『速読英熟語[改訂版]』著者 岡田先生へのインタビュー

大学入学共通テストでは、英語リーディングの試験は総語数が増加傾向にあり、センター試験時代の4300語程度に対して現在は6000語超となっており、速読速解力が求められています。

このような傾向に対応できるよう、知的好奇心をくすぐる英文を読みながら、無理なく重要単語を覚えられる、他に類を見ない単語集として好評を博している「速読英単語(速単)」シリーズについてZ会では近年改訂を重ねてきました。そして2024年、ついにその英熟語版である『速読英熟語』(以下「速熟」)が全英文刷新・音声無料となり大改訂いたします!

今回の改訂でのこだわりや裏話などを、著者の岡田賢三先生にお話を聞きました。

今回の『速読英熟語[改訂版]』は、制作にどのくらい時間がかかったのでしょうか。

制作期間は1年以上でした。

『速熟[改訂版]』は初版の速熟とは全く異なる方法で作成しています。 「速単」「速熟」シリーズの最大の特長は英文を読む中で、入試必須の英単語や英熟語を覚えられるという点です!そこで、最新の大学入試に必須の英熟語・構文を取りこぼしなく収録するために、データベースを作成しました。

まずは、対象とする57大学の個別試験と大学入試センター試験・大学入学共通テスト、主要な英語教科書・英熟語集や問題集に載っている英熟語・構文を全部洗い出すところからスタートしました。

そこから、出現回数などを徹底分析し、1084個を厳選しました。中には、当初データベースには含まれていませんでしたが、実用性なども考慮して、これはどうしても入れた方がいいんじゃないかというこだわりの熟語も入っています。

初版は、最初に英文を制作したので、どうしても文章に入れられない英熟語・構文ができてしまい、仕方がなく、最後の「その他の重要熟語・構文」として短文に盛りこむ形で掲載していました。ですが、「全て英文に含めてほしい」というご利用いただいた方の声もあり、制作方法を変えました。

英熟語の分析・選定と同時進行で、英文のトピックのアイディアを100個以上出しをしました。「速単」「速熟」シリーズでは、様々なトピックの英文があります。改訂版では、お蔵入りになってしまいましたが、落語のお話や昔からアメリカで親しまれているジョークなどもトピックも候補の中にありました。

今回、全英文について、比較的やさしい英語表現を用いながら、入試問題で頻出の(あるいは今後出題されそうな)トピックや、教養を深めるトピックに沿って書き下ろしています。

最もこだわったのは、英文を読んで「え、そうなんだ!」と思ってもらえるようにするということです。自分が教員やっていて、英語の教科書で学んだことって結構あるんですよ。だから、生徒にも話せるネタがいっぱいあるんですよね。なので、速熟を通して「そうなんだ」と学んだり思ったりしてもらえるような内容を意識して多めに入れています。

▲赤字原稿。より分かりやすい表現かなどを何度も確認しました。

もっとも苦労した作業はありましたか。

苦労したのは、学習者が学びやすい英文・和訳であるかという点ですね。

速熟はプロのネイティブライター・翻訳の先生に英文と和訳を作成してもらいました。 その際、実際に使っていただく学習者の方のレベルに合わせて英文の難度や、和訳としても、どの単語がどの和訳になっているかの対応が分かりやすくなるようにすることに注力し、スっと英文や和訳が読めるように修正を入れました。

このほか、英文・和訳、熟語・例文など、紙面に掲載しているすべての内容に誤りがないか、分かりやすい文章になっているか、事実に反する事柄が含まれていないかなどをいくつもの視点で確認をしました。日本人の先生だけでなく、ネイティブの方々も含め、英語教育に携わる何人もの人たちに読んでもらい、ギリギリまで皆さんの英語学習に役に立つ本なのかをチェックしました。

▲赤字原稿の数々。この他にもデータ上で確認していました。

今回重視したポイントやこだわりはありますか。

今回、速熟の学習効果を高めるために、「前置詞・副詞コアイメージ」をイラスト付きで学ぶコーナーを巻頭に充実させました。ここはかなりこだわりました。元々、初版の巻末にも掲載していたのですが、ご利用いただいた方にヒヤリングしたところ、評判が良いコーナーでした。それをイラストとともに掲載することで、視覚的にもイメージしやすくし、よりパワーアップさせました。

