投稿日時:2022年5月13日
前回は、具体的な授業の流れをご説明しました。今回は主に、授業中に実施している確認テストや評価の基準等を『NEW TREASURE Third Edition Stage1』の具体例を用いてご紹介します。特に、「指導と評価の一体化」を常に意識して指導しています。
レッスンの進度目安 ~Stage1 Lesson7の場合~
その授業で「何ができるようになるのか」を明確にします。
1st period | 現在進行形(be+一般動詞ing~.)の肯定文を理解することができる。 |
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2nd period | 現在進行形の疑問文・否定文を理解することができる。 |
3rd period | 各レッスンの長文を読み、理解することができる。 |
4th period | 疑問詞を含む現在進行形の疑問文を作ることができる。 |
5th period | 現在進行形の文で疑問詞を含む長文読解問題を解くことができる。 また、疑問詞を含む疑問文に対して適当な答え方ができる。 |
6th period | 「進行形にできる動詞」と「進行形にできない動詞」を区別することができる。 |
7th period | 現在進行形を含む文章(7-1~7-3)を読み、内容を理解することができる。 |
8th period | これまで学習した内容を含む「応用問題」を解くことができる。 また、答えに辿り着くプロセスを自分の言葉で説明することができる。 |
9th period | 応用問題に挑戦し、解くことができる。 |
10th period | Lesson 7 Read『Hospital Clowns(約170語)』の文章を導入する。 |
Evaluation criteria of this lesson
以下の観点から、生徒一人ひとりを評価するようにしています。
評価の観点(1)知識・技能
「知識・技能」の観点では、身につけるべきとされている知識やスキルについて、十分に習得しているかが評価の対象となる。1問1答形式で測るような知識だけではなく、既に学習した知識とも結びつけて活用できるような知識も重視する。そのため単なる知識を問う問題に加えて、深い理解を試す文章題を使うなど、応用的な部分も含む。
評価の観点(2)思考・判断・表現
「思考・判断・表現」の観点では、課題や問題に向き合って解決していく能力や、クラスメイトと協力しながら問題解決の糸口を見つけていく力など幅広い能力が評価対象になる。自らの考えを論理的に表現していく能力も評価する。そのため、具体的な評価方法はペーパーテストに限られず、グループでのディスカッションや発表、レポートなど工夫を要する。
評価の観点(3)主体的に学習に取り組む態度
「主体的に学習に取り組む態度」はこれまで本校で設定していた「関心・意欲・態度」の評価観点とは多少異なるものとなる。「関心・意欲・態度」においては、どうしてもノートの取り方や挙手の回数など、児童・生徒の性格による部分や形式的なものによって判断することが多くなっていた。「主体的に学習に取り組む態度」においては、さらに深い部分を見ていくことになる。教科の内容を理解するために、児童・生徒が「いかに学習を調整して、知識を習得するために試行錯誤しているか」という部分を評価していく。見た目の意欲だけにとらわれないという意味では、一人ひとりの児童・生徒をより細やかに見ていくことも求められる。
例)6th periodでの3観点の評価基準
(1)知識・技能 | 現在進行形の意味や働きの理解を基に、各英文の構造を理解する技能を身に付けているかA~Cで評価する。 また、現在進行形を含む文・文章の知識を基に、問題集等に含まれる各設問を解きその結果をA~Cで評価する。 |
(2)思考・判断・表現 | 現在進行形を含む文章について書かれた内容を理解し、答の根拠を明確にする。 その上で、各設問に対する答の根拠を論理的に説明する。これらの過程をA~Cで評価する。 |
(3)主体的に学習に取り組む態度 | 教員の発問に対する受け答え・質問やノートテイキング等知識を習得するための試行錯誤等を観察し、評価する。 また、個人で問題演習などに取り組む態度を評価したり、小集団で問題に取り組む際の議論に対する態度等もA~Cで評価する。 |
*「読むこと・聞くこと・話すこと(やり取り)・話すこと(発表)・聞くこと」の5つの領域の評価基準を上記(1)~(3)の3つの観点でどのように評価するのか検討はできていない。今後の課題とする。
以下の評価基準に基づいて、3つの観点(1)~(3)を授業内(導入、展開1、展開2)で評価する。
(1)知識・技能の評価
導入(確認テスト) | 展開1(学習課題①) | 展開2(学習課題②) | 評価 |
18問~22問 | 評価項目なし | 6問~9問 | A |
9問~17問 | 評価項目なし | 4問・5問 | B |
0問~8問 | 評価項目なし | 0問~3問 | C |
(2)思考・判断・表現の評価
導入(確認テスト) | 展開1(学習課題①) | 展開2(学習課題②) | 評価 |
評価項目なし | 7問以上正解し、答の根拠を考え、正誤を判断し、相手に論理的に伝えることができる。 | 6問以上正解し、答の根拠を考え、正誤を判断し、相手に論理的に伝えることができる。 | A |
評価項目なし | 4問以上正解し、答の根拠を考え、ある程度自ら正誤を判断し、相手に伝えることができる。 | 4問以上正解し、答の根拠を考え、ある程度自ら正誤を判断し、相手に伝えることができる。 | B |
評価項目なし | 「B」を満たしていない。 | 「B」を満たしていない。 | C |
(3)主体的に学習に取り組む態度の評価
