【コラム】英語をツールとして身につけるためのNEW TREASUREエッセンス活用法

投稿日時:2021年9月24日

 

はじめに

当時ロサンゼルスに住んでいた我が家は、現地で出産・子育てを経験しました。それはもう一大事でした。とにかく全て自己責任。一歩間違ったら命に関わります。一刻も早く、自分たちに必要な情報を見つけ出さなければならない!まずは数ある資料のタイトルに目を通して、最初の部分をスキャニング。必要ありそうならスキミング。知らない語彙は片っ端から調べました。文構造が複雑なものは、ちょっと時間をかける。そして必要性を判断するのは最初のページ。初めは不安だから最後まで目を通していたけれど、とにかく時間がかかるんです。ところが読み進めるうちに、パラグラフ構造がしっかりした新聞記事を読むような感覚に。最初を読めば、書かれていることが予測できるじゃないですか。本当にそうなってるんだ、と英語が生活と結び付いた瞬間でした。そういえばアメリカの学校では、クリティカルシンキングをベースにしたLanguageArtsでこのことを学んでいるはず。ですが、ドロップアウトする人も多いようです。。。

そんなこんなで、なんとか入院できる運びになりました。入院するにも膨大な書類に目を通して、一つずつサイン。そんな書類の中の1枚に、「…最善は尽くすが、不幸にも命を救えなかったとしても、私は訴えません。」と書かれた書面にサインして、と言われた時はさすがに逡巡しました。こうした経験を通して、ことば(英語)はコミュニケーションのためのツールであって、そのツールの積極的な使い方を身につけていないと、もったいないどころか命に関わるぞ!と感じたのでした。

 

 

NEW TREASUREと授業展開

さて、そんな私がNEW TREASUREと出会い、どのように授業で活用しているかを、以下の3点から説明します。

①教材はできるだけオーセンティックなものを使えるように計画し、パラグラフ構造を意識する。
②文法的なこと、文構造を分析することなど、ミクロ的な視点を最初は重視する。
③徐々にマクロ的な視点、つまり文章構成から全体的な内容について広げていく。

上記のポイントを念頭に入れて、どのポイントを強調するか、バランスを考えながら教材研究をするようにしています。

 

①パラグラフの構造を理解する

一番のポイントは、「日本人が書いた、日本人の発想の英語」はできるだけ多用せず、意識的にネイティブの書いた英語を使うことです。なぜかというと、日本人の書いた英語は「英語の顔をした日本語」だからです。そうした「英語」を読むと、日本人には違和感がないのですが、英語の感覚で読むというトレーニングとしては、不十分だと考えるからです。また、英語で情報発信する時も、日本人の感覚のままで行くと、I cannot make myself understood in English. な状態が容易に起こってしまうことが予想されます。そうは言っても、通じればよいではないか、という声が聞こえてきます。私もそう思う部分は大いにあります。ところが、部分的には何とかなっても、結局何が言いたいのか「分かってもらえない」ことが起こるのです。日々、世界とつながりやすくなっています。地球規模で未来を創る子供たちには、できるだけストレスなく英語が使えるようになって欲しいのです。

では、どうしたらよいか。個々の文単位での表現そのものは、あまり問題だとは思いません。通じなければ訂正したり、言い換えたりすればよいのですから。より問題なのは、全体として何が言いたいのかが通じないことです。この解決方法の一つは、パラグラフの構造を意識することです。これは価値観とか感覚ではなく、明示できるフォーマットがあるので誰でもできます。実際にフォーマットに従って読み書きのトレーニングを欧米の子供たちはたくさんしていますし、社会に出ると、そのように書かれている英語で、当たり前のように情報伝達が行われているのは先述のとおりです。このフォーマットを当てはめて文章を読み、発信するトレーニングを骨子にします。

パラグラフのフォーマットに従って英語を読み、書くトレーニングについては、たくさんの教材があります。NEW TREASUREはネイティブによって書かれた英語を使い、そのコンセプトが活かされています。パラグラフ構造については、NEW TREASURE Stage4の巻頭にある説明が参考になります。教材については、多くの先生方が何らかの形で教材を作られていると思いますので、ここでは深入りしませんが、ポイントはあくまでもトレーニングだということです。つまり、コンセプトが分かっただけ、ちょっとやっただけでは身につきません。脳みその筋トレですから。常にトピックセンテンスを意識して、論理展開のパターンを意識しながらトレーニングを継続しなければなりません。とはいっても、言うは易しですけど。

