【コラム】授業の脱・属人化 ~NEW TREASUREで、だれもが自分らしい授業を~

投稿日時:2022年12月23日

 

 

『進化思考』で山本七平賞を受賞したデザイナーの太刀川英輔氏が、このようなことをおっしゃっていました。

創造性は才能ある一部の人だけがもつものでなく、誰にでも涵養できるもの」※

いい言葉ですね。
これをわれわれ英語教師の文脈に置き換えてみると、どうでしょうか。

創造性のある授業は一部の人だけができるものではなく、誰にでもできるもの

うん、素晴らしいですね。

今回は、創造性のある授業のために「授業の脱・属人化」を目指すのはどうか、というテーマでお送りいたします。

 

 

「授業の脱・属人化」とは?

もちろん、これは
「教員免許などいらぬ!だれでもすぐ教師になれるように制度をととのえるべきだ!」
という意味ではありません。
教職課程をはじめとして、各人のたゆまぬ研鑽は言うまでもなく不可欠です。

ただ、その上で申し上げたいのは、
授業をその人と紐づけするの、もうやめません?
もっと具体的に言うと、
授業準備でがんばりすぎるの、もうやめません?
ということです。

終わらないスライドやプリントの作成、単語テストの採点、パフォーマンス課題の添削……。「教育業務はエンドレス」とよく言われますが、その人でないと授業ができない、その人がいないと現場が立ち回らない、そんな時代にはそろそろ別れを告げるべきではないでしょうか。

 

教師のおかれている状況

文部科学省の平成28年度の勤務実態調査結果によると、中学校教員の57.7%において、過労死ライン」を超える月80時間以上の時間外労働が常態化していることが報告されました。
(余談ですが、イーロン・マスク氏がTwitterのCEOに就任した直後「明日から、少なくとも週40時間のオフィスワークをしろ」という内容のことをおっしゃっていました。ご自身の勤務状況を鑑みて、複雑な思いを抱いた方も多数おられたことでしょう。)

加えて、もうこれはニワトリとタマゴの関係ですが、教員採用の倍率も全体的な傾向として下がっています。「教員のなり手が少ない」ということも、忘れてはなりません。
ことさら英語に関しては、その高い運用能力をもった人が「わざわざ」教育の現場を志向するかは、上述の状況からしても甚だ疑問です。

 

ICTの充実

また、ICTのおかげで、そもそもわれわれは以前ほど「頑張らなくても」いいような変化が起きています。
NEW TREASURE(以下、NT)を例に挙げても、Lentrance上のデジタル教科書(LentranceというICTプラットフォームを通して提供)を用いてできることは数知れません。
わざわざ授業用のスライドを作って、単語リストを印刷して、CDデッキを用意して……そういったことは、もう「しなくてもいいこと」にカウントされつつあります。

つまりそれは「最低限の教材があれば、どの英語教師がその教室に行っても授業ができる」という、上述した「教師のおかれている状況」をふまえた授業の在り方が考えられるのではないでしょうか。

 

それを妨げる「検定教科書」

2020年度からの新学習指導要領の実施により、小学校での英語が教科化されました。
それに伴い、中学校で扱う語彙数が「1200語程度」から「1600~1800語程度」へと格段に増加しました。
その結果、何が起こっているかというと(ここはみなさまに大きく首をタテに振ってほしい)、検定教科書がどえらい難しくなっているんですよね(うんうん)。

中学での勤務経験が少なく、恥ずかしながら、最近初めてちゃんと中学校の検定教科書に接したのですが、これはかなり難しいですね……。
そもそも教科書がかなり不親切なつくりで、体系的な文法事項がほとんど載っていない。
単語も「げ、この時期の生徒にこれ読ませるの」というものが散見される。
極めつきは、小学校で出てきた単語は「完璧に」身についている前提。
うーん。

授業を「属人化」させ、細やかな限りない準備を教師に求めることで初めて成り立つ、そんな旧来型の授業を助長しかねない教科書の在り方のように感じます。
プロジェクト型のジャンプ課題も、彼らの成熟度に合わせたものだとは到底思えません。
体系化されていない文法と定着していない語彙をもってして、成熟度の合わないプロジェクト課題に立ち向かう。どんなRPGよりも過酷なミッションです。

 

 

NTの「ぎりぎり」具合

少しトーンが強くなってしまいました、すみません。
その点、NTは非常によい具合です(おお、ぐっとまとめてきた)。
なにが良いかというと、非常によい「ぎりぎり」具合なのです。

 

①「ぎりぎり」読んでわかる内容

各Key Pointには、例文と文法事項が記載されています。
これがちょうどよい量と質で、ここを読んでもわからないであろう点や、ここを見るだけではわからないであろう生徒にフォーカスできるのです。

<NEW TREASURE Third Edition Stage2 P.13>

 

「ぎりぎり」何をやればいいかわかる構成

検定教科書はその不親切さゆえに、経験の少ない教師だと「これはどうしたらいいんだ……」となってしまいます(私がそう)。
その点NTは、少なくともGrammar in UseやKey Pointを用いれば、理論と実践、どちらも網羅できます。
その上で、各教師がやれること・やりたいことにフォーカスできる、そういうぎりぎりの親切さがあるように思えます。
Teacher’s Manualも、「ここはみんなひっかかるよね」というチェック・ポイントがしっかり押さえられていて、それでいてシンプルかつ明快。ずっとお世話になっています。

<NEW TREASURE Third Edition Stage2 P.12>

 

「ぎりぎり」手の届かない難易度の課題

Third Edition Stage2に関して述べると、各章末“Action”が「ジャンプ課題」としては特に適切に感じます(クラスでいちばん得意な生徒で、ちょっと詰まる程度)。
その章で扱った語彙や文法・背景知識をさりげなく網羅している点も、非常に好感が持てます。
もちろんそのまま取り組んでも十分に機能しますし、それこそ各教師の「創造性」が発揮できる場面かな、とも感じます。

<NEW TREASURE Third Edition Stage2 P.22>

 

 

次回、「実践編」として、髙田先生よりNEW TREASUREを使った授業の実践例をご紹介いただきます。
ぜひご覧ください。

 

 


※引用元
「創造性は誰にでもある、太刀川英輔氏が語るクリエイティビティの本質」先端教育 2022年2月号
https://www.sentankyo.jp/articles/3c881ffb-2146-40ac-885f-177ce5b0db5e

 

 

プロフィール

髙田 悠(Yu Takata)

追手門学院中・高等学校英語科、軽音楽部顧問。鳥取県出身。
大阪大学外国語学部朝鮮語専攻卒業、大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了。
ブリティッシュ・カウンシルのインターン、京都の私立校教諭、ウェブライターなどを経て、2022年より現職。複言語主義者。

 

 

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