Column 19年08月 ネット上に「匿名」はない - ネットとの向き合い方を考える

発信者情報の開示命令 ネット小説で名誉毀損訴え
https://www.sankei.com/affairs/news/190725/afr1907250027-n1.html友人らに殺害される設定の小説を投稿されたとして、神奈川県の私立小学校に通う児童が、投稿サイトの運営会社に投稿者の情報を開示するよう求める裁判を起こしました。東京地裁は児童の訴えを認め、投稿者の氏名や住所などを開示するよう命じたとの記事です。

ネット上でのトラブルは枚挙にいとまがありません。匿名で過激な発言をしたり、犯罪行為に加担してしまったりする例もよく見られます。お子様をネット上でのトラブルから守るためには、ひとつにはネットから遠ざけるという手段がありますが、正しい知識をもたせて自衛させることも大事な観点です。正しい知識を持つことは、加害者にならないためにも必要なことです。

「ネット上では匿名でいられる」と考える人は少なくありません。確かに、ネット上で何かを発信する場の多くで「ハンドルネーム」を使うことができます。ネット上の人物と実在の人物を結びつけるものは何もなく、本人が否定すれば結びつけることなどできないという感覚は、決して特別なものではないのでしょう。しかし、世の中はそれほど甘くありません。

「実名投稿」裁判で開示命令…被害者と母親が語る“ネットいじめ”の苦悩
https://www.fnn.jp/posts/00400560HDK

2018年12月のニュースです。「ネットいじめ」の被害者が、加害者の情報を開示するよう裁判で求め、認められたとの記事です。

ツイッターでの中傷投稿への法的対応事例-ネット中傷対策
http://warbler.hatenablog.com/entry/2019/07/25/195908

ネット上で誹謗中傷されたサイエンスライターが、匿名の加害者を訴えた裁判の記録です。加害者の身元が特定され、匿名であったとしても責任は免れないと270万円の損害賠償命令が出ています。

堀ちえみブログに「死ね 消えろ 馬鹿みたい」と悪質コメント、主婦を書類送検
https://blogos.com/article/391819/

タレントの堀ちえみさんのブログに誹謗中傷のコメントを書いた50代の主婦が書類送検されたが、「これが脅迫になるのか」と反省の色がないとの記事です。

ほか、「漫画村」の元運営者が身元を特定され、フィリピンで逮捕されたというニュースを記憶している方もいらっしゃることでしょう。このように、ネット上で匿名の活動をしていたとしても、しかるべき機関が捜査すれば、多くの場合は身元を特定されてしまうのです。

身元を特定された人の多くが「自分のしたことが本当に悪いことなのか」「みんなやっている」「なぜ私だけ」という言葉を口にします。しかし少し考えてみれば、面と向かって同じことをされたら問題だとわかるはずです。なぜネット上では許されると感じてしまうのか。さまざまな見方はあるでしょうが、一つには、「ネット上では匿名でいられる」という感覚があるからでしょう。
お子様が加害者にならないためにも、考えたくはありませんが万が一被害者になってしまったときのためにも、このようなニュースを題材に「ネット上に本当の匿名はない」ことを話し合ってみるのはいかがでしょうか。