 

<NEW TREASURE Stage4より:パラグラフの構成と役割>

 

 

②ミクロ的な視点を重視する

文法事項については、後置修飾を1つの重点ポイントとして意識的に取り上げています。特に中学初期段階では、形容詞としての前置詞句後置修飾トレーニングを多く取り入れます。NEW TREASURE Third Edition Stage2 Lesson9でも前置詞句による後置修飾が取り上げられています。文構造を把握するために、初期の段階では常に意識したい部分です。その後、分詞、不定詞、関係詞を導入する度に、前置詞句の後置修飾を意識するようにします。トレーニングプリントを作り、日本語と英語の語順の違いに慣れ、感覚的に前置詞句を使えるようにします。

 

<トレーニングプリント(例1)>

<トレーニングプリント(例2)>

 

次のステップとしては、主部と述部の掌握を意識します。特に主部を抽出するには、主語となる名詞を修飾する語句、多くは後置修飾語句が把握できると自動的に述語動詞にたどり着きます。また、スラッシュリーディングにも役立ちます。ここまで来れば、時制や相を扱いやすくなります。もちろん、この通りの順番にきっちりと授業を進めるのではなく、全てがスパイラルで進んでいきますから、ことあるごとに振り返り、プリントで復習したりして既習事項を結び付けます。

<例)Lesson 1 プリント>

 

③文章構成から意見発信へ広げる

ここが最重要!つまり、内容について考えて、意見を発信するという、言葉を自発的に活用することで英語を自分のツールとしていくのです。ただ、ここまではなかなか行きつきません。ですから、まずは日本語で議論し、考え方が整理できた上で英語にしていくのがよいのかな、と考えています。もちろん、最初から英語で議論できる生徒さんが多ければ、all Englishで行きましょう。

ここで再び登場するのが、①にも述べたパラグラフ構造。パラグラフのフォーマットに従って、意見を表現します。ところがこれが結構大変です。とにかくトピックセンテンスが書けない。自分の意見がまとめられない。意見をサポートできない。意見と事実が区別できない。論理展開が稚拙だ・・・などなど。形は何とかパラグラフっぽくなるのですが、中身がひどいことになる。ご経験のある先生と、この苦労はシェアしたいですね。とにかく、地道に何度も繰り返し、時間をかけてトレーニングするしかありません。同時に、自分のトレーニングにもなりますし。

<Write an essay in English プリント>

 

こうした意見表明の練習と同時に、他者と意見交換するトレーニングも必要です。ややもすると、予定調和的なものになりがちです。「良かった、すごかった、楽しかった、ためになった。。。」といった感想を述べて、とりあえずチャンチャン、って終了。そこで、話すコンテンツに注意を向けるのではなく、議論の仕方に注意を向けるトレーニングも有効だと考えています。例えば、NEW TREASURE Stage4のSharing your opinionを使ってみました。どのLessonでもOKです。このQuestionを使って、Spider Web Discussionというやり方を実施し、議論を深めるための環境をつくっています。

<Spider Web Discussion プリント>

 

 

終わりに

色々と列挙しましたが、うまく伝わったでしょうか。今回は読み書きについてが中心でしたが、発音やリスニングについては触れらなかったのはちょっと残念。特にNEW TREASUREの監修者である島岡先生の書かれた発音のパートは、とても実利的だと思います。

いずれにしても、何かカッコいいXXメソッドのようなものはありませんし、the bestというものもありません。私としては、子供たちがこれから生きていく中で、英語が自分の武器の一つとして使えるようになって欲しい、これに尽きます。ですから、様々なbetterだと思われる手法を取り入れながら、英語を使う、ということに向けて授業を組もうと意識しています。お読みになった皆さん、ご意見やアイディアがあれば、是非お聞かせください。Creativityは組み合わせから生まれます!

 

 

プロフィール

山田 英雄(Yamada Hideo)
かえつ有明中・高等学校国際部長。
公立高校の英語教師を経て、アメリカの大学院にて学ぶ(言語学)。帰国後、かえつ有明中・高等学校にて教鞭をとる。NEW TREASUREの編集委員でもある。

 

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