Column 19年07月 「Society 5.0時代」と、求められる能力

「Society 5.0時代」と、求められる能力
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm令和元年6月25日付けで文部科学省が「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」を公表しました。
「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」の実現という目標を掲げており、その達成のために、ICTを基盤とした先端技術や教育ビッグデータを効果的に活用することが求められています。 この文部科学省の最終まとめでは、新時代の社会的側面として「Society 5.0時代」が到来するとされており、「Society 5.0時代」には、これまでと異なる能力が求められるとされていますが、この「Society 5.0時代」とは、どのような時代なのでしょうか。また、「Society 5.0時代」には、どのような能力が求められるのでしょうか。

「Society 5.0時代」とは?
「Society 5.0」は日本発の概念です。内閣総理大臣の諮問機関である「総合科学技術・イノベーション会議」の答申を受けて閣議決定された第5期科学技術基本計画で提唱されました。

◆Society 5.0
(政府広報)https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/
(内閣府)https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

内閣府のページでは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と説明されています。 これまでの社会では、例えば工業化が進むにつれて環境破壊が進行するなど、経済の発展に伴う社会的課題の増大が避けられませんでした。この問題を、ICTからのアプローチで解決しようというのが、「Society 5.0」の考え方です。このように、トレードオフ(一方を解決するためには、もう一方の解決をあきらめなければならなくなるような関係)にあるものを同時に解決するためには、これまでにない新しい能力が求められることになります。

「Society 5.0時代」に求められる能力
文部科学省の最終まとめでは、「Society 5.0時代」には以下の能力が求められるとされています。
・飛躍的な知の発見・創造など新たな社会を牽引する能力
・読解力、計算力や数学的思考力などの基礎的な学力

2つ目の能力は従来の教育の延長と考えることができますが、1つ目の能力は、新たに求められる能力だと考えられます。
「飛躍的な知」を発見・創造する能力とは、無から有を創り出す能力と捉えることができます。言い換えれば、自ら課題を設定して、その課題を解決する能力だと言えます。未来の社会に対しては、起こりうる社会的課題を想定することが困難です。そのため、与えられた課題の解決方法を考える能力だけではなく、まだ表面化していない課題を想定し、それを解決する力が求められるということです。
これは、プログラミングを行う上で求められる、答えのない問いに対して自分なりの答えを導き出す力や、抽象的な問題を具体化することによって解決する力と同種の能力です。文部科学省がプログラミング教育の充実を掲げているのはこのためです。プログラミング教育を通じて、身の回りのさまざまな事柄に対して、「なぜこうなっているのか」「問題になっていることはないか」「どうすれば問題が解決するか」という意識を持つことや、抽象的な事柄を具体的な形に落とし込んで考えることが、未知の課題への対応力を高めることにつながると言えるでしょう。