【コラム】Stage4 × SDGs × 4技能 × 受験指導の指導実践報告

投稿日時:2021年4月28日

 

1.はじめに

初めまして。大阪府にあります私立四條畷学園高等学校で英語科の教員をしております、蘆田(あしだ)と申します。僭越ながら、この場をお借りして私の教育実践を書かせていただければと思いますので、お付き合いいただければ幸いです。

 

2.NEW TREASURE Stage4(以下NT4)を使っての指導

まず、私の以前のNT4の使い方を簡単にご説明させていただきます。

  1. 宿題としてそのセクションの英文のプリントを配布。生徒はそのプリントに引かれている下線を和訳、かつ全文を品詞分解する。
    (品詞分解についてはここに来るまでにもかなりトレーニングをします。)
  2. 授業で解説。ここで、内容面・英語面ともに解説する。
  3. リピーティングやシャドーイングなどの音読活動。
  4. そのセクションの和訳を配布。ただ、その和訳にも何ヶ所か下線が引かれていて、そこは英作にチャレンジ。
  5. True & False の英文のディクテーション、T / Fの答え合わせ。
  6. 授業の終わりに、次の授業で行うセクションのリスニングとTrue & Falseを何度か聞かせてチャレンジ。それが終わったら上の1.へ繋がる。

基本的には、この流れで授業を進めて、1回の定期テスト毎に、レッスンが2つ入っていくイメージです。

 

3.残る違和感と見えてきた道筋

NT4を初めて使ったのが20代の半ばでした。その頃は、上のような指導で精いっぱいだったように思います。段々、卒業生を送り出し、英語の指導にも慣れてくる中で、次第に自分の中に違和感が募ってくるようになりました。当時は漠然とした違和感でしたが、今思うと次のようなものだったと思います。

    • 4技能のうち、「読む」と「聞く」しか授業で実践できていない。
    • 自分ってどんな生徒を育てたくて英語の教師をやっているのか?

そんな中で、出会ったのが、SDGsや様々な研修でした。ある研修で「『どうやって教えればいいのか』のようなhowを皆さんは考えがちですが、whyがまず大事」と言われました。我々教師は「どうやってアクティブラーニングをしよう?」などのようなhowを考えがちではありませんか?whyを考えるということは、自分の在り方を考えること、つまり「自分は目の前の生徒にどうなって欲しくて、そのためにどんな授業をしたいのか(どんな存在でありたいのか)」(=why)だと思います。その次に「どうやって(how)授業をするか」が来るべきなのですよね。その言葉を受けて、自分自身で「自分にとってのwhy」と向き合いました。その中には、英語の授業と親和性が低いものも当然ありましたので、英語と馴染むものを、授業に取り入れるようにしていきました。

 

4.whyを考えると授業が変わる

その後、授業をどのように変えたのか。一つは、「読む」をベースにしつつも、より4技能を使うよう意識していきました。そのために、まず前項に書いた1.~6.の活動にかける時間を減らしました。何かをやらなくなったと言うより、ICTの力を借りるようになったことが大きいです。電子黒板やGoogleドライブを使って、授業時間に生じていた無駄を削り、音読系の活動など家でできることは家でやってもらうようにしました。前項2でご紹介した以前のNT4の使い方1.~6.の変化を具体的にご説明します。

  1. 宿題として、そのセクションの英文のプリントを配布。→ 変更なし。
  2. 授業で解説。→ 板書・説明の時間を削減。
    本校には持ち運び型の電子黒板があります(本当は教室に備え付けが嬉しいのは言うまでもありませんが…)。それを使用することで、無駄な板書の時間の削減に繋がりました。また授業内容をまとめたプリントをGoogleドライブにアップして、こちらが何度も説明せずとも、生徒が家庭で復習できるようにしました。※下記画像参照
  3. リピーティングやシャドーイングなどの音読活動。→ 家庭学習に移行。
    ただし、生徒にCDを購入させていなかったため、家庭での音読活動の充実を考えると、今後CDを全生徒に買わせることも検討しています。
  4. 和訳を配布して和文英訳にチャレンジ。 →家庭学習に移行。
    家庭で何度か音読した後に英作にチャレンジして、提出してもらいます。※下記画像参照
  5. True & False の英文のディクテーション → 変更なし。
  6. 次の授業で行うセクションのリスニングとTrue & False → 変更なし。

