聖心女子大学 教育学科 教授
益川 弘如 教授
2020年度より改訂された学習指導要領に向けた審議のまとめでは、新しい時代に必要となる資質・能力を育成し、その学習評価を充実していくため「学力の3要素」が「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の素養」という表現に改められています。
従来の入試テストは、まず基礎基本を知っているか評価し、その次に、知識を活用して解く応用問題が出題され、特定の資質・能力を評価する形態が主流です。そのため、これに対応した学習方法では、最初に基礎基本をとにかく覚え、その後に知識を活用した問題の解き方を練習していました。しかし、この学習方法では、学校やテストの文脈でしか生きて働かない知識・技能、学習範囲内でしか対応できない思考力・判断力・表現力、学びは入試のためや誰かに言われたら勉強するものだという狭い考えになりかねません。
一方、最新の学習に関する科学的知見では、協働的な問題解決場面の中で他者と深く対話しながら学んだ方が、基礎基本と知識活用能力が一体となるような形で育まれることが分かっています。このように知識・技能と思考力・判断力・表現力を往還しながら学ぶことが、21世紀に必要な「新しい知識を創り出す」力につながります。これからの入試テストでは、ある特定場面における未知の状況が示された上で、知識・技能を存分に働かせつつ思考力・判断力・表現力を発揮させて解かせることで、学びに向かう力や人間性と合わせて評価するような、学力の3要素を一体的に評価する方向に変わっていくでしょう。このような方向性を踏まえながら「リファール」の活用方法を考えていただきたいです。