【コラム】NEW TREASURE × CELTAフレームワークで新任教員でも授業準備はバッチリ!

投稿日時:2021年5月28日

 

こんにちは。追手門学院中・高等学校で英語科教員をしています、若葉です。今回は私が2年前に取得したCambridge CELTAの授業モデルを活用しながら、英語教育の初任者の先生方でも無理なく4技能を伸ばせる方法について書かせて頂きたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

 

Cambridge CELTAとは?

The Certificate of English Language Teaching to Adultsの略で、ケンブリッジ大学英語検定機構が提供する英語を母国語としない人に対する英語教授法の資格としては世界で最も広く受験されているものです(現在はCertificate in Teaching English to Speakers of Other Languagesと改称されています)。日本で広く行われてきた伝統的なTeacher-centeredな授業とは真逆の、Student-centeredな授業を基本とし、教員の発話時間を最小限にしつつ、生徒から引き出すことが求められます。

 

CELTAの5つの授業フレームワーク

CELTAの中では目的別に大きく分けて5つの授業フレームワークが用いられます。CELTAでは教授内容をLanguage(語彙、文法)とSkills(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)の2つに大別しています。

A)テキストを通じた目標言語の提示

未習のLanguage(語彙、文法)を扱う際に使われる授業フレームです。興味付けを行った後で、習得を目指す語彙や文法が使われた短いリスニングやリーディング教材を用いることで、文脈を把握(または、文意を推測)し、そこから「意味(meaning)」や「発音(pronunciation)」、「形式(form)」を見出していきます。最後にスピーキングやライティング形式の練習を行い、その結果を踏まえて生徒にフィードバックを行うという流れです。

興味付け・文脈づくり 扱うリーディング・リスニングのトピックやテーマ、文脈への興味付けを行う
リーディング・リスニングタスク 目標言語をリーディング・リスニングを通じて導入する
目標言語の強調 下線を引いたり、指導タスクを用いたり、生徒から引き出すことで、目標言語を強調する
目標言語の確認 目標言語の意味を明確にする
発音のモデルを示し、練習させる
形式を強調する
演習 より自由度の高い形式で目標言語を練習する(口頭or筆記)
フィードバック 解答を確認し、タスクの結果に対応する

 

B)目標言語の演習

既習のLanguage(語彙、文法)を扱う際に使われる授業フレームです。A)の授業後や、他の先生が教えたLanguageを深める際に使用します。

(興味付け) 必要に応じてトピックやテーマへの興味付けを行う
設定 練習のための活動を導入・設定する
活動中に使われる目標言語を強調する
活動 より自由度の低い形式で目標言語を練習する(口頭or筆記)
より自由度の高い形式で目標言語を練習する(口頭or筆記)
教員は生徒の活動をモニタリングする
フィードバック 解答を確認し、タスクの結果に対応する
誤りや問題点に対処し、目標言語の使用に対してフィードバックを行う

 

C)Test – Teach – Test形式による目標言語の提示

生徒が習得を目指すLanguage(語彙、文法)をどれくらい知っているのかを確認する診断テストから始める授業フレームです。教員は生徒が抱える課題を注意深く観察し、練習が必要なものに関しては「意味」「発音」「形式」の指導を行います。最後にスピーキングやライティング形式の練習を行い、その結果を踏まえて生徒にフィードバックを行うという流れです。

興味付け レッスンのトピックやテーマへの興味付けを行う
診断テスト(Test) 目標言語に対する生徒の現状の理解度・ギャップを確認する
説明(Teach) 目標言語に関する意味、発音、形式を確認する
特に生徒が知らないものや誤って使用しているものに力点をおく
再テスト(Test)
より自由度の低い形式で目標言語を練習する(口頭or筆記)
より自由度の高い形式で目標言語を練習する(口頭or筆記)
フィードバック 解答を確認し、タスクの結果に対応する
誤りや問題点に対処し、目標言語の使用に対してフィードバックを行う

 

D)受容スキル(リスニング・リーディング)の練習

4技能のうち、受容スキルと呼ばれるリスニングやリーディング力の向上を目的とする場合に用いられる授業フレームです。まずリーディング・リスニング教材のテーマに関する既存の知識を確認したり、テーマについて質問を投げかけることで、導入を試みます。後のリーディング・リスニングに繋がるように、内容について推測するタスクもよく用いられます。その後、リーディング・リスニング活動に支障をきたすような語彙がある場合には、先に導入してしまいます。リーディング・リスニング活動では、概要をとる練習から始め、その後より深い内容理解につながるタスクへと移行します。最後に内容に関するスピーキング・ライティング活動で締めくくります。