導入(確認テスト) | 展開1(学習課題①) | 展開2(学習課題②) | 評価 |
授業開始3~5分前から、着席をして確認テストの為に各自で勉強していた。または、友達と問題を出し合っていた。 | 現在進行形の文構造と疑問文・否定文に書き換える際の規則を理解する為のノート取りの工夫を十分していた。 | 評価項目なし | A |
チャイム着席を守り、授業の準備をしていた。2分程度、確認テストのための勉強をしていた。 | 現在進行形の文構造と疑問文・否定文に書き換える際の規則を理解する為のノート取りの工夫をしていた。 | 評価項目なし | B |
「B」を満たしていない。 | 「B」を満たしていない。 | 評価項目なし | C |
Aim of this lesson
After this lesson, the students should be able to:
導入(確認テスト)
distinguish the verbs into 「進行形にできる動詞」and「進行形にできない動詞」
「進行形にできる動詞」と「進行形にできない動詞」の区別をすることができる。
〈導入:確認テスト1〉
〈導入:確認テスト2〉
展開1(学習課題①)
appreciate how to make interrogatory and negative sentences from declarative sentences constructed by the present progressive form
現在進行形の肯定文を否定文、疑問文に書き換えることができる。また、その規則性を自分でまとめ、発表することができる。
〈展開1:学習課題①-1〉
〈展開1:学習課題①-2〉
〈展開1:疑問文の規則性〉
〈展開1:否定文の規則性〉
展開2(学習課題②)
develop their reading skills
現在進行形を含む読解問題(※)を解き、答の根拠まで明確にして他者に説明することができる。
※使用教材「英語 読解A 『19対話 テニスをしよう』」(教育開発出版株式会社)は、著作権の関係上、問題文等は掲載しておりません。
〈展開2:学習課題②-1〉
〈展開2:学習課題②-2〉
例)6th period での授業展開
▼授業展開表(クリックするとPDF(約190KB)が開きます)
定期テストのねらいと具体例
指導と評価の一体化を目指すため、定期テストは授業で習った内容の定着度合いを確認するために作成しています。授業で扱った文法事項を中心にテキストの本文、ワークブック、文法問題集から均等に出題し、中学1年次は主にライティングとリーディングに焦点を置いています。具体的には以下の定期テスト例(一部分)をご覧ください。また、2022年(中学2年次)5月からは学習した文法事項のスピーキングを「NEW TREASURE Online Speaking」で実施し評価していきます。
終わりに/今後の課題
前回のコラムと今回のコラムにおいて、『NEW TREASURE Third Edition Stage1』を用いた「授業の構成」と「指導と評価の一体化」について掲載しました。授業時に設定する各単元の達成目標を通じて、いかに英語4技能5領域を伸ばし、3観点の基準を踏まえてどう評価するか私見を述べさせていただきました。私たち教員にとって最も大切なものは授業であると思います。日々の授業の積み重ねが、子どもたちの英語習得においては必要不可欠です。各単元のねらいから中高6年間を見据えた指導法、そして各評価基準等を今後も模索し続け、一人でも多くの生徒をSuccessful English Language Learnersへ導いていきたいと考えております。
また、今後の課題は、『NEW TREASURE』を用いてどのように「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現するかであると考えています。「個別最適な学び」の根源は、生徒を誰一人取り残すことなく、一人ひとりをしっかりと見つめながら個を伸ばす指導、つまり、「個に応じた指導」にあります。GIGAスクール構想の実現により、一人一台のタブレット端末等が普及し、ICTが学びの有力なツールとなりました。これを機に到達度(習熟度)やつまずきをAIが分析し、個人の能力に応じた教材を提供するシステムを構築することが個別最適な学びを実現させる第一歩になるのではないかと考えています。また、教育観のパラダイムシフト以降、授業スタイルは大きく変化しました。PIL(教えあい学習)等を講義型の授業と組み合わせることで、「協働的な学び」の実現可能性は高いのではないかと考えています。これらの環境の変化と『NEW TREASURE』をリンクさせ、より効果的な授業と課題解決に向けて日々模索しております。
引き続き、これからも皆様と一緒に、日本の英語教育の発展に貢献できたらと思います。
プロフィール
栗原 隆恵(Kurihara Takashige)
西武台新座中学校・西武台高等学校 英語科教諭。
高校時代に米国オレゴン州Salem Academy Christian High shoolへ長期留学をし、帰国後には獨協大学外国語学部英語学科へ入学し言語学を学ぶ。
卒業後は同大学院外国語学研究科英語学専攻(応用言語学)で修士号を取得。全国英語教育学会、関東甲信越英語教育学会等に所属し、学会での発表も行った。
2015年には世界最高峰の英国オックスフォード大学教育学部(Hertford College)へ留学し、EMIコースを修了した。
西武台新座中学校・西武台高等学校ではこれまでに中学入試・広報部主任を経験し、2021年より中学校第1学年の学年主任を務めている。
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