●第2回試行調査や2020年度センター試験に比べ、難易度は上昇し、分量も増加した。典型的な問題は少なかったため、受験生の負担感は増加しただろう。
●第3問Aではダイヤモンドとガラスの入射角のグラフを正しく活用した上で、「部分反射」という聞き慣れない現象について考える、共通テストらしい問題が出題された。
●第3問Bでは水銀原子が励起状態になったときの、全体の運動量や運動エネルギーの和について考える、難易度の高い問題が出題された。
●第4問では会話文の問題が出題され、運動量保存則やエネルギー保存則について、式を立てて値を求めるだけでなく、現象を正しく理解しているかどうかが問われた。
●今回の共通テストでは、第2回試行調査に出題されたような実験やその考察を中心とした問題はあまり出題されず、従来のセンター試験を踏襲する形の試験となりました。しかし、文字計算の出題がほとんどなく全体的に計算量が少なくなったこと、定性的にではあるものの公式の当てはめだけでは対処できない物理現象の本質の理解を問う問題が多かったことなどが、従来のセンター試験とは異なる点と言えます。
●次の改訂においては、これらの傾向を踏まえ、公式やパターンの暗記だけでは太刀打ちできない、物理現象の本質の理解を問う問題を多く出題します。
典型問題は多少計算が複雑でも方針が立つため正しく解答できる生徒が多いものの、物理現象の本質を問う問題になると、計算が要求されなくても正答率が低くなる傾向があります。その上で共通テストの出題方針を鑑みると、典型問題の演習や計算練習に終始せず、物理現象の理解に重点を置いて指導されるとよいと考えます。
例えば、第1問 問1では見かけの重力が左下向きにはたらくことになりますが、これは「水平面が傾いて斜面に置き換わったことになっている」と直感的な理解ができるように指導するとよいと思います。また、第4問では、単に運動量保存則を用いてそり(Bさん)の速さを求めるだけでなく、「そりおよびBさんとボールが完全非弾性衝突をしており、その結果エネルギーが熱として失われる」という物理現象を強調して教えるとよいと思います。
このように、直感的な理解を促すような視点を提示したり、物理現象の本質を強調したりして指導することが、共通テスト対策のポイントとなります。