どこの国の言葉でも語源がありますよね。例えば「put up with~」は「~を我慢する」という意味ですが、upは立ち上がっているイメージです。なので、with~とともに立ち上がっている状態にすると、何か嫌なことに対しても常に立ち上がっている状態…つまり、「~を我慢する」という意味になりました。 「前置詞・副詞」の概念を知っておくことで、英熟語・構文がすんなり頭に入りやすくなります。

▲前置詞・副詞のイメージをイラストで掲載。

ついに、別売りCDから音声を無料で提供することになりましたが、ここにもこだわりがあるとお伺いしています。

今回、音声にもかなりこだわり、英文・例文にナチュラルスピードとハイスピードの2種類を用意しました。ナチュラルスピードは入試のリスニング問題と同じ速さ、ハイスピードはそれよりも速いスピードになっています。

ナチュラルスピードを2倍速にすれば良いと思う人もいるかもしれませんが、やはりリエゾン(子音と母音、単語と単語が連結するなどして変化する音)が違います。

今回新設された「4コマ」「別冊」についてもお聞かせください。

分析した熟語構文データベースにある語句を速熟に載せきる必要があったのですが、ネイティブライターの先生から事前に「これは文章には入らないような熟語ですよ」と言われていたものがありました。主に口語表現ですね。

ただ、テキストだけの会話ダイアログ的なものだと面白くないということで、4コマにしました。イラストで、熟語を使うイメージもしやすいと思います。

さらに、今回は取り外しできる別冊に英文解説やCheck & Master(文法の要点)を付けました。英文の構造を理解しながら読むと、さらに学習効果が上がります。 Check & Masterは初版にも収録されていて、ご利用いただいた方のアンケートでは、「文法の要点が簡潔にまとまっているため、テスト前に見返せて便利」と評判でした。別冊になったことで、さらに使いやすくしています。

▲口語表現を4コマで掲載。毎日の学習の息抜きにも。

先生おすすめの『速読英熟語[改訂版]』の活用方法はありますか。

まず初めに、巻頭の「前置詞・副詞コアイメージ」をしっかり読んで勉強する方がいいですね。前置詞・副詞の概念を理解した方が速熟の学習効果も高まり、速熟以外の英文や実際の入試でも応用がきくようになります。今回、ページの関係で本書に掲載できなかった基本動詞も二次元コードからイラスト付きで確認できますので、そちらもチェックしてみてください。

また、英文は読むだけ・聞くだけではなく、シャドーイングを行うこともおすすめです。ナチュラルスピードの音声を一時停止しながら、何を言ったかということを声に出して読んでみると良いですね。そして「リスニングと発話練習」を行うことで、英語でのコミュニケーション力も鍛えられます。

あとは、例文の暗記がおすすめです。会話中に、頭の中で文を作るのはかなり高等な作業なので、ほとんどの人は蓄えた文を借りてきます。蓄えていない文は、中々出てきません。考えているうちに、話題が先にいきます。だから文をできるだけ多くストックするのです。

英語を学習する皆さんへのメッセージをお願いします。

私は、実は英語ではなく歴史や古典の方が好きなんです。ただ、英語を学習すると、地球の裏側の人とでもコミュニケーションを取れます。その意味で、英語は生きていく上で、必須のスキルだと思います。

日本の英語教育は、実用的でないとよく言われますが、これはとんでもない話です。基礎がしっかりしているから、自分で発話練習・リスニングをやることで、ものすごくコミュニケーション力はつくと思います。

だから、英語は好き嫌いにかかわらず、しっかり学習してくださいね。

「速単」「速熟」シリーズは英単語や英熟語を覚えられるだけでなく、シャドーイングやリスニング、速読力、(英文テーマの)背景知識力など幅広い力が身につきます。受験勉強だけではなく、英語は生涯役に立ちます。英語の勉強をして損はないので「速単」「速熟」シリーズを使って、楽しみながら勉強してください。