物理 – 共通テストの分析&対策の指針

投稿日時:2024年1月15日

Z会の大学受験生向け講座の物理担当者が、2024年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。  

 

共通テスト「物理」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量・問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


全体の傾向

●物理の各分野から幅広く出題された。原子は、2024年度も第1問の小問集合にて扱われた。

●計算量が増したため、難易度は2023年度共通テストからやや難化した。

●設問数は20問のまま。分量について、昨年からの大きな変化はなし。

●会話文の出題がないこともあり、問題の文章量は短くなった。問題のページ数は28から23に減少し、マーク数も26から22に減少している。

●2023年度も、中問(A・B)に分かれた大問はなかった。

●探究活動、実験に関する設問が、今年も多く見られた。学校の探究活動で行う実験、考察を意識した問題になっている。与えられた表の読み取りや活用、グラフを用いた数値の導出など、知識や典型問題の定着度ではなく、論理的思考力や情報の運用力を測る共通テストの出題方針に変わりはなかった。

●答にたどり着くために計算を必要とする設問が増加した。とくに第2〜第4問の最後の設問は、誘導が少なく、回答の方針を自力で立てなければならない点が難しかった。

●「正しいものをすべて選んだ組合せ」を答えさせる設問が登場した。


 

物理の「カギとなる問題」は?

次に、物理で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問の問1・問2・問3

第1問の問1(剛体)と問3(光の全反射)は設定が複雑なため、正攻法で地道に解くと時間がかかり、時間の節約のために中途半端に単純化して考えようとするとミスが出る。また、それらに挟まれた問2(原子核1個あたりの運動エネルギーの平均値)は、太陽の中心部の原子核を単原子分子理想気体とみなす場合の計算で、教科書の式を丸暗記しているだけでは誤った選択肢を選びがち。ここは、単原子分子1個の「運動エネルギーの平均値」という微視的な量と気体の「絶対温度」という巨視的な量の関係、という観点で理解していたかどうかが問われた。冒頭の3つの設問がヘビーだったため、ここでペースを乱すとその後に大きく影響が出ただろう。


第2問

第2問は、与えられる文字の数が多く、複数の微小量も登場した。このような問題に、難関大学の個別試験対策で慣れている受験生はすんなり取り組めたが、そうでない受験生は苦労したと思われる。


第4問の問5

第4問の問5(導体紙の抵抗率の計算)は、答の選択肢が見慣れない形であること、「小さい幅」の物理量を自分で文字で置きつつその文字が答に含まれないという確信が必要であることから、考えにくい。最後の設問なので、冷静に検討する時間が十分とれたかどうかもポイントであった。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、物理の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:小問集合  [やや難]

・小問集合は力学、熱力学、波動、電磁気、原子の各分野から1問ずつ、計5問が出題された。
・問1の剛体の設問は、きちんと計算すると時間がかかるので、要領よく考える柔軟性が求められた。問題文の「〜回転しないようなFの最大値を表す式」という表現が、やや理解しにくかった。
・問2の原子核1個あたりの運動エネルギーの平均値に関する設問は、数値計算であるが、分子運動論の式自体というより、式の意味への理解が問われた。
・問3の光の全反射の設問は、問1同様、要領よく考える柔軟性が求められた。
・問4の磁場(磁界)中の荷電粒子の運動の設問は、基本的だが、計算演習ではまず見ることのない問われ方だったので、一瞬戸惑った人もいただろう。
・問5の質量欠損と半減期の設問は、原子分野からの出題。選択肢は、この分野の演習が不足しがちな現役生への配慮が見られた。それでも、問5は正解にたどりつくまでに時間を要する設問だったかも知れない。


第2問:ペットボトルロケットに関する探究  [やや難]

・小問集合は力学、熱力学、波動、電磁気、原子の各分野から1問ずつ、計5問が出題された。
・「探究」がテーマであるが、難易度調整のためか、求めるべき物理量は基本的に指示されていた。このため、どう考えればよいかを考える負担は少なかった。
・与えられる文字の数が多く、それらの中には、それぞれ微小量として定義される時間・噴出する水の体積および質量・速さの増加分Δt・ΔV・Δm・Δvもあった。また、ほとんど変化しない物理量を一定とみなすなど、考察をシンプルにするための指示が多かった。近似は単純で、設問文はかなり工夫されていたものの、微小量を含む計算に苦手意識のある受験生は苦労したと思われる。
・第2問は力学範囲からの出題であったが、問2では熱力学分野の仕事も扱われた。


