【第2回試行調査との比較】
●細かな変化は見られたものの、難易度は第2回試行調査並みで、分量も大きな変化はなかった。音声にはアメリカ英語以外も含まれた。
●第3問は、1回読みになったことの影響もあるためか、設問数は、試行調査よりも2つ多い6つであった。
●第4問A 問18〜問21では、円グラフに入る項目を選択する問題が出題され、試行調査で出題されたイラストを並べ替える問題の出題はなかった。
●第5問は、第2回試行調査同様、長めの講義文を聞き取るという形式は変わらなかったが、ワークシート内の空所数が7個から5個に減った。
●第6問B 問36では、試行調査であったような「誰がトピックに関して賛成/反対しているか」ではなく、「何名が賛成しているか」が問われた。ただし、各人の立場をつかむという点には変わりはない。4名の学生が入れ替わり発言したため、スピードに追いつけず、また、内容的にも要点がつかみづらいと感じた受験生もいたと思われる。試行調査より難度が上がったと言えるだろう。
●配点は、試行調査と比べると、第1問は24点→25点(1点↑)、第2問は12点→16点(4点↑)、第3問は16点→18点(2点↑)、第4問は12点→12点(変化なし)、第5問は20点→15点(5点↓)、第6問は16点→14点(2点↓)と、前半部分がアップし、後半部分がダウンしている。前半は比較的簡単な問題が多いため、後半でいかに得点できるかで上位層との弁別をよりはかる問題になったと言えそうである。
センター試験が共通テストに変わる上で大きく変更になった点は、「実際のコミュニケーションに基づいた題材の豊富さ」「問題レベルの多様さ」「1回で聞き取る聴解力」「聞き取った情報を整理する情報処理能力を試すための設問設定」です。そこで、Z会の共通テスト対策書籍では、上記や「大学入学共通テスト問題作成方針」にのっとり、以下のような方針で作成を進めてきました。
●CEFR A1からB1レベルまでの問題をバランスよく出題すること。
●問題のテーマや場面・目的・状況の設定においては、高校生の実際のコミュニケーションを想定した明確なものを、バリエーションを持たせること。
●「速解力」と「情報処理能力」向上の観点から、「主題は何か」「重要な情報を探し出すことができるか」に主眼を置いた問題および解説を作成すること。
今回の共通テストにおいても、こうした点は全問に通底しています。Z会の共通テスト対策書籍では、この根底にある「作問のねらいとする資質・能力についてのイメージ(素案)」(大学入試センター)が公表するCEFRレベルごとのディスクリプタに沿って作問しており、今後出題される問題に対応できるつくりになっています。難易度については、今回一部やや上がった部分もありますが、特に『パワーマックス 英語リスニング』では難易度に幅を持たせた出題としていたため、事前対策としては最適だったと考えています。
次の改訂においては、第3問の小問数増、第4問Aのグラフ穴埋めなど今回の出題形式に合わせたものに加え、第2回試行調査を踏襲した問題もバランスよく出題する予定です。
●第4問A 問18~21:試行調査のイラスト並べ替えから円グラフの穴埋めに変わりました。しかし、試行調査で事前に公表されていた「ねらい」の「必要な情報を聞き取り、図表を完成させたり、分類や並べ替えをしたりすることを通じて、話し手の意図を把握する力を問う」のパターンの1つであり、今回の出題形式にとらわれる必要はないと考えています。基本的には、図表やイラストと関連する80~100語程度の話の概要を1回で聞いてつかむトレーニングに加え、今回は順番を表す数字に絡んだ表現が多用されていましたので、そうしたものについて耳で1回で聞いて理解できるトレーニングを積むことが効果的と考えています。
●第6問B 問1:試行調査と今回とでは、登場人物の人数は4人で変わらず、放送文の語数もむしろ減ったのですが、各人が短い発話数で話者が頻繁に変わることが特徴的でした。この点が難しく感じてしまった受験生も数多くいたと推察されます。今回、問題冊子に登場人物のメモ欄が追加されたことに象徴されるように、「誰が」「どんな立場か」といったことをより意識して、メモを取る練習を積むことが必要です。Z会の共通テスト対策書籍でも、第6問Bは同様の設問形式を扱っていますので、そうした「複数の登場人物が出てくる素材」を使って、「1回で聞いたこと」に対して「話者の立場を整理する」ことが効果的と考えています。
●上記を踏まえ、高3の夏休み前までは、ベースとなる単語力・発音力・リスニング力を鍛えることを前提にご指導いただき、夏休み以降は「1回で聞き取る」「情報を整理する」ということを主眼に、模試型の問題集を使った演習を地道に積み重ねてることが成果につながると考えています。