Column 20年10月 あのアイドルが名前を呼んでくれる!?

「あのアイドルが自分の名前を呼んでくれたら……!」
誰もが一度は考えるであろうこんな夢を叶えてくれるサイトが登場しました。

嵐の歌声をAIが再現 「A・RA・SHI」の替え歌ジェネレーター登場 「違和感ない」とファン驚き

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2009/14/news110.html

国民的アイドルともいえる「嵐」のデビューシングル曲である『A・RA・SHI』のメロディーに載せて、利用者が入力した「夢」と、利用者の名前を歌い上げてくれるというサービスの紹介記事です。ぜひ一度、試してみてください。驚くほど自然に、嵐のメンバーが「夢」と名前を歌い上げてくれます。上記サイトでも触れられていますが、このサービスは「嵐と企業が、夢を持つことを応援する」という趣旨のプロジェクトの一環で計画され、多くの有名企業がスポンサーについています。嵐のメンバーも、新たに歌声を収録するなど、全面的に協力しているそうです。

「本物の嵐と区別つかない」と話題 AIが歌う「A・RA・SHI」の裏側 再現度のカギは?

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2010/19/news040.html

このサービスの技術的な裏側について紹介しているのが、上記の記事です。過去の楽曲の音声に加え、新たな音声も収録し、機械学習をさせたと記載があります。「AI」に対し、コンピュータが人間に対して反乱を起こしかねないといった印象を持っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここでも触れられている通り、機械学習で「学習」させることにより統計学的な情報を得ることができます。「もっとも確からしい」結論を導き出しているといえるでしょう。機械学習でこんなこともできるのだというひとつの面白い実例ですね。

「AI美空ひばり」が紅白出場。過去にはhideなども…テクノロジーの力で“蘇った”スターたち

https://www.huffingtonpost.jp/entry/ai-hibari-misora_jp_5e0b1b65e4b0b2520d1ab58e

ところで、「AIと歌声」というと、少し前の2019年の紅白歌合戦で「AI美空ひばり」が話題になりました。美空ひばりの「新曲」が発表されたのです。これに対し、賛否両論が寄せられました。美空ひばりそのもので感動したという声もあれば、これは死者に対する冒涜なのではないかという声もあったのです。

上記の記事にもあるように、今は亡きスターを3Dホログラムなどのデジタル技術で蘇らせる、ということはこれまでにも行われてきました。やはり賛否両論があったのですが、そのような声はなぜ出てくるのでしょうか。――思うに、本人が関わり得るかどうか、という点にあるのでしょう。亡くなったミュージシャンの未発表音源を公開することに対し、「本人が望まなかったから世に出なかったのだ」という批判はあれども、「死者に対する冒涜」という声はそれほど聞きません。未発表作品はあくまでもそのミュージシャンが歌ったものであり、だれか別の人や、場合によっては機械が、本人を語って歌ったものではないからでしょう。

こうしたAIの技術が進むことにより、記事にもある「ディープフェイク」の問題も無視できなくなります。AI技術を用いて画像や音声を補完することにより、本人が言ってもいないことを、あたかも本人が言っているかのような動画を作ることもできてしまうのです。例えば、アメリカのオバマ前大統領がトランプ大統領を罵ったとされる「フェイク動画」は、その一例です。

AIで進化する「フェイク動画」と、それに対抗するAIの闘いが始まった(動画あり)

https://wired.jp/2018/09/14/deepfake-fake-videos-ai/

技術の進歩により、これまでにはなかった心配事が出てきています。技術を学ぶだけではなく、技術を用いるためには、倫理観も必要なのです。モラルや倫理観の教育も、「プログラミング教育」には欠かせないものとなっていくことでしょう。