投稿日時:2023年4月28日
はじめに
はじめまして。長崎県にあります私立青雲中学・高等学校の本村公寿と申します。
本校は中高一貫校で、ここ20年近く、中1・中2でNEW TREASURE(以下NT)のStage1・2を採用するというのが通例となっています。中3からは英語コミュニケーションとして高1の検定教科書を、論理・表現としては「文法問題集」的なものを採用し、いわゆる従来通りの「知識重視型」の授業を行っていました。それでは面白くないと感じ、私が中1から持ち上がって中3の論理・表現を担当する際に、NT Stage3を採用しました。従来通りにやるべきだ、という周囲の声もありましたが、チャレンジする気持ちが大切だと感じ決断しました。
先日、Z会の担当の方とお話をさせていただいたときに、「Stage2までで中学範囲の学習を終えたあと、Stage3以降を採用しない学校もある」ということを伺いました。私自身、試行錯誤を繰り返してきましたが、実際1年間指導してきて、「Stage3を採用してよかった」と心から感じています。その理由を、実践例を添えて簡単にご説明させて頂きたいと思います。(ご紹介するものは Stage3 Second Edition Lesson10の内容となります。)
インプット→チェック→アウトプットで回す学習サイクル
先程、「知識重視」云々と述べましたが、何も今世間ではびこっている「文法不要」「コミュニケーション重視」を声高に叫んでいるわけではありません。私が意識したのはそのバランスです。
NTのテキストには、ターゲットとなる文法事項を含んだダイアログやブログ形式の英文(Grammar本文)が導入として掲載されています。
Stage3 Second Edition L10-2 Grammarパート(pp.160-161)
その本文部分を使って、ディクテーション形式でのリスニング活動を行います。「ターゲットとなる文法事項が理解できていれば、何て言っているのかわかるよね。今日の目標はLesson10-2で扱う文法を理解して、使えるようになることです。」という趣旨の話を生徒たちに伝えます。その後、板書やパワーポイントで文法事項を軽く説明し、すぐに文法問題に取り組ませます(プリント①)。ここまでで「インプット」として、基本的な理解の定着を図ります。
プリント①:新出単語と文法を確認する自作プリント
その後、ライティングの演習を意識的に行い(プリント②)、テキストのKey Points例文を和文英訳形式で宿題にします(プリント③)。こうして、インプットした内容を「チェック」します。
プリント②:ライティングにつなげるための自作プリント
プリント③:日々の課題として提示している、和文英訳の自作プリント
授業の合間に生徒を退屈させないためにも、自作演習プリントで出題した英文や表現を、答え合わせをしたあと必ず起立して復唱させるようにしています。また、これはGrammar本文とは少し離れた内容なのですが、学習している単元に沿った英文に空所を設け、日本語を見てすぐに空所部分に英単語を補充した状態で英文を読めるかペアでチェックしあうことも時間の許す限り行っています(プリント④)。
プリント④:日本語を英文に瞬発的に変換できるようにするための自作プリント
ここまでの活動においても、フレーズの復唱やペアワーク等の「アウトプット」活動をできるだけたくさん行うよう努めています。
更に、NTのありがたいところは、Grammarパートで学習した文法事項を用いた表現がReadパート内の長文に散りばめられているところです。英語コミュニケーションの授業だけではなく、論理・表現の授業でも生徒の多読の意識を高めることができます。
Stage3 Second Edition L10 Readパート(pp.164-165)
これはNTの実践例とは直接関係ありませんが、各レッスンでターゲットとなっている文法事項が使われている洋楽をピックアップし、和訳やディクテーションを行っています。習得した知識がただの「お勉強」で終わらないよう、飽きさせないような工夫をしています。
使って感じたNTの魅力
流れを整理すると、NTは、習得させたい文法事項をただ教えるだけのツールではないことがわかります。「聞く」→「知識を得る」→「書く」→「読む」→「聞く」というサイクルを通して、これまでの学習を振り返る機会を何度も生徒に与えられるコンテンツがNTにはふんだんに盛り込まれているのです。
また、Stage3 Second Editionには、1レッスンおきにCommunication(*)というパートがあります。「話す」技能まで意識されたコンテンツが準備されているのですが、私の授業内では扱っていません。中途半端に扱うことで消化しきれず、学習の定着が図れなくなるリスクを回避すべきだと考えているからです。自分の役割を「話す」以外の3技能を鍛えることに注力し、「話す」ことはネイティヴの先生に任せよう、ということで割り切っています。
(*編集部注:Third Edition Stage3では、Project(全3回)や、+Plusという発信のきっかけとなる問いかけを各セクションに設けて、選択的に話す活動を行っていただけるようにしています。)
NTはアレンジがしやすく、様々な活動の発展性がある、使い勝手の良い教材だと思います。これまでに紹介した自分の実践例も、言ってみれば「誰にでもできる」「アレンジできる」ものです。
以上のように、ただ文法を教えるだけの「知識重視型」でもなく、かといって文法を軽視した「コミュニケーション重視型」でもない、絶妙なバランスを保っているところがNTの魅力だと思います。
おわりに
おそらく中高一貫校の場合、Stage3以降を採用しない理由として、「中2までは中学英語で中学生らしく様々な活動をメインに授業を進めよう。その後、中3になり、高校の内容に入るタイミングで実戦型のものに切り替えよう」というような感覚があるのかもしれません。しかしながら、このコラムでお伝えしてきたように、Stage3を用いて、インプット→チェック→アウトプットの学習サイクルを回し始めてからの方が、英語が苦手な生徒でも顔を上げる機会が増えたことは間違いありません。Stage2で終わらせるのではなく、Stage3も継続して採用する意義はあるのだと感じます。
このコラムがNT Stage3を採用するか否かで悩まれている先生方の背中を押すきっかけになれば幸いです。特に中高一貫校における中3の位置づけは難しいところではありますが、私自身、他の先生方の実践例を参考にしながら研究を重ね、ゆくゆくはNT Stage4・5と続けていければと考えています。ありがとうございました。
プロフィール
本村 公寿(Motomura Masatoshi)
青雲中学校・高等学校教諭。バスケットボール部顧問。
東京外国語大学欧米第一課程英語専攻卒業。就職・転職支援事業を行う一般企業に勤務した後、方向転換して教員の道へ。教員歴9年目。