【第2回試行調査との比較】
●難易度は第2回試行調査並だが、分量は増加したため速読速解力がより求められた。また、試行調査から形式が変更になった問題も見られたため、解答する際に戸惑った受験生も多かっただろう。
●第1問Aは、試行調査のような「素材文が読み手側に一方的に向けられた文章」ではなくなり、SNSの双方向型の文章に変化した。
●第2問Bは、事実と意見を選り分ける必要のある問題が出題されたのは試行調査と同様だが、本文中の英語表現の意味を問う問題や登場人物が賛成か反対かを問う問題は出題されなかった。また、生徒が反論する助けとなる情報を選ぶ問題が新たに出題された。
●第3問Aは、文章だけではなく視覚情報も組み合わせないと解けない問題が含まれる点は試行調査と同様であったが、文章と視覚情報を丁寧に確認した上で、計算もして解答を導く必要があった。試行調査よりやや難度は高かったと言えるだろう。
●第3問Bでは、試行調査と同様に情報を時系列に沿って整理する必要がある問題が出題された。ただし、試行調査では正しく並べ替えられたものを1つ選べばよかったが、今回は自分で選択肢を並べ替えなければならなかった。
●第4問は、試行調査ではグラフを含む2つの記事から書き手の意図を把握する力や必要な情報を得る力を問う問題が出題されたが、今回は表・グラフなど複数資料を含む2名のメールのやり取りから必要な情報を読み取り、整理する出題であった。資料の読み取りが不可欠という点は試行調査と変化ないが、さらに予定を並べ替える問題が新しく出題された。試行調査より難度が上がったと言えるだろう。
●第5問は、試行調査では偉人の伝記をポスターにするという問題であったが、今回はある牛の物語をプレゼン用のスライドにするという問題が出題された。物語の主人公AstonとSabineの伝記と考えれば試行調査と変わらない。
●第6問Aは、試行調査第5問で出題されたようなポスターの空欄部分を埋める形式の出題。ただし、設問は標準的な4択で、該当箇所も見つけやすく、比較的容易に解答を導ける問題であった。
センター試験が共通テストに変わる上で大きく変更になった点は、「すべて読解問題であること」「実用的な場面が意識された英文」「複数の文章から情報を読み取る力が求められる設問設定」です。そこで、Z会の共通テスト対策書籍では、上記や「大学入学共通テスト問題作成方針」にのっとり、以下の方針で作成を進めてきました。
●CEFR A1からB1レベルまでの問題をバランスよく出題する
●問題のテーマや場面・目的・状況の設定においては、高校生の実際のコミュニケーションを想定した明確なものとし、バリエーションを持たせる
●「速解力」と「情報処理能力」向上の観点から、「主題は何か」「重要な情報を探し出すことができるか」に主眼を置いた問題および解説を作成する
今回の共通テストにおいても、こうした点は全問に通底しています。Z会の共通テスト対策書籍では、この根底にある「作問のねらいとする資質・能力についてのイメージ(素案)」(大学入試センター)が公表するCEFRレベルごとのディスクリプタに沿って作問しており、今後出題される問題に対応できるつくりになっています。今回、一部の問題で難易度がやや上がりましたが、特に『パワーマックス 英語リーディング』では難易度に幅を持たせた出題としていたため、事前対策としては最適だったと考えています。
次の改訂においては、第2問Bの文章後の行動を推測する問題など今回の出題形式に合わせたものに加え、第2回試行調査を踏襲した問題もバランスよく出題する予定です。
●第2問B 問5:この問題では、文章のあとの展開として、先生の意見に反論するのには何を調べればよいかを考えさせています。この問題のように、文章には書かれていない内容や行動を推測させる問題が複数出題されているのが、今回の英語リーディングの特徴の1つと言えるでしょう。ただし、いずれの問題も、文章の内容や展開を正しくつかめていれば、容易に答えられる問題になっており、特別な対策を行う必要はないと考えています。従来のセンター試験と同様に、まずは英文をしっかりと読み解く姿勢を身につけることが、最大の英語リーディング対策になると言えそうです。
●第4問 問1・問2:この2問では、2つのメールに書かれている情報に加え、表やグラフの情報を組み合わせて正解を導くことが求められています。さらに、2つのメールに書かれている内容を組み合わせないと正しい情報が導けないようになっており、複雑な情報処理が必要になっています。この問題のように、様々なソースから必要とする情報を読み取る力を問う問題が複数出題されているのも、今回の英語リーディングの特徴です。このような問題の対策としては、英文のポイントを整理しながら読む習慣をつけることが考えられます。英文を読む際に、重要と思われる箇所に線を引く、パラグラフごとに要点をメモするなどの作業をさせると、視覚的にも英文のポイントがわかり、問題を解く際にも情報を整理しやすくなるでしょう。