プレリーディング・リスニング課題
興味付け トピックに対する生徒の既存の知識を活性化する
生徒にテクストの内容を考えさせる
口頭での流暢さを向上させる
(推測課題) 生徒にテクストの内容を推測させる
語彙の事前指導 タスクを行う上で障壁となる重要語彙を事前に指導する
リーディング・リスニング課題
概要を理解するためのリーディング・リスニング 生徒にテクストの概要をつかませる(スキミング)
詳細を理解するためのリーディング・リスニング 生徒にテクストをより詳細に理解させる
特定の情報を探すためのリーディング・リスニング 生徒にテクストの特定の情報を探させる(スキャニング)
ポストリーディング・リスニング課題
フィードバック テクストに対して感想を述べさせるor書かせることで流暢さを高める
トピックをより自分事にさせる活動を行う

 

E)発信スキル(スピーキング・ライティング)の練習

4技能のうち、発信スキルと呼ばれるスピーキングやライティング力の向上を目的とする場合に用いられる授業フレームです。まずはトピックに関する生徒の既存知識を活性化させたり、興味づけをすることから始めます。次に、生徒の活動のモデルとなるようなリスニング・リーディングタスクを活用したり、アイデアのブレインストーミングを行うことで、活動の準備を行います。場合によっては、活動に使える言語(語彙・文法)を提示することも可能です。その後、生徒のスピーキング・ライティング技能を高めるタスクを行い、最後に内容に関するフィードバックと、言語に関するフィードバックで授業を締めくくります。

興味付け トピックに対する生徒の既存の知識を活性化する
トピックやテーマへの興味付けを行う
スピーキング・ライティングの準備 次の課題に向けてアイデアのブレインストーミングを行う
モデルとなるような類似テーマのリーディング・リスニング活動を行う
(使える表現の指導) 課題に役立つ表現を紹介する
(目標言語とは異なり、生徒は必ずしもこの表現を課題で使用する必要はない)
スピーキング・ライティング課題 課題を通じて口頭での流暢さを高める
課題を通じてライティングスキルを向上させる
課題へのフィードバック・誤りの訂正 課題の結果に対して手短にフィードバックを行い、よくある誤りを訂正する

 

実践例

実際にフレームワークを使って教材を作ってみたいと思います。例えば 『NEW TREASURE Third Edition Stage1』Lesson 4 Part 1は以下のようなモデル文で始まります。

 

今回のテーマは「3単現の-s」ですので、フレームワークA)がしっくりきます。ユミに新しい友達ができたことを簡単に導入した後に、リスニングとして本文を使用します(「NEW TREASURE」では個性豊かな登場人物が多数登場しますので、時々人物関係を整理してみると面白いかもしれません)。今回はモノローグですが、「NEW TREASURE」のモデル文はダイアローグが多く、声優も演技派が多い気がしますので、リーディングから入るよりも、リスニングをお勧めします(音声だけで生徒から笑みがこぼれることもしばしばです)。後の文法につなげるために、以下のような形で内容を整理してみてはどうでしょうか。

 

NAME DETAILS
like sports.
live with her father.
live in Mexico.
miss her family.
miss her mother’s cooking.

 

まとめ終わった時点で、聞こえた英文と対比してみると、多くの生徒が-sが抜けていることに気がつきます。また、耳のいい生徒や塾に通っている生徒はMaria’s mother and sistersが主語になっている時にはliveに-sがついていないことにも気がつくでしょう。そこまで引き出すことができれば、文法の導入に進みます。

 

【Key Points】Find the rules! ~いつ-sをつける?~
1. I like books.
2. Ken likes books.
3. You go to the library after school.
4. He goes to the library after school.
5. We study English every day.
6. Lisa studies English every day.
7. They watch an English TV program in the morning.
8. She watches an English TV program in the morning.
9. Yumi and Takuya learn fifty English words every week.
10. She learns fifty English words every week.
11. Mr. Smith and I have two cats.
12. Mr. Smith has two cats.

 

ここからはKey Pointsを使って演繹的にルールを教えるのも良いのですが、テーマによっては、Key Pointsの例文をうまく活用することで、生徒が自らルールを帰納的に導くことも可能です。考えているうちに、-(e)sの付け方を名詞の複数形の作り方から応用して導き出したり、[s][z][iz]という発音の違いがどこから生じるのかといった有声音・無声音の違いにまでたどりつかせることも十分に可能でしょう。

 

【Pattern Practice】
1. I (like) books.
2. Ken (like) books.
3. You (go) to the library after school.
4. He (go) to the library after school.
5. We (study) English every day.

