【コラム】「導入→理解→定着→応用」に基づいた授業実践 ~より高い学習到達度/習熟度を目指して~

投稿日時:2022年3月31日

 

 

埼玉県にあります西武台新座中学校・西武台高等学校に勤めております 栗原 隆恵(クリハラ タカシゲ)と申します。本校は中学が開校し10年目の節目を迎えました。1期生からNEW TREASUREを用いた英語の授業を展開し、10年目の2021年4月に中高一貫部中学第1学年の学年主任を命課され、同学年の英語の授業を受け持っています。
今回と次回の連載形式で授業の展開方法や工夫等を紹介する機会を頂きました。今月は「導入→理解→定着→応用」に基づいた授業実践について述べたいと思います。皆様の授業運営での一助となれば幸いです。質問等ございましたらお気軽にご連絡ください(t.kurihara@ggl.seibudai.ed.jp)。

 

 

指導観・教材観・生徒観

指導観

第1学年の生徒が一人でも多く高い英語到達度/英語習熟度へ到達できるよう指導している。本授業の対象は1学年Advanced(上位)クラスであり、英語学習到達度と意欲(態度)の高い生徒が多い一方で(学習内容の理解度が)低い(遅い)生徒が一定数混在している。学力と態度が共に高い生徒は継続して高いレベルを維持させ、下位層の底上げに寄与する事を意識した働きがけ・指導も同時に必須である。こういった一部の(学習内容の理解度が)低い(遅い)学習集団に対しては、その意識を払拭させ英語に対してポジティブな意識を植え付けさせることを年間の目標とする。

生徒たちは与えられたことを一生懸命やろうとする意欲があり、この意欲を低下させてはいけないと考えている。入学当初に比べ、徐々に集中力もついてきた。言語材料の定着が思わしくない時は、既習事項を一度で終わらせることなく何度も繰り返し扱い(スパイラル学習)、しっかりと定着が図れるようにしている。今回の学習においてもその方針は変わらず指導していく。また授業内においては、生徒同士での助け合い学習(PIL型学習)や自分の意見を言語化するといったアクティブ・ラーニングの手法も取り入れ、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点を考慮し、指導していきたいと考えている。

 

教材観

使用教材は中高一貫校を対象にした『NEW TREASURE ENGLISH SERIES Stage1』という、検定教科書と比較すると少々難易度の高い教材を使用している。ただし教科書の内容をそのまま読み上げ、提示する指導はせず、内容を生徒たちが理解しやすいように教材研究をし、教材作成を行っている。必要に応じて他の文献や参考資料を提示する事によって『英語の根幹』や『語句のコア・イメージ』なども教授している。

中学1年生という早い段階から、英語母語話者が自然に使用している規則に従い、徹底して英語のルールを身につけていく。従来の「丸暗記の英語教育からの脱却」を目指し、効率的・効果的に教材研究や教材作成を行い、生徒が一番理解しやすい方法で独自の教材を提示する。独自教材の中では【各単元の内容と教科書やワークブック、文法問題集との対応表】を作成し、振り返り(復習)や反転学習(予習)ができる環境を整備している。また、西武台高校で導入している「すらら」とも同じ対応表を作り、進級した後に自ら学び直しができたり、自主的に学習を進めたりできるようにも今の段階から初期指導している。

 

生徒観

本クラスの生徒は人見知りの面もあるが比較的明るく素直であり、授業も活発に取り組み、一部の生徒は挙手や発言も多い。一方、何かに盛り上がりすぎてメリハリがつかなくなる時もある。難しい発問等に対して尻込みしてしまうことも多々あるので、疑問点を恥ずかしがらずに質問できる雰囲気のある場づくりを目指したい。今後も1人でも多くの生徒が、自分の考えを言葉で表現し伝えられるような、活発な言語活動を大切にしたいと思っている。

4月当初と11月時点を比べると、基本的な授業規律や学習に向かう態度(姿勢)が身に付いてきており、提出物や確認テスト等のやるべきことをきちんとやろうとする生徒が多くなり、学習態度も前向きで落ち着いてきた。さらに、大半の生徒は「できないことはできるようにする」というように英語学習では必要不可欠な要素が身に付いてきた。しかし、忘れ物や課題(テストの為の準備)等を忘れてしまう生徒も一部存在するので生徒たちの成長過程に準じて注意を促し学習環境を整えていきたいと考えている。

 

 

授業の流れ

「導入→理解→定着1→定着2→応用1→(応用2)」という流れで、英語力を育成 (1Lesson 10コマ程度使用)

 

<導入> Grammarパートの単語、本文を発音・発声

プロジェクターでスクリーンに投影されたNEW TREASURE(以下NT)の単語、Grammarパートの文等を発音していく。(コロナ禍マスク着用であり現在は困難であるが)生徒の口の形や舌の動き、喉の使い方、息の出し方、その息に声を乗せる方法などをチェックしながら正しい発音が出来ているかの確認を行う。その際、歯の模型などを使い、歯や舌の使い方を分かりやすく丁寧に教え、英語発音に必要な形状記憶の再設定を行う。ここで生徒たちは自然と単語や英文に触れる。

