●センター試験と同様に、大問5題で第1問・第2問は必答問題、第3問~第5問は3題のうち2題を選択する選択問題であった。
●単なる数値を求める問題だけでなく、「正しい(あるいは誤っている)選択肢を選ぶ問題」「具体的な実社会での設定がなされ、それに対して数学を適用し、解釈をしていく問題」「複数の登場人物が会話をしており、その人物の考えを踏まえて解答していく問題」など、これまでのセンター試験であまり見られない出題が多かった。
共通テストの問題を見ると、「生徒同士の会話文」や「多肢選択式の問題の増加」という形式の変化や「日常の事象」という新しいタイプの題材、そして「問題の文章量の増加」といった面に目がいきがちです。しかし、センター試験と共通テストの最も重要な違いは、共通テストでは「解決過程を振り返る力」や「事象から問題を見いだす力」といった、センター試験ではあまり問われなかった資質・能力が問われるようになったことです。今回の共通テストでは、従来のセンター試験で主に問われていた「処理力を問う設問」も試行調査と比べると多く見られましたが、試行調査や共通テストでの得点状況を見てみると、差がついたのは「解決過程を振り返る力」や「事象から問題を見いだす力」を問う設問でした。
このようなことから、Z会の共通テスト対策書籍では、1冊を通して数学I・Aで必ず押さえておくべき重要事項を一通りカバーできるものを題材とし、センター試験から引き続き見られた「処理力を問う設問」を扱うのはもちろん、共通テストで新たに見られた「解決過程を振り返る力を問う設問」や「事象から問題を見いだす力を問う設問」もバランスよく扱います。また、次の改訂においては、共通テストの設問をもとに問題文の表現や分量、難易度についても見直しを行いますので、共通テスト対応模試として実戦的にご利用いただけます。
今回の共通テストの問題は、過去2回の試行調査と比べると処理力を問う設問の割合が多く、従来のセンター試験と同様の対策しかしなかった生徒でも、ある程度は得点できたものと思われます。しかし、主に中問や大問の最後の設問で、それまでに求めた式や値の意味を踏まえて考えなければ、解答にかなりの時間が必要となるものも見られました。これらの設問は、大学入試センターから発表された「共通テスト問題作成方針」のうち、「解決過程を振り返る力」や「事象から問題を見いだす力」などを問うものといえます。
このような思考力を要する設問に対応するためには、共通テストに対応した問題集に取り組むときも含め、普段の学習から、ただ正解を得られたからといって満足するのではなく、「もっと工夫して効率よく計算できないか」「この結果をもとに、何か新しいことが言えないか」のように掘り下げて考える習慣をつけることが大切です。
また、第2問〔1〕のような、日常生活や社会の問題を数理的に捉え解決する問題は、複雑な数式処理が求められることはないものの、複数の数量の関係を正しく押さえた上で数式処理に落とし込むことが求められます。同様の問題に取り組んだことがあるかないかによって問題を理解するのにかかる時間に差が出るため、共通テストに対応した問題集を用いて対策しておく必要があります。この他、「身のまわりのできごとで、数式を用いて表せるものはないか」「数学を使って身近な問題を解決することができないか」と普段から意識してみることも対策となります。