Column 20年1月 PISAとプログラミング的思考

PISAとプログラミング的思考

2019年12月3日に、経済協力開発機構(OECD)が3年に一度実施する、国際的な学習到達度調査「PISA」の、2018年の調査結果(PISA2018)が発表されました。

 OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント(文部科学省・国立教育政策研究所)
 https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf

 PISA2018、読解力は過去最低15位に下落(リセマム)
 https://resemom.jp/article/2019/12/04/53677.html

 PISA調査 日本の15歳、読解力15位 3年前より大幅ダウン 科学・数学的応用力はトップレベル維持(産経新聞社)
 https://www.sankei.com/life/news/191203/lif1912030033-n1.html

参加国の中で日本は「読解力」15位、「数学的リテラシー」6位、「科学的リテラシー」5位となりましたが、特に「読解力」の低下について指摘している記事が目立ちます。

コンピュータ使用型調査(CBT)

PISAの調査は、2015年からコンピュータ使用型調査(CBT)に移行しています。2018年の読解力調査では、全小問のうち約7割が、CBT用に開発された新規問題でした。

CBTでは、

・長文の課題文をスクロールして読む
・キーボードで解答を入力する(ローマ字入力)
・課題文が複数の画面で表示される(リンクのクリックやタブの切替で移動)

という操作が必要なため、ICT機器の習熟度が調査結果に反映されるという面があります。

◆PISA2018調査問題例(読解力)

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/04_example.pdf

同時に行われたICT活用調査では、他国と比較して、ネット上でのチャットやゲームを利用する頻度の高い生徒が多いにもかかわらず、コンピュータを使って宿題をする頻度がOECD加盟国の中で最も少なく、ICT機器を使った長文の読み書きに慣れていないことが今回の結果につながったといえそうです。

PISA型読解力

PISA2018において「読解力」は、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組む」能力と定義されており、

 ①情報を探し出す能力
 ②理解する能力
 ③評価し、熟考する能力

の3つに分けて測定されています。これらの能力は、教科としての「国語」の範疇とは言い切れない部分を含んでいます。例えば、「情報を探し出す能力」は、テキストに含まれる情報から、目標達成のために必要な情報を取捨選択する能力です。また、「理解する能力」は、テキストを論理的に解釈する能力、「評価し、熟考する能力」は、テキストを客観的に判断し、考察を加える能力です。これらは、言語活動に基づいてはいますが、「国語」で学習する小説の鑑賞や作者の心情理解などとは異なり、むしろ科学的なアプローチであるといえます。

小学校でのプログラミング教育が必修とされる新学習指導要領では、情報活用能力を育成することが目的とされています。プログラミング教育はその一環ですし、PISA型読解力である「テキストを利用し、理解し、評価し、熟考し、これに取り組む」能力もまさに、情報活用能力の一部となるものです。プログラミング教育が、PISA型読解力を高めることにつながるものと期待されているのだと言えるでしょう。

コンピューテーショナル・シンキング

2021年に実施するPISAの「数学的リテラシー」のカテゴリーには、「コンピューテーショナル・シンキング」を測る問題が追加されます。

https://edtechzine.jp/article/detail/2792

コンピューテーショナル・シンキングとは、「論理的思考力」「問題解決能力」などといった、総合的な能力のことです。日本では「プログラミング的思考」という言葉がよく使われますが、コンピューテーショナル・シンキングは、プログラミングだけではなく、ITリテラシーやICT機器に関する知識などを含めた、コンピュータを利用するすべての分野において必要な能力を指します。

OECDがPISAで測ろうとしている能力は、これからの社会で必要になると考えられている能力です。ご家庭で将来の夢などを話し合われる際に、これらの能力について考える機会を持たれてはいかがでしょうか。