伝子をもつ世代2の左から1番目の個体の世代3以降の子孫をたどって答える。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。生物で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

多くの設問で、複数分野の知識をもとにした検討が必要

知識問題は、全範囲から問われる。文章の正誤判断での出題では、選択肢内の文全体で誤りがないかどうかを正確に判断する必要がある。選択肢が増えると負担が重くなる所以である。

また全範囲から問われるため、苦手分野を残すと得点を積み増すことが難しくなる。例えば2024年度でいうと第1問〜第4問の問1のような設問で検討に時間をかけているようだと、深い読解や検討の必要な設問に時間を割きにくくなるので、なるべく早く全範囲の学習をひととおり終えておきたい。


正確な知識と幅広い文章ジャンルでの演習経験が差をつくる

考察問題は、題材は教科書や図説にないものであっても、リード文と実験結果を読み取れば理解できる。時間に対してリード文が長く、複数の図表がある大問が多いので、普段の演習を通じ、実験の条件や結果のポイントをすばやく抽出できるようにしておきたい。

共通テストでは分野融合の問題も出題されるが、分野融合の実験考察問題も、理解の基になるのは各分野の基礎知識である。また、仮説・実験・結果・考察という流れや、対照実験を設けるなどの実験考察の考え方自体は分野融合であってもなくても共通している。考察問題についても、まずは学習を終えた分野内での知識を元にした実験等の問題演習を通し、素早く要点をつかみ取る訓練などを進めていきたい。


解答時間を意識した演習を

知識問題では細かい正誤判断、考察問題では実験条件や結果の読み取りと整理を行わなければならないため、高得点を狙うには効率的に読解し、解答していく必要がある。

そのため、問題演習を通じて、要点を把握・整理しながら正確にリード文を読み取る訓練、各選択肢をすばやく判断する訓練を重ねておきたい。


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