【コラム】オンライン授業とNEW TREASURE Third Edition Actionパートの実践

投稿日時:2021年11月26日

 

新型コロナウィルス感染拡大予防とオンライン授業

2021年度は,新型コロナウィルスによる感染拡大予防のため,ZoomやGoogle Meetなどを利用したオンライン授業の実施機会は,教科を問わず全国的に増えたのではないでしょうか。私が勤務する立命館慶祥中学校・高等学校においても,登校の際の密を避けるため学年や中学校,高等学校ごとに対面授業とオンライン授業を使い分けて授業を実施し,年度初めに計画した「生徒の学び」を可能な限り止めることなく授業を進める工夫を行ってきました。

「学びのかたち」に多少の違いはあっても「学びのなかみ」そのものは創意工夫を行って最大限に維持していくことが,授業を計画し準備する教員に強く求められる時代へと移り変わってきています。この変遷はおそらく新型コロナウィルスの蔓延状況が終息したとしても止まることはないでしょう。文科省が推進するGIGAスクール構想は新型コロナウィルスの蔓延よりも一足早く閣議決定されており,そしてSociety 5.0を生き抜く人材の育成にはこの新しい「学びのかたち」は切っても切り離すことのできないものとなっていることがその証左と言えます。

 

 

NEW TREASURE Third Editionに新設されたActionパート

前置きが長くなりましたが,時を同じくして今年度は中学校の新学習指導要領が施行され,それに合わせる形で検定外教科書であるNEW TREASUREも版を改めることとなりました。Third Editionの改訂に伴って新たに設けられたのが,各レッスンの末尾に置かれたActionという活動パートです。このパートはReadパートで学習したテーマをもとに自己表現をするライティングとスピーキング(発表+やり取り)の要素が含まれています(本当はさらにCritical Thinkingの要素も入っているのですが,これに関してはやや控えめに盛り込まれています)。Actionパートは3段階に分かれていて,ライティング活動,スピーキング活動に加えて日本語や英語を用いて共有した内容をより深く掘り下げていくディスカッション活動が含まれています。本来であればその全てを行うことが理想ですが,各学校における学習の進度や生徒の到達度に合わせて必要な要素のみを取捨選択することが可能な構成となっています。

 

 

オンライン授業にも対応したActionパートの活用事例

NEW TREASUREのThird Editionは,改訂に伴ってKEY POINT例文の簡素化やレッスン数の削減などが行われました。Second Editionまでの語彙のレベルや量と,学習すべき文法内容はしっかりと担保しつつ,各レッスンにかかる負荷は随分と軽減されたといえます。とはいえ,各レッスンの内容の深さと英文のボリュームは従来通りに充実したものとなっているため,結果的に,採用校の中には授業進度の都合上Actionパートの活動についてはやむなく割愛されているケースもあるのではないかと推察しています。

しかしながら,新学習指導要領においても求められている思考力・判断力・表現力の育成の観点に立てば,このActionパートは活動に向けて「思考」し,情報や表現を収集し必要に応じて取捨選択する「判断」を行い,ライティングやスピーキング活動を行うことで「表現」する,重要な活動です。配当時間や内容の都合上,いくつかのレッスンのActionパートを割愛することが余儀なくされることは避け得ないとしても,全てのレッスンを割愛してしまうのは生徒たちにとっての貴重な学習機会が失われていることになります。

私は,今年度はこの新しく改訂されたThird EditionのNEW TREASUREを用いて,中学1年生を指導する機会を得ました。これまでの指導の中で,オンラインで授業を行った期間を含め,同じ学年の英語科教員と協力しながら現在行っているActionパートの授業の実践状況を以下に紹介させていただきたいと思います。

 

(1) ロイロノートの活用

立命館慶祥中学校・高等学校では学習支援ツールとしてロイロノートを使用しています。ロイロノートはネット環境を利用して生徒と教員が双方向に意見や文書のやり取りを行える学習支援ツールで,生徒の主体性を引き出すのに適しています。Actionパートを取り扱う際には,このロイロの環境を利用して,まず教員側からひな形となるカードを配付し,活動に使える表現,そして評価基準(詳細は後に記載)などを伝えます。ロイロノートでは提出箱を,期限を設定して作成し,生徒の意見や発表などの提出を求めることができます。生徒たちはまず受け取ったひな形のカードをもとに,発表する原稿を作成します。ロイロノートのカードにはテキスト入力に加えて,音声を録音してそれをカードに手軽に貼り付けることができるのが大きな特徴です。生徒たちは,評価基準に基づいて発表原稿を作成し,音声を貼り付けて期限内に提出箱へと提出し,教員は発表内容を英文と発音の両方を確認しながら評価していきます。

 

(2) 発表のひな形に関して

発表の際に参考にするひな形は,テーマや学習の到達段階に応じてその内容に変化をつけています。初めは完成された英文を全てカードに入力しておき,生徒たちがアレンジをする箇所のみ赤字にして記し,生徒はそれを参考にしながら赤字箇所を書き換えるなどの工夫を行っていました。比較的表現の自由度の高い内容や,活動として生徒たちが取り組みやすい内容の場合には,評価基準のみを与え,自由に英文を作成できるようにしました。ひな形に関しては,NEW TREASUREに掲載されているものをそのまま使用することは少なく,それらを参考にしながら生徒たちの表現力の実態に合わせて適宜変更し,時にはWord Squareの表現を参考にして作成することもあります。ひな形の内容は,生徒たちの関心を引き出し,思考力,判断力,表現力育成していくことに重きを置いて作成しています。