第3問:弦の固有振動に関する探究  [標準]

・両端を固定端とする弦(金属線)の、定常波(定在波)に関する問題。
・弦を伝わる波を、指などで弾いて発生させるのではなく、弦に交流電流を流し、U字型磁石による磁場(磁界)から受ける力を利用して発生させる点が目新しい。交流電源の周波数を変化させることで、弦にいろいろな振動数の進行波を発生させることができる。なお、U字型磁石が置かれた弦の中央部分は、必ず定常波の腹になる。
・問3では、縦軸に「弦の固有振動数」、横軸に「弦に生じる定常波の腹の数」をとったグラフが与えられ、グラフを用いた考察が要求された。弦に生じる定常波の式を、設問の趣旨に合わせて変形する必要があった。考えにくい設問であったが、選択肢中の誤答は一見して誤りとわかるものばかりなので、答は消去法でかなり絞り込める。
・問4では、縦軸がいずれも「弦の固有振動数」で、「金属線を引く力の大きさ」をSとして、横軸がS、1/Sなどの4種類のグラフを見て、固有振動数と比例関係にある量を推定する設問。設問文をしっかり読めば、弦を伝わる波の速さの一般式(波の速さを、弦の張力の大きさと弦の線密度を用いて表した式)を使わずとも解ける。問題の意図を素早く正確に読み取るべき設問であった。
・問5では、「弦の固有振動数」と弦の「直径」の表が与えられ、表の必要な部分だけに注目し、関係式を推定する。公式から答を導くことも可能ではあるが、設問の意図を読み取る柔軟性が問われる設問であった。
・第3問は「物理基礎」の波動分野の問題であるが、問1には「物理」の電磁気分野の「電流が磁場から受ける力」に関する問いが含まれていた。


第4問:導体紙に電流を流す場合などの電位や電場  [標準]

・問1と問2は、符号が逆の2つの点電荷が作る電位の様子や、等電位線と電気力線に関する定性的な設問。
・問2の後、導体紙に直流電源をつないだ場合の、導体紙上の等電位線の図が与えられ、問3以降は、その図をもとに考察する。問4では、グラフからの必要な数値の読み取りとそれらを用いた計算を行う。
・問5では、導体紙の抵抗率を求める。答の選択肢が見慣れない形であること、「小さい幅」を物理量として自分で文字で置く必要があることから、考えにくい設問であった。この設問は、個別試験レベルの演習量が多いほど有利だったと思われる。
・まぎらわしい選択肢を含む設問が、第4問には複数あったので、自信をもって答えにくかったと思われる。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。物理で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

知識や公式の抜け・漏れをなくし、基本問題を確実に解答できる力を身につける

共通テストは思考力が問われる問題が多いが、それ以前に考える材料となる知識や使うべき公式を正しく身につけていなければ太刀打ちできない。まずは基本問題の演習を通して、知識を定着させ、公式をすぐに使用できる状態にしておくことが最優先である。


実験を行い、図やグラフを用いて情報を整理したり、議論をしたりする機会を増やす

実験により得られた図やグラフを活用する機会を増やすことが重要である。実験では、教科書の結果と一致することを確かめるだけではなく、誤差が生じた原因はなぜか、実験結果から新しい仮説が考えられないか、その仮説が正しいことを検証するためにはどのような実験を行えばよいか、あるいは反証するためには何を考えればよいか、などの発展的な考察もぜひ行ってほしい。


様々な物理現象を言葉で説明する訓練をする

共通テストでは定性的な理解を問われることが多いため、物理現象を言葉を用いて説明する訓練が重要である。友達どうしでわからない問題を教え合うなどして、物理現象を自分の言葉で説明をする機会を増やしてほしい。また、教科書傍用の問題集に取り組むときも、ただ場当たり的に問題の解き方を身につけるのではなく、「どのような条件のときに運動量保存則が成立するのか」「運動の向きを変化させる原因は何か」など、物理現象の根本的な部分を意識・理解しながら取り組んでほしい


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