【幼児ワーク連載⑤】『Z会幼児ワーク』制作秘話②~小学校入学前の「学習の土台」~

担当編集に訊きました

堀 水保

Z会入社後、長年にわたり通信教育の教材制作に従事。
小学校向け教材に加え、中学校向けの理科教材開発に深く携わる。
現在は幼児・小学生向けの書籍編集を担当。「幼児期こそ、将来の学習につながる質の高い体験を」という信念のもと、『Z会の幼児ワーク』の制作を主導。

なぜ今、入学前に「きくチカラ」が必要なのか?

――小学校入学前の「学習の土台」についてはどうお考えですか?

小学校の入学前説明会やお通いの園などで小学校に入る前までに身につけておきたいことについては、ご説明があるかと思います。小学校に入ると『小学校学習指導要領』に基づき、教科の学習がスタートします。そのため、正直、入学前にひらがなが全部書けるとか、計算が完璧である必要はないと思っています。
それよりも、「自分とお友達の持ち物の違いが分かる」「規則正しい生活ができる」といった生活に密着したことがクリアすべきところだと思います。

あとは、やはり「人のお話を聞いて、それを理解する力」です。聞いた上で「自分は今、何をしなければならないのか」を判断し、自分の周りのことを自分でできるようになる。そういうことが大事かなと思っています。自分のことが自分でできる、率先してやろうと思う気持ち、そして色々と試行錯誤する力。そういった「土台」が育っていると、小学校に入って生活がガラリと変わった時でも、「今こういう状況だから、こうしてみよう」「うまく起きられなかったから、明日はこうしよう」と、自分で考えて動けるようになります。入学前は、そうした土台を作っていくのが一番大事な時期だと思っています。

――確かに、1対1で親御さんと話している時は察してもらえますが、入学後は大勢の中で先生の話を自分でキャッチしなきゃいけませんよね。

そうなんです。1対1なら「ここが理解できていないな」と大人が察して話せますが、集団に対して話している場合はそうはいきません。
「きくチカラ」がある子とない子では、忘れ物をしたり、授業のポイントを聞き逃して躓いてしまったりと、生活や学力に差が出てきてしまいます。
聞いた内容を自分で整理して理解できないと、特に算数などは一度わからなくなると躓きやすくなってしまいます。
「きく」ということは、単に耳に入れるだけでなく、情報の重要度を整理して自分の中に落とし込む「思考力の土台」なんです。

幼稚園や保育園から小学校への「スタートカリキュラム」は小学校学習指導要領でも大切にされていますが、『Z会の幼児ワーク』としても、その橋渡しができるものが作れないかと思って誕生したのが、この『(入学前の)きくチカラ』です。

――「きくチカラ」と一言で言っても、子どもによって興味はバラバラですよね。飽きっぽい子や、お勉強が苦手な子でも夢中になれるような、工夫はありますか?

ただ、興味がないことを「聞きなさい」と言われても、右から左へ流れていってしまいますよね。大人だって専門外の難しい話をされても頭に入らないのと同じです。だから、まずは「興味があること」を聞いてほしい。そのために、「物語」「生活」「遊び」「言葉」「自然」「表現」という6つの領域をテーマに設定しました。

幼児のお子さんが好きなものは何かと考えた時に、物語が好きな子は多いですし、お料理や買い物といった生活に身近なものに関心がある子、そして何より「遊び」が大好きな子が多いです。また、私たちは自然環境に包まれて生きているので、自然科学の視点も必要だと考えました。1ページ目から順番に進めるのではなく、お子さんが「これ面白そう!」と思ったテーマから自由に始められるようにしています。

――領域の選定には、何か教育的な根拠もあるのでしょうか?

実はこれらの領域を決める際に参考にしたのが、国の「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」にある『保育の5領域(健康、人間関係、環境、言葉、表現)』です。
これらを意識しつつ、ワークの中でどう伸ばしていけるかを考えました。「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を意識して、小学校の学習指導要領にある「知識・技能」などへスムーズに繋げていけるように作っています。

――単に音を聞き流すのではなく、注意深く聞くための「問題構成」についても工夫されているのですね。

はい。「どこに注目して聞くべきか」を遊びながら練習できるようにしました。
例えば「笑い話を聞いてみよう」という問題。ストーリーの中で「栗饅頭を買った」「次は温泉饅頭を買った」と話が進んでいきますが、それをしっかり聞いていないと迷路の経路が辿れないようになっています。「どこのお店に行きましたか?」という単純な問いではなく、音声を聞いて経路を導き出すという、高度な情報整理が必要な仕組みです。

他にも「音声の指示通りに絵を描く」問題があります。「お団子を3つつなげて、串を刺して……」といった指示を正確に聞き取ってアウトプットする。これ、大人でも適当に聞いていると指示とは違う絵になってしまうんです(笑)。
親子でコミュニケーションを取りながら楽しく取り組んでいただくのも良いですね。

――ちなみに、この『きくチカラ』は「5・6・7歳」という年齢設計になっていますが、どのようなタイミングで取り組むのがおすすめですか?

興味を示したら、いつでも使ってもらえればと思っています。正直、どの教材も年齢に縛られる必要はないのですが、特にこの『きくチカラ』は先ほどお伝えした通り、小学校入学後に「話を聞いていなくて次の日忘れ物をしてしまう」「授業をぼーっと聞いていて内容を聞き逃してしまう」といったことを防ぐためのものです。
ですので、入学前の時期には特に取り組んでほしいですし、逆に小学校に入ってから「うちの子、ちょっとお話を聞けていないな」と感じた時にも使えます。

「情報を聞き取る」と言っても、ただ耳に入れるだけでなく、情報の重要度を整理して自分の中に落とし込むには練習が必要です。
例えばワークの中では、最初に「〇〇ちゃんが怖いと言ったものは何?」といったテーマを与えられます。「お話は長いけれど、大事なところはどこかな?」と意識して聞く。耳から入った情報を整理する力を養ってほしいので、小学校入学後でも十分に使える教材だと思っています。

 

勉強との「幸せな出会い」

――ありがとうございます。『Z会の幼児ワーク』シリーズは、様々なこだわりが詰まったワークだということがすごく伝わりました。最後に、お子さんたちにどう取り組んでほしいか、まとめをお願いします。

とにかく「楽しい」と思ったものからやってほしいです。頭から順番にやる必要はありません。パラパラとめくって「この絵が可愛い」「サンドイッチが美味しそう」「これを作ってみたい」といった直感で始めていいんです。
勉強だと思わずに、このワークを使って「遊んで」ほしい。その遊びの中で見つけた「いいこと」「発見」をおうちの方にたくさんお話してほしいですね。
お子さんだけでなく、保護者の方にとっても新しい発見があるのが『Z会の幼児ワーク』だと思っています。