【コラム】国際バカロレア(IB)認定校としての英語教育とNEW TREASUREとのつながり

投稿日時:2021年10月29日

 

はじめに

東京都中央区にある開智日本橋学園中学・高等学校で英語科の主任を務めております、木塚誉貴です。本校は今年(2021年)3月にはじめて1期生を送り出したばかりの、新しい学校です。国際バカロレア(以下IB)のMYP(中学校1年生〜高校1年生)およびDP(高校2、3年生)の認定を受け、IBの理念に基づく教育に取り組んでいます。特に英語教育においては、英語「で」学ぶ姿勢を涵養することを目指しています。本校には合計で60名程度の常勤の教員が在籍していますが、約30%がネイティブ、ないしはバイリンガルの教員です。英語に接するような機会が日常的にあることも、英語「で」学ぶことを助ける重要な要素になっていると考えています。

今回は、本校の特色の一つであるIBの教育について触れながら、

① NEW TREASUREを利用した教育実践と本校におけるIBを基盤とする教育との関わり
② 大学受験とNEW TREASURE

の2点についてご紹介できればと思います。

 

 

① NEW TREASUREを利用した教育実践と
本校におけるIBを基盤とする教育との関わり

本校は2015年に共学化し、新しいタイプの学校として再出発しました。当時からNEW TREASUREにはお世話になっています。もちろん同教材はIB教育を主たるターゲットとして作成された教材ではないと思いますが、これまで本校で利用されてきたことが示すように、IBにおける英語教育とも通じるところがあるのではないかと考えています。

ここからは、Illaura Rossiter先生に、MYPではなく日本のカリキュラムに準拠しつつ国際バカロレアの特色を加味した教育を行っているLC(Leading Course)コースの英語の授業において、どのように NEW TREASURE Stage3 を教材として活用しながらIBのエッセンスを取り入れているのか、紹介してもらいます。

 

Illaura Rossiter先生

 

In my classes, the English lessons are split between grammar, 3 classes a week, and content, 2 classes a week. In my classes, we focus on IB-style education with an emphasis on authentic student output and active learning. In the second half of the first term, we started with Lesson4 of NEW TREASURE Stage3 reading section, The Mystery of “The Pied Piper of Hamelin,” as our base. 

One tenet of MYP education is allowing the students to choose how to achieve a task. In line with this, we tasked the students to create an original fairy tale, start to finish, including the story, characters, and, finally, the storybook and images to accompany the story. These students were given approximately 6 classes over the course of 3 weeks to complete this assignment. This task was also slightly differentiated by student level, with students at a lower level being allowed to use existing story characters or the introduction of existing stories so long as they changed the story and events enough that it became an original story. Additionally, rather than requiring students to use a set list or number of grammar points or vocabulary, they were told that they would be graded on using junior high school 3rd-year level vocabulary and grammar, with differentiation allowed for lower-level students. (See rubric for full grading details.) This allowed the students freedom to determine how they would tell their story without limiting them based on grammatical structures or the artificial use of vocabulary. 

In general, the students created stories that used authentic language well above the level expected of junior high school grade 3 students. They were intuitively using language such as, “the strong wind zipped along,” “…they were blown away,” and “Oliver hurriedly ran away.” They were also able to have the freedom to explore story writing conventions, art, and even design in their work, making this a cross-curricular task, and engaging students in the unit with a notable lack of the phrase, “I don’t understand English.” 

 

 

 

 

 

② 大学受験とNEW TREASURE

本校ではこれまで、DLC(Dual Language Course)、および、GLC(Global Leading Course)という2つのコースのみがIBのカリキュラムの対象となってきましたが、2022年度の入学生より、すべてのコースで中学校1年生から高校1年生までがIBのカリキュラムに準拠したMYPの学習を行うことになります。一方で、その後高校2年生になる段階での進路選択では、すべての生徒がIBの学習を継続しDPへと進むわけではありません。主に一般入試を利用して国内の難関大学へ進学することを目指し、一般的な日本の高等学校に見られるようなコースを選択する生徒も多数います。だからといって、MYPでの4年間が無駄になる、というような6年間の全体像を描いているわけでは決してありません。教材の一貫性についても、その一つの側面です。中学校1年生から慣れ親しんだNEW TREASUREは高等学校の学びの中でも継続的に登場し、「精読」のツールとして活用されます。MYPにおける英語の学び、特に中学校1年次および2年次では英語に接することに対する抵抗を無くすことを目的として、「多読」の活動に力を入れており、ブックカートを複数台購入し、洋書を積んで設置しています。休み時間になると生徒がブックカートに集まる様子が見られるようになってきました。「多読」の活動は一定の分量のある英語の読み物に慣れ、スピード感をもって文意を理解していくための活動として有意義ですし、日本の従来の「精読」の活動では欠落している部分であるという指摘もあります(e.g., 柊元,2019)。一方で、例えば、西山(2020)が述べているように、そのことは「精読」を否定するものではなく、「多読」において必ずしも十分に行われないものを補完するのが「精読」であると考えられます。物語を多く収蔵しているのが本校の「多読」の活動ですが、NEW TREASUREは比較的アカデミックに寄っている内容を、一般的な検定教科書よりも長い文章として掲載してくれていますので、「多読」の活動と差異化できていますし、限られた時間の授業内での「精読」にはうってつけです。NEW TREASUREを用いてじっくりと読みすすめることで、高校3年生に向けて活発化していく入試演習の足がかりになる、と考えています。