     

    2.授業内容をまとめたプリント

     

    3-4.音読・英作・T / F プリント

     

    こうして見ると、大きく変わっていませんが、時間にして、20~25分程削減できている体感です。つまり、これまで1時間に1セクション進んでいたものが、2セクション進めるようになったのです。これはコロナ休校での気づきも大きかったです。「あれ?結構家で任せられるな」と。このようにして、今までにかけていたレッスン一つあたりの時間を約半分にできました。

    では、余った時間を何に使えるようになったか。簡単に言うと、教科書「を」というより、教科書「で」教えるようになりました。NT4はやはり話題が豊富です。したがって、ほとんどすべての章で何らかのSDGsとリンクできます。

    例えばレッスン7の “Executed, But Not Proved Guilty?”では、Black Lives Matter が話題になっている時に扱いました。人種や差別・偏見の話であったので、これを英語で議論し合ったり(もちろんそんな高度な英語ではありません)、関連するYouTubeを見て日本語で議論したりなどもしました。このこともきっかけの一つになったのか、生徒が探究の時間で差別偏見の解決について取り組み、ある大会では予選を通過し、関西大会に出させていただきました。

    レッスン8の “False Faces — Reversing Assumptions”では、「思い込み」について扱います。当然ですが私たちは、日々の生活の中で、assumptionやbiasにまみれています。授業で行ったのは、生徒を4人1組に分けて、 “Describe your personality.”という指示に英語で答えさせます。次に、 “Describe your groupmate’s personality.”と指示します。生徒は大抵、自分のことはネガティブに、相手のことはポジティブに書きます。この活動での英語の学びは「短気ってimpatientなんや」など、性格の英単語くらいかもしれません。しかし、生徒は思ってもいなかった「褒め言葉」を友達から貰えるので「皆自分自身にもassumptionかけてるよね。あなたは自分で思っているよりもずっと魅力があるよ」と伝えられただけでも十分価値があったのではないかと、授業をやってみて思いました。さらに、NT4がSecond Editionになって表現活動の問いも加わり、このお題も優れていて、このレッスンでは、assumptionから距離を置くために良い問いになっていましたので、生徒皆に書いてもらいました。

     

    5.おわりに

    ここまでつらつらと書かせていただきましたが、ここでタイトルに戻らせていただきます。入試制度が必ずしも納得できるものでないとはいえ、日本社会に根強く残る学歴志向や、生徒保護者のニーズを考えても、教師として受験指導ができるのはまずは必要なことかと思います。ただ、個人的には、一定のレベルに到達すれば、そこをベースにしながら(そして磨きながら)も、生徒のレベルに合わせて4技能を育み、生徒の気づきを促し、これからの時代に必要とされる力を養成するために必要なことに目を向けて、そのための授業を行っていくことが大切だと思います。最近思うのは「自分の授業-受験指導=??」という式です。=の後に入るものこそが各自の先生方の個性の見せどころかと思います。そのための教材としてNT4は便利ですし、これからもお世話になっていきたいと思います。

    ここまでお読みいただいたこと、本当に感謝いたします。また、私自身も、これまでがそうであったように、まだまだ変化の過程ですので、ここに書かせていただいたことは、改善の余地が多々あることと捉えていただけると幸いです。ただ、英語「を」だけではなく、英語「で」ということはぶれずにやっていきたいと思います。

     

    プロフィール

    蘆田 亮介(Ashida Ryosuke)
    四條畷学園高等学校英語科教員。京都府出身。神戸大学を卒業後、2011年より現在の学校に赴任し、英語教育だけでなく、探究活動にも力を入れて取り組む。現在は、より良い学校教育のために校内での教員の勉強会サークルを立ち上げ、その運営に勤しんでいる。

     

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