【コラム】授業の脱・属人化 ~実践編~

投稿日時:2023年1月27日

 

こんにちは。追手門学院中・高等学校の髙田です。
さて、前回の記事は読んでいただけたでしょうか。

『NEW TREASURE』コラム「授業の脱・属人化 ~NEW TREASUREで、だれもが自分らしい授業を~」
 記事はこちら

前回の記事をまとめると、
—————
・授業準備はがんばりすぎないようにしよう
・デジタル教科書など、頼れるものは頼ろう
・できた「余力」で、創造的なことをしよう
—————
……こうやって見るとなんだか、ぐうたら人間みたいですね。
いいじゃないですか、ぐうたら人間でも。

今回はぐうたら人間・実践編です。

 

 

三つの軸

それでは、次の三つの軸を用いて、オーソドックスなNEW TREASURE(以下、NT)の使い方を確認していきましょう。
一瞥して「なんだ、こんなの誰でもできるじゃん」と思うかもしれませんが、もしそうなれば、それはまんまと私の掌で踊らされているだけだ、ということをここで予言しておきます。
はっはっは。

以下、通し番号をふってはありますが、実践の際はどんな順番でもいいかと思います。大切なのは、みなさんの創造性をどこで活かすかです。

 

① 新出単語

既にテキストのサイドやフッターに掲載されてはいますが、私は簡単なリストにまとめています(プリント1)。

[プリント1] 新出単語リスト(例:Third Edition Stage2 L3)
※画像をクリックするとPDFが開きます。

これを用いて発音練習するもよし、ペア・ワークをするもよし。また、ICTを活用できる学校ではQuizletやKahootなどのアプリを用いるのもよいでしょう。
ちなみに所感としては、ここで語義・語源などにちらっと触れると、次にスムーズに移行できる気がします。細かい発音も、きっちり指導できるとしたらこのタイミングじゃないでしょうか。

 

② Key Point

Sceneを読む前に、今回の文法事項について学習します。常に母語との対比に気を配ってほしいので、簡単なプリントにまとめています(プリント2)。

[プリント2] 文法事項(例:Third Edition Stage2 L3)
※画像をクリックするとPDFが開きます。

いい感じに余白も作っているので、その場で思いついたことや、ほかの生徒がぽろっと発したことなどを書き留めてもらうのもいいですね。
あとは、いかにこちらから「説明」する時間を減らせるかの勝負。

※Student-centeredな授業の在り方に関しては、本校・若葉先生のコラムに詳しく掲載されているのでご参照ください。
『NEW TREASURE』コラム「NEW TREASURE × CELTAフレームワークで新任教員でも授業準備はバッチリ!」
記事はこちら

 

一例を紹介します。Third Edition Stage1 Lesson 12-2のKey Pointで比較級・最上級を取り上げた時に、次のような表が出てきました。

Third Edition Stage1 P.163 L12-2 Key Point 1

“-ful, -ousなどで終わる語”の例として“useful” “famous”が載っていたので、「他どんなのあったっけ?」と生徒にも聞いてみました。
すると“beautiful!” “careful!” “dangerous!” “delicious!”と、次から次へと。
こちらが事前にそういったマテリアルを準備せずとも、その場でみんなの学びは生まれてくるものです。それを見逃さない「余裕」をいかに捻出するかの勝負。

 

③ Scene

常に母語との対比に気を配ってほしいので(しつこい)、ここでもサイト・トランスレーションのようなものを作っています(プリント3)。

Third Edition Stage2 P.40 L3-1

[プリント3] Sceneの内容理解(例:Third Edition Stage2 L3)
※画像をクリックするとPDFが開きます。

前任校の先生が使っておられて、いいな、と思ったものを改編しました。Third Edition 採用校サイト「NEW TREASURE SQUARE」の「自作教材ダウンロード」からご覧いただけます 。

Third Edition 採用校サイト「NEW TREASURE SQUARE」
サイトはこちら

本文自体の難易度がそれほど高くないので、読解(input)というよりは音読(intake)に使っています。
最低限の文法事項を確認→話の流れ・文化的な背景を説明→音読練習、という流れです。
① ②でやったことを実践する場、という位置づけとなっています。
音読のやり方はそれこそいろいろ考えられると思うので、よきようにお試しください。ちなみに、ペアで読むとけっこう盛り上がりますし、自分が意外と読めていないという点にも気がつきやすいです。

 

1レッスンあたり上記プリント3つで、だいたい作成時間20分ぐらい。週に数回なら楽しめる範囲の苦労ですね。やり方次第では、もしかしたらこのプリントすらいらないかもしれません。
もちろん、Use&CheckやRead、ActionやWord Squareなど、いくらでも工夫ができるかと思います。こればっかりは時間との勝負(勝負ばっかり)。

なによりも、それぞれの内容が無味乾燥すぎず、かといって盛り込まれすぎでもない。
前回も書きましたが、NTはこういうところがちょうどいいんですよね。
靜哲人先生は「題材内容の面白さに頼らず、自分でデザインする活動内容で生徒を惹きつけよ。(中略)自分の授業のつまらなさを教科書や題材のせいにするな。」1 とおっしゃっていました。肝に銘じている言葉のひとつです。

 

 

おわりに:NTに期待すること

「なんだ、こんなの誰でもできるじゃん」
「俺だったらもっといい方法知ってるよ」
そう思ったそこのあなた。おめでとうございます、この記事の目的は果たされました!
ぜひ、みなさんの日々の授業で、その創造性を発揮していってください。それがきっと、生徒たちの幸せにつながると思います。

「脱・属人性」と「創造性」というのは相性が悪いようにも聞こえますが、余分な「属人的」作業を取り除くことで、各教師の創造的な面が発揮できる、そんな土壌が耕されるのではないかと感じます。

余分なスライドやプリントの準備をなくし、最低限の教材、あとは身体ひとつで授業をする。
逆説的に、その方が教師に余裕が生まれ、生徒のことをよく見ることができる。
結果として「その人らしい」「その場の必然性がある」そんな創造的な授業になると思うのですが、いかがでしょうか。
NTは大いにその助けになると、この短い教員生活ながら思います。

みなさま、がんばらずにがんばっていきましょう。

 


《引用元》
1 靜 哲人『英語授業の心・技・体』(研究社、2009)PP.202

 

 

プロフィール

髙田 悠(Yu Takata)

追手門学院中・高等学校英語科、軽音楽部顧問。鳥取県出身。
大阪大学外国語学部朝鮮語専攻卒業、大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了。
ブリティッシュ・カウンシルのインターン、京都の私立校教諭、ウェブライターなどを経て、2022年より現職。複言語主義者。

 

 

見本請求・お問い合わせ

検討用見本のご依頼・

教材の内容に関するお問い合わせ


『NEW TREASURE』採用校サイトに

関するお問い合わせ