ここからは、1期生の担任を務め、現在(2021年度)は3期生にあたる高校2年生を担当している杉江尚彦先生に、これまでNEW TREASUREを特に精読という視点でどのように活用してきたのか、紹介してもらいます。

 

杉江尚彦先生

 

高校2年生からはNEW TREASUREの読解問題や入試問題読解を通して、言語を適切に論理的に使用できるようにすること、なんとなく理解していることを言語化し説明できるようにすることを念頭に置き指導しています。MYPで4技能全てにわたって英語を活用しながら自然に英語を身につけていくという英語「で」学ぶ方法から、日本の大学受験問題において頻出の文法事項や英文和訳等に対応できるように移行していかなければなりません。従って、無意識に使用してきた関係詞や仮定法などの文法事項を明示的に機能や役割を説明できる状態にしていきます。高校2年生ではこのように「なんとなくできる」という、より感覚的な次元から、文法事項含めて、理屈を言語化し、試験において求められるような答案を作成していくための精緻な読解、あるいは和訳のための能力を養います。これらは英語が堪能な生徒も最初は苦労しますが、MYPを通して素地ができているため順応しようと努力しています。
高校課程ではNEW TREASURE4,5を使用し大学入試を見据えた読解問題と文法練習を主に実施しています。特にリーディングパートではトピックセンテンスや接続語の機能や使用法など英語の論理構成の指導に使用しています。論理構成の理解は、東京大学の入試問題で頻出の要約問題でも大いに役立ちますし、そこから発展させてリーディングで扱った章のトピックに関連したライティング課題を課しています。また、MYPでは英語の音声に触れる機会が多かったのですが、ライティングという形式になると簡単な単語のスペルミス、細かな文法事項のミスなどが散見されます。CD音声を利用してディクトグロスやディクテーションを行い、リスニング力を維持しつつ、文法や単語知識の強化を同時に目指しています。そしてこれらの項目をMYPで学んできた特徴を活かしながら実践しています。例えば、時間制限を設けて実施したり、「think(個人作業), pair(ペア作業), share(グループ作業)」の段階を踏んだりしながら協働授業を実践しています。

 

 

おわりに

ご覧いただいたように、本校ではIB認定校として、理念や方法論を守りながら6年後の進路選択に向けて必要な英語力を満遍なく身につけることができるよう、カリキュラムを構築しています。その中でNEW TREASUREは必要不可欠な教材として、各学年で活用されています。活用のされ方は学年、コースによって異なりますが、すべてがIB、そして進路選択の際に必要な英語力を身につけるところに収束するよう、段階を経るものにすべく、各教員が奮闘しています。そのような柔軟性(=どのような使い方でも対応することができる)に、NEW TREASUREの良さがあるのではないかと考えています。IBではCreativeであることが重要視されていますが、本校では今後も教材の柔軟性と教員のCreativityを活かしながら、さまざまな授業を実践していきます。

 

 

《参考文献》

柊元 弘文, 第二言語習得における多読の意義及び多読指導実践とその効果検証, 研究論集, 110, 2019-09, 213-231.

西山 裕子, 多読と精読――外国語コミュニケーションのための実践的アプローチ――, 2020, 80-87.

 

 

プロフィール

木塚 誉貴(Kizuka Yasutaka)
開智日本橋学園中学・高等学校英語科主任。東京大学大学院教育学研究科修士課程を修了。同博士課程に進学後、在籍しながら現職。大学院での専門は授業研究で、特に教師が協働することに関心を寄せながら、アメリカ・シカゴをフィールドに研究を行ってきた。Z会進学教室での講師経験もある。

 

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