Column 20年11月 ○×△□

今日の天気は? → ×晴れ 雨
このように書いてあれば、多くの方は、「今日の天気は雨」だと読み取るのではないでしょうか。しかし、そうでないこともあるようです。

PS5では「×ボタンで決定」が標準に ユーザー側での変更も不可能と判明 

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2010/05/news126.html

各地で品切れが起きている「プレイステーション5」では、「×ボタンで決定、○ボタンでキャンセル」という仕様になったとのニュースです。先程の「今日の天気は雨」という感覚からすれば、なぜそのようなことを……と悩んでしまいます。

ところが、記事を読み進めていくと「欧米式」という説明があります。欧米では「○」に正解の意味はなく、「×」やチェック印に「確認した」の意味があるため、その感覚に従えばPS5での決定は妥当なもの、と言えるでしょう。

PS5のボタンはなぜ「×で決定」に変わったのか

https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/nishida/1289191.html

こうした「背景」を説明した記事も見つけました。複数のゲーム機を使う人にはもしかしたら常識なのかもしれませんが、ゲーム機ごとにコントローラーのキー配置が若干異なるということも、問題の背景にはあるようです。そして、記事には次のような指摘があります。

PlayStationの「○」「×」「△」「□」は、文字が分からなくても認識できて、誰もがPlayStationブランドを思い出す優れたデザインだが、一方で寓意性が高いため、その意味するところが文化によって違ってしまった。

コロナ禍で往来は減ったとはいえ、自動翻訳の技術進歩などもあり、海外のものに触れる機会はこれまで以上に増えているといってもよいでしょう。そんな中、改めて「文化の違い」について考えさせられるニュースでした。

なんじゃこりゃあああ! 「日本人にだけ読めないフォント」が話題に

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1510/18/news020.html

PS5の「×ボタンで決定」の記事を読みながらふと思い出したのが、5年ほど前に話題となった上記記事です。「カタカナっぽいアルファベット」のフォントの紹介で、例えば「A」は「ム」、「D」は「ワ」といった具合に、アルファベットの各文字がカタカナのように置きかえられているため、日本人はなかなかこのフォントで書かれた文章が読めない、というものです。この発想は、「⊇ωレニちレ£」と書いて「こんにちは」と読ませる「ギャル文字」と同じですね。

このフォントの例は「文化」とは若干異なるでしょうが、「ある特定の文化圏の人には理解されない(しにくい)」という点では共通しています。世界中を見渡せばこのような例は決して少なくないことでしょう。

ロシアでは羽田空港と成田空港を間違える日本人が多いらしい「これは初見殺し」「キリル文字馴染みなかったら間違える」

https://togetter.com/li/1608136

ロシアなどで使われるキリル文字ではNaritaをНаритаと表記するため、Hに引きずられて「成田」と「羽田」を間違えてしまう、というネタです(この表記を目にするのは空港でのチェックインを済ませたあとですので、日本人にとっては帰国時です。それまでに行き先を確認した上でその場にいるのですから、大きな問題にはなりにくいでしょう)。これも「ある特定の文化圏の人には理解されにくい」例といえます。

世界の均質化が進んでいると思われている現在であっても、「文化」による感覚の違いは決して小さくないようです。このような時代だからこそ、まずは自身の文化を知った上でさまざまな文化のことを知り、違いについて考えてみることが欠かせません。PS5の例からもいえるように、例えばプログラミングを活用して「世界で羽ばたく」ためには必要なことなのですから。