英語リーディング

◆ 2022年度の出題内容

● 難易度は初回の共通テスト並だが、読解量（語数）はやや増加した。
● 出題形式にいくつか変化は見られたものの、短時間で多くの情報を処理する速読速解力が求められた点に変わりはない。
● イラストや表、グラフを扱う問題も初回と同様に多数出題された。なお、第2問と第3問ではイギリス英語特有の表現が用いられていた。

大問	中問	配点	形式
1	A	4点	ブラジルの料理本
1	B	6点	キリンの赤ちゃんの名前コンテストの参加要項
2	A	10点	大学図書館の利用についてのお知らせ
2	B	10点	学校内新聞の記事
3	A	6点	日本文化体験イベントについてのブログ
3	B	9点	登山チャレンジについての雑誌記事
4	－	16点	家電購入のアドバイスについての大学新入生向けのブログ
5	－	15点	テレビ発明の特許を巡ってのFarnsworthの伝記
6	A	12点	朝型・夜型の生活スタイルについての記事
6	B	12点	プラスチックの分類とリサイクルについての記事

◆ 出題内容の分析　※難易度は、共通テスト受験者全体を母集団と考えています。

［第１問］

Ａ（やや易）：初回の共通テストではSNSの双方向型の文章だったが、今回は「写真と箇条書きの説明」が4つ並ぶ形式へと変化した。共通点を確認させる問題が新たに出題されたが、登場人物の次の発言を問うような推論発問はなくなった。

Ｂ（やや易）：難易度は初回のものと語数も含め大きくは変わらないが、表が簡易なものに変わった。必要な情報を文章から的確に読み取ることが求められている。

［第２問］

Ａ（標準）：第2回試行調査で出題されたものの初回では出題されなかった計算問題が出題された一方で、意見と事実を問う問題は事実を選ぶもの1題のみの出題となった。また、問1は正しい選択肢の組み合わせを問う新傾向の問題。文章全体からキーワードを探す必要があったが、それぞれ探すべき箇所は明確であり、時間をあまりかけすぎずに解きたい問題であった。

Ｂ（標準）：初回の共通テストでは事実と意見を分別する問題が出題されたが、今回は出題されなかった。数値を参照して高いものから順に並べる問題や、本文中のある情報を正しく言い換えた文を選ぶ問題、タイトルを選ぶ問題などの新傾向の問題が多く出題された。

［第３問］

Ａ（やや易）：初回の共通テストと同様に、文章と視覚情報（イラストや図など）の情報を組み合わせて解く問題であった。初回の共通テストで出題されたような、正答を導くために計算が必要とされる設問はなく、代わりに筆者の感情を問う設問が出題された。

Ｂ（標準）：英文は、初回が学校内ニュースレターであったのに対し、今回は登山雑誌の記事となっており、語数も少し増えている。設問形式については若干変更があり、「自分が次にまずやるべきことは何か」のような問題は今回は出題されなかった。出来事を時系列に沿って整理する設問については引き続き、選択肢をすべて自分で並べ替えるものとなっていた。

［第４問］（やや難）

初回に引き続き、2つの異なる筆者による英文と資料などから、必要な情報を読み取る形式の問題が出題された。今回は、両者の主張の相違点や共通点を問う、試行調査と同様の問題が出題された。

［第５問］（標準）

英文を読んで、プレゼンテーション用の要約ノートを完成させる問題で、形式としては初回とほぼ同じであった。要約ノートの見出しに合う複数の情報を探し出したり、出来事を時系列に沿って整理したりする設問にも目立った変化はなかった。

［第６問］

Ａ（標準）：初回と同様、英文の記事を読んで、その内容に関するまとめの空所を埋める問題だが、まとめの形がポスターから要約メモに変わった。記事の英文は初回よりも難易度が上がっているが、設問自体は比較的取り組みやすく、問4では2つの空所に入れるものを6つの選択肢から選ぶという新しい形式も出題されたが、難易度は特に高くなかった。

Ｂ（やや難）：第5問や第6問Aのように、本文を読み、アウトラインをまとめたポスターの空所を埋める形式となった。英文の難易度は昨年度と同等だが、語数は大幅に増えた。設問数は4→3問に減ったが、回答数は5つで変化なし。

◆ 『2022年用パワーマックス』出題内容をふりかえって

『2022年用パワーマックス』では、初回の共通テストで出題された第6問Aのサマリー形式の資料の空所を補充する形式を3回分扱いましたが、今回の共通テストでも第6問Aは同様の形式で出題されました。また、第5問については、テーマとして特定の人物の伝記を扱うという点では試行調査の形式に近いものに戻っており、これについては8回分すべてで類似の形式を踏襲していました。全体を通して、多様な図表形式や英文テーマ、試行調査も視野に入れた出題形式を盛り込んでいたことで、受験生の事前対策として役立つ出題になったと考えています。

また、初回の共通テストで出題された「推論発問」タイプの設問や、試行調査・初回の第2日程で見られた第6問Bで図表を選ぶ問題について、『2022年用パワーマックス』では多く取り扱いました。これらの問題については、今回の本試験では出題がなかったものの、追試験では出題され、共通テストが思考力・判断力・表現力を問う性質のものと考えると、今後再び本試験で出題されることも考えられます。今後も一定程度出題しバリエーションを担保しつつ、扱う配分については引き続き検討していきます。

難易度は大幅には上がっていないものの、第1問Aや第2問Bでは新傾向の出題が見られました。そして、第6問Bが顕著でしたが、全体的な語数増の傾向も見られました。今後の改訂でも、そのような変化に対応できる力を受験生がつけられるように、多様なパターンに触れられる問題集の制作を行っていきます。

◆ 共通テストに向けた今後の指導について

第2問A：問題文はイギリス英語で書かれていて、the first floor、the ground floor という表現に戸惑った人もいたかもしれません。また、問1は正しい選択肢の組み合わせを問う新傾向の問題でした。文章全体からキーワードを探す必要はありましたが、それぞれ探すべき箇所は明確で、時間をあまりかけすぎずに解きたい問題です。日々の学習から多様な形式・表現の英語に慣れておき、見た目が新しい設問にも焦らずに対応できるように準備するとよいでしょう。

第5問問3：英文中の一部に時系列に沿わない部分があり、出来事が起きた「年」の情報をもとに、整理して並べ替えなければいけないものとなっていました。共通テストの特徴の1つとして複数の文章の内容を比較する問題がありますが、オーソドックスな形式に見える問題でも、各パートの事実関係を比較・整理しながら読み進めることを習慣化する必要があると言えます。

今回の共通テストでは、試行調査の形式に戻っているパターンも散見されました。また、初回にはあった推論発問は本試験では出題されず（追試験では出題されました）、事実・意見を見分ける問題も出題数が減りました。ただ、実施2年目で出題傾向が定まり切っておらず、特に推論発問は思考力・判断力・表現力を問う共通テストの方向性を踏まえたものになっていることから、このような形式の問題に引き続きチャレンジすることは、今後の対策として有効であると考えられます。