 

(3) 評価基準に関して

評価基準は,①分量:英文の数や総語数,②内容:与えられた条件(例えば,Lesson 5の「行ってみたい国」の紹介であれば,その国独自の慣習の説明が加えられているか,など)を満たしているか,③音読:発音やイントネーションの正確さ,の3つに分けています。評価の際には,文法的な誤りには大きな焦点は当てることをせず,自分が伝えたい内容をしっかりと表現できているかに重点を置いています。また,発音に関しても,個別の単語の発音の誤りよりも,日本人特有のカタカナ英語による発話を避け,英語として自然なイントネーションを重視して音読をできているかに焦点をあてて評価しています。

 

例)Lesson 5のカード

① 生徒に配付しているカードと評価基準
オンライン環境さえあれば,教室内の授業,オンライン授業に関わらず上記のようなカードをいつでも全員に配付が可能。

②例文のカード
生徒たちは,赤字の箇所を書き換え,写真を差し替える形で発表カードを仕上げる。カードを仕上げた後は音声を貼り付けて提出をする。

③評価基準のカード
この評価基準に従って,生徒たちは英文を書き,音声を吹き込む。

 

 

ロイロノートを使ったActionパートの活用の利点と課題

ロイロノートを使ったActionパートの利点は,オンライン授業においても通常授業とほぼ変わらず生徒とやり取りを行える点です。本校ではオンライン授業の際にはZoomを利用しており,私はActionパート以外を教える時には主にPowerPointを用いて画面共有を行いながら授業を実施していますが,Actionパートに関してはZoomをつないだ状態で生徒たちにはロイロノートを開かせ,必要に応じて自分のロイロの画面を共有しながら生徒たちに英文作成の作業をさせています。生徒たちは必要な情報や知識はインターネットを利用しながら収集して英文を作成し,個別に音読練習をしたのちに音声を吹き込み提出することがオンライン授業の中で可能となります。表現に迷う時はZoomのチャット機能やミュートを外して質問することも可能です。この一連の作業はもちろん,オンライン授業においてのみ取り組む必要はなく,普段の授業内で行ったり課題として提出期限を設けて提出させたりすることも可能です。

この授業形態の課題として挙げられるのは,生徒同士のやり取りが行えていない点です。生徒たちは,どちらかと言えばShow & Tellという形で,生徒から教員への一方向での活動となるため,生徒間での情報の共有の機会が乏しいことが改善点と言えます。もちろん,授業内で共有したい生徒の発表は,発表カードを生徒たちに見せ,音読を聞かせることで可能となりますが,それを行ったとしても一人の生徒からその他の生徒たちへの一方向となってしまいます。現在の形式では,パフォーマンスを測定する形式としては目的を十分に果たしていますが,双方向の「やり取り」としてはまだまだ工夫がと改善が必要だと考えています。

 

 

ロイロノート以外での実践の可能性

今回は現勤務校がロイロノートを利用しているという環境であるため,ロイロノートを利用した実践の事例報告となりましたが,ロイロノートに頼らずとも他の学習支援ツールやプラットフォームを利用して同様の活動を実施することは可能だと思います。私の前任校ではGoogle Classroomを主な授業のプラットフォームとして利用していましたが,そちらを利用していたとしても工夫次第で同様の活動が可能だと思われます。中学校,高等学校における教育のプラットフォームは多様化してきていますが,この活動で行っていることは「英文を書き,音声を貼り付けて提出する」というとても単純な作業です。どの学習支援ツールやプラットフォームを用いたとしても,生徒たちにこの一連の工程をスムーズに実行させ,教員の側でチェックを行い評価することは可能だと思います。

最後になりましたが,今回のコラム投稿に際しては,私の所属する立命館慶祥中学校1年生で取り組んでいるActionパートの実践状況をご報告させていただきましたが,この活動の実践は決して私単独で行っているものではありません。むしろ同学年に所属している英語科の先生方のお知恵とご協力に依るところがかなり大きいのが実情です。新たな教育の機会とお知恵を与えてくださっている同僚の先生方への日頃の感謝の気持ちを込めて,このコラムの結びとさせていただきます。

 

 

プロフィール

吉川 大二朗(Yoshikawa Daijiro)

立命館慶祥中学校・高等学校英語科専任教諭。私立洛南高等学校附属中学校・高等学校非常勤講師,私立京都女子中学校・高等学校専任教諭を経て2021年度より現職。

【主な著書】
『NEW TREASURE Second Edition Stage 1 ~ Stage 4』(Z会) 編集・執筆協力
『NEW TREASURE Third Edition Stage 1』(Z会) 編集委員・執筆担当
『CROWN 論理表現I』(三省堂) 共同執筆担当
『竹岡の英検マスター 3級~準1級』(教学社) 共同執筆担当
『チャンクで英単語 Basic・Standard 第2版』(三省堂) 編集協力

【主な講演活動】
NEW TREASURE研究会(Z会主催),『チャンクで英単語』指導実例紹介(三省堂主催),英語4技能指導実例(学研主催),授業実例報告(京都府私学連合会主催)

 

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