 

学んだ知識を十分に定着させるために、やや自由度の低い練習を行います。文法ドリルを導入されている学校は、それでもいいと思いますが、書かせるとどうしても時間がかかってしまいますし、個人ワークで眠気が来てしまいますので、授業内では口頭でのパターンプラクティスを行うことが多いです。「NEW TREASURE」には簡単に使えるペアワークの題材がついているので、0から準備することもなく文法を定着させることができます。

 

 

最後に時間との闘いではありますが、学習した文法を使って自分のことについて話す・書く時間は設けたいところです。時間が厳しい時には口頭で、時間のある時には書かせたり、Google Formsなどで回収して、次の授業で文章校正の題材にすることもできるでしょう。時間のある時にはクラスメイトとのインタラクションをさせて、本当にそれがきっかけで友達のことがより深く理解できるような設定ができると良いと思います。次のようにインタビュー形式などにしておけば、色々な人と話ができますし、事後には紹介された人がどんどん自分の知っている人のことを紹介していく方式で、色々な生徒の他己紹介が聞くことができ、フィードバックのチャンスもたくさん増えて良いですよ。

【Interview】クラスメイトに放課後の日課を聞いてみましょう。

NAME DETAILS
e.g) Takashi plays the horn after school.
○○○ ○○○○○○○○○
○○○ ○○○○○○○○○
○○○ ○○○○○○○○○
○○○ ○○○○○○○○○

 

 

その他のフレームワークの活用と応用

今回は深く紹介はしていませんが、もう少し高度な文法事項を扱う段階になると、1時間で練習まで指導しきれないこともあると思います。あるいは学校によっては英語が2科目設定されており、別の授業で学んだ文法を定着させる時間を取りたいといったこともあるかもしれません。そういう時にはフレームワークB)が使えます。学年が上がって、前年度の知識を確認しておきたい時にはフレームワークC)がおすすめです。私自身、全てフレームワーク通りに行うわけではありませんが、最初のうちは、抜け漏れのないよう、フレームを守っておくとよいと思います。慣れてきた時にも、なぜフレームワーク内のことを省略するのか、あるいはフレームワーク外のことを追加するのか、自問自答すると効果的です。
また、フレームワークD)F)についてもそれぞれREADやACTIONのページに適用できますので、是非活用してみてください。特にD)のオプションで書かれている「推測課題」はかなり使いやすいと思います。テクストに関わる写真や動画などを持ってきて、それらが何を意味するのか、テクストを読む前に推測させることで、テクストを読む動機づけにもなりますし、推測が合っていたかどうかを確認することで、概要の理解を確認することにつなげられるなど、一石二鳥です。時系列でまとまっているような本文であれば、さらにその写真を読解後に並べ替えさせることで、より深い内容理解の確認もできるでしょう。まずはフレームワーク通りにやってみて、分けたりくっつけたり、新たなフレームをつくってみたりと、守破離の精神で色々試して頂ければと思います。

 

最後に

私が「NEW TREASURE」と出会ったのは5年前のことです。All in Englishでどこまで授業ができるものなのか、先輩教員たちと共に四苦八苦していたのですが、「NEW TREASUREの教科書に引っ張って貰った」という印象が今でも残っています。題材自体が面白く、無理な工夫をしなくても生徒がちゃんとついてきてくれ、一冊で十分に学ぶべきことが網羅できる素晴らしい教材です。当時は本校でも研究会を開催していたこともあり、授業を見学して頂いた様々な先生にフィードバックを頂くことで、悩みながらも成長ある日々でした。今回紹介させて頂いたフレームワークはCELTAで学べることのほんの一部ですが、これから「NEW TREASURE」の教科書を手に取られる先生方に少しでもご参考になれば嬉しい限りです。

 

 

プロフィール

若葉 貴史(Wakaba Takashi)
追手門学院中・高等学校英語科教員(主任)。大阪府出身。
同志社大学を卒業後、2011年より現在の学校に赴任し、
「自分を知る、仲間をつくる、冒険する」の3つの軸を大切に、教育活動に取り組む。
2019年にCambridge CELTAを修了し、先生はなるべく話さず、生徒から引き出す生徒主体の授業づくりに日々奮闘中。

 

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