 

<構造理解> 英語の根幹を捉える授業で「既知から未知を推測させる」

「英語の根幹を捉え、本質を理解して欲しい」という指導方針のもと、中学校3年生の生徒たちには中学校1・2年生の時にならった文法事項から新しい文法事項の意味・役割を理解してもらいたい(丸暗記の英語教育からの脱却)。

その理解を助ける一つのツールが、ICT教材(パワーポイント)である。Key Pointsの導入として、時制など分かりにくい箇所などはアニメーションを使って説明したり、以下のように品詞などの要素ごとに色分けされた例文で文構造を把握させるツールとして使用したりしている。

  • Be動詞=
  • 助動詞=
  • 一般動詞=
  • -ing など=

一例として、中学校3年生の文法事項である「現在完了」を指導する時には、have/hasに紫色をつけた状態で例文を提示し、同色という情報から生徒が一目見て、canなどの助動詞と同じような役割を果たすものだと認識させる。同じような役割と果たすということは、疑問文や否定文の作り方もcanと同じであるということを理解させる。これにより、生徒は初めて見る現在完了の英文の作り方をあっさりと習得する。また、haveのコア・イメージも同時に伝えることで、現在完了でhave/hasを使用する意味も一緒に理解させる。

 

<定着1> 口頭問題演習、問題集での問題演習、翌日以降のテストで定着を図る

ICT教材(パワーポイント)をこの活動でも使用する。Key Pointsを説明したら、NTの文法問題集の問題をスクリーンに投影し口頭で問題演習を行う。自宅で文法問題集等を実際に解き、次の授業日にはテストも行う。その際、問題集で出題されている形式通りには出さず、空所補充形式や英作文に問題形式を変えて、同じ問題を異なる角度から捉える訓練をする。この作業により、答えをそのまま暗記する無駄な作業を無くす。また、同じ英文を使用することにより、同じ教材をスパイラルに学習することも心がけている。

 

<定着2> 生徒自身の言葉で言語化することで頭を整理させる

<定着1>だけでも十分に繰り返しの効果があり、定着を図ることが可能であると考えられるが、授業中には敢えて生徒自身に解答を導いた理由を言語化することを求める。

通常であれば、1つの問題をある生徒が正解すれば次の問題に進んでいく。しかし、正解が出ているにも関わらず、同じ問題を違う生徒にも問う。自分の言葉で表現させることを大事にしているからこそ、こうした取り組みをする。また、教員から指名するだけでなく、グループワークや3人1組で行われるアクティブ・ラーニングの手法でも生徒自身が解答を導き出した過程を相手に伝えるという取り組みを行っている。

蛇足になるが、本クラスでは外部テストを解いた後、ノートに「どのような意図の問題なのか」、「どのような問題傾向だったか」「注意すべき、身につけるべき項目は何か」などの分析結果を書かせ、提出させるという取り組みを行っていく。この取り組みも間違えた理由などを言語化することで頭を整理し、理解を深めるという狙いから実施していく。

 

 

<応用> Grammarパート or Readパートの文章を使って長文読解

短い英文でトレーニングを行ったあとは、少し長い文章の中でどのように文法が使われているのかを把握しながら文章を読解していく。その際、Grammarの文章やReadの文章をスクリーンに投影し、返り読みなどをせず左から右へ英文を精確に、そしてスピーディに読み解く訓練を行う。もちろん日本語訳などは与えず、和文英訳といった指導法からの脱却を図る。最終的に、教員作成の問題に取り組み、解答理由などを生徒同士で発表しあうなどの取り組みを行っている。

「未知のものに遭遇した際に既知のものから共通点を見つけ出し、理解していく」という過程や、「自分の言葉で解答した理由などを周りに伝えていく」というスタイルでCritical Thinkingのスキルも身につけさせたいと考えている。また、異なる授業手法による学習定着率の違いを表した学習ピラミッドの様々な要素を取り入れられた授業を考慮し、生徒一人ひとりの学習到達度、習熟度を高い水準まで引き上げたい。

 

 

プロフィール

栗原 隆恵(Kurihara Takashige)

西武台新座中学校・西武台高等学校 英語科教諭。
高校時代に米国オレゴン州Salem Academy Christian High shoolへ長期留学をし、帰国後には獨協大学外国語学部英語学科へ入学し言語学を学ぶ。
卒業後は同大学院外国語学研究科英語学専攻(応用言語学)で修士号を取得。全国英語教育学会、関東甲信越英語教育学会等に所属し、学会での発表も行った。
2015年には世界最高峰の英国オックスフォード大学教育学部(Hertford College)へ留学し、EMIコースを修了した。
西武台新座中学校・西武台高等学校ではこれまでに中学入試・広報部主任を経験し、2021年より中学校第1学年の学年主任を務めている。

 

 

 

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