投稿日時:2022年1月28日
1.はじめに
現在はNEW TREASURE(以下NT)を使う授業を担当していないのですが、過去に中学1年生から3年生まで持ち上がり、3年間かけてSecond EditionのStage1からStage3を使うサイクルを2回繰り返したことがあります。その中で私が実践した取り組みをご紹介させていただきます。拙い実践ですが、少しでも参考になれば幸いです。
中1を担当する年度当初に、他の授業担当者と相談して、各学年の終わり(学年末考査が終わった後の3月初旬あたり)にプレゼンテーション大会を実施し、その学年の最終ゴールとして位置付けることにしました。そして実際、次のようなトピックでプレゼンテーション大会を実施しました。
中2 : My Challenge
中3 : My Message
これら各学年の最終ゴールに繋げるために、普段の授業でもアウトプットを意識した取り組みを実施しました。NTを使った授業では、Readパートのポストリーディング活動として、様々なアウトプット活動を行い、学年末のプレゼンテーション大会に向けた準備を重ねました。本コラムでは、その取り組み内容についてご紹介させていただきます。
2.NT Readパートについて
NTのReadパートは、バラエティーに富むトピックで、生徒に「考えさせる」内容が多いと思います。また、文章に汎用性があり、生徒が、教科書の本文や表現を参考にしながら自ら英文を作るといった活動がやりやすいという特徴もあると思います。内容の濃い文章が多いため、ポストリーディング活動がやりやすく、指導者としては「料理のしがいがある」パートだと感じています。一方、文章量が多いので、英文解説に時間をかけすぎてしまうと、単調な授業になってしまう危険性があるため、できるだけポイントを絞った指導を行うよう心がけ、その分、アウトプット活動に時間を割くように工夫しました。
3.大まかな流れ
文章の特徴によって毎回試行錯誤しながら授業を行いましたが、大まかなパターンは以下の通りです。本文の読解は、何ラウンドかに分けて本文を読み、徐々に深く読んでいく工夫をしました。
- 語彙の確認
- 本文読解(T/F→概要の空所補充→Q&Aと何ラウンドかに分けて読み、徐々に読みを深めていく)
- アウトプット活動のテーマ提示
- 発表内容のブレインストーミングとリサーチ
- (教科書本文の表現を参考に)発表原稿の作成と添削
- (必要に応じて)発表スライドの作成
- 発表・評価
4.3年間で実施したアウトプット活動のまとめ
3年間で次の表の通り、17回のアウトプット活動を実施しました。
Stage | Lesson | プレゼン・スピーチのトピック |
---|---|---|
Stage1 | Lesson2 My Family |
家族紹介 |
Lesson3 Interview with a Sushi Chef in the US |
My favorite person | |
Lesson6 Volunteer Activity |
Canを用いた詳しい自己紹介 | |
Lesson8 Greetings from Alaska |
The best day and the worst day | |
プレゼンテーション大会(1年間の集大成) | What is important to you? | |
Stage2 | Lesson1 14-year-olds around the World |
Which school rule do you want to change? |
Lesson3 Bike Sharing in Holland |
World Rankings | |
Further Reading① Didgeridoo |
About Aborigines | |
Lesson7 Forests in Sumatra |
About Endangered Species | |
Lesson8 Skating for Peace |
What can you do to make the world more peaceful? | |
プレゼンテーション大会(1年間の集大成) | My Challenge | |
Stage3 | Lesson1 Life in Chile as a JOCV Volunteer |
My dream |
Lesson2 Say “I am the Strongest”- Shingo Kunieda |
Mr. Kunieda is ○○ | |
Lesson3 Jokes-Laughter Is the Best Medicine. |
My favorite Joke | |
Lesson5 Artificial Intelligence |
Is AI good for our lives? | |
Lesson6 Kabuki |
Super ○○ | |
プレゼンテーション大会(1年間の集大成) | My Message |
上記活動の中から2つ取り上げて、具体的な指導内容をご紹介したいと思います。
5.具体的な指導事例①
Stage2 Lesson3 Bike Sharing in Holland
本文には、「移動手段として自転車を使う割合」についての世界ランキングが提示されていて、1位であるオランダの実情が書かれています。
語彙確認、本文読解が終わった後、生徒に「ある世界ランキング」を配布し、本文の表現を参考に説明文を作らせ発表させました。「ある世界ランキング」については、「チョコレートの消費量ランキング」や「車の保有台数ランキング」といった多種多様なものを生徒数分用意して、ランダムに配布しました。生徒は、そのランキングの理由をリサーチし、調べてわかったことを数枚のスライドにまとめて発表しました。中2にとっては高度な活動に思えますが、教科書本文の構成が非常にわかりやすく、そのパターンを活用すれば中2でも十分原稿を書くことができました。また、原稿やスライドをEdmodo*を用いてデータで提出させることで、教員の添削も比較的安易に行うことができました。
*Edmodoとは、世界中で活用されている教育SNSです。データで生徒に課題を出したり、提出させたりすることができます。
6.具体的な指導事例②
Stage2 Lesson7 Forests in Sumatra
本文には、インドネシア・スマトラ島の森林が減少していること、スマトラ島固有のスマトラサイが絶滅の危機に瀕していることが書かれています。
語彙確認、本文読解が終わった後、2人ペアで絶滅の危機に瀕している動物を調べ、その動物についてのプレゼンテーションをさせました。その際、本文のPart2 A Speech about the Sumatran Rhinoの文章パターンを使って原稿を書かせました。また、スライド作成の見本として、教員が教科書本文をもとに発表スライドを作り、生徒に提示しました。
参考までに当時使用したワークシートの一部を共有させていただきます。
7.終わりに
NTを使う上で、Readパートこそが、新学習指導要領が謳う複数領域を統合した活動を実施するのに適しているのではないかと考えます。内容のある本文を読むことで、生徒の興味関心が高まりますし、読んだ内容について考え、関連した内容についてリサーチし、本文の表現を参考にしながらも自らの言葉で発表するというProject型の授業が行いやすいと思います。3年間で17回ものアウトプット活動をした生徒は、抵抗なく人前で英語を使って発表することができるようになりました。また、豊富に英文を書いたことで、英文の型が身に付いたと感じます。何より、英語を使う楽しさを知り、自信をつけたのではないかと思います。アウトプット活動をしている生徒の様子はとてもイキイキしていました。英語を使っているという実感が持てるからではないでしょうか。
一方で、指導に時間がかかるという難点があることも事実です。年間計画をする上で、ボリュームのあるNTのどこを使い、どこを使わないのかを検討することが大切ではないでしょうか。扱い方に軽重をつけてメリハリのある活用をすることで、NTをより効果的に活用できると考えます。
プロフィール
熊谷 向祐(Kumagai Kosuke)
立命館宇治中学校・高等学校教諭。滋賀県の県立高校教諭を経て2015年度より現職。現在は中学1年生の授業を担当。ネイティブ教員とペアでコミュニケーションの授業を担当している。