大学進学志望の高校生は平日・休日何時間学習しているか。学習時間にみる、入学前教育の効果的な設計とは

多様化する大学入試と、求められる入学前教育

2020年の大学入学者選抜改革以降、総合型選抜・学校推薦型選抜を活用しての大学進学者割合は年々高まっています。
この大学入学者選抜改革では、「学力の3要素」の多面的・総合的評価の実現をめざし、大学入学共通テストが導入され、個別入学者選抜の改革として、入試様式も一般選抜・総合型選抜(旧AO入試)・学校推薦型選抜(旧推薦入試)に変化しました。
AO入試や推薦入試が、総合型選抜や学校推薦型選抜に変化した背景には、「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」をより問う内容にし、入学後の大学教育に円滑につなげられるようにする、というものがありました。

この入試改革とともに、大学での学びにスムーズに対応できるようにするために、促進されるようになったのが「大学入学前教育」です。

Q.入学前教育の充実を図るために、どのような方策がとられるのでしょうか。

A.早期に合格が決定した後の学習意欲を継続する観点から、以下のような内容を促進することとしています。

  1. 特に12月以前の入学手続き者に対しては、入学前教育を「積極的に講ずる」こと。
  2. 各高等学校においても、大学と連携し学習意欲を維持するための必要な指導を行うよう努めること。
  3. 学校推薦型選抜の場合、合格決定後も、高等学校の指導の下に、高大連携した取組を行うことが望ましい。
    (例:入学予定者に対して大学入学までの学習計画を立てさせ、その取組状況等を高等学校を通じ大学に報告させる等。)

文部科学省「高大接続改革」に係る質問と回答(FAQ)より

このFAQより、大学に合格した高校生が、学習意欲を維持し、学習に取り組み続けられるようにすることは、大学入学前教育の大きな目的の1つであることがわかります。
では、大学に進学を志望する高校生は、高校時代に日々どれくらい学習に取り組んでいるのでしょうか。

高校生の学習時間

Z会では、「生活学習調査」として、高校生の学習時間やスマートフォンの利用時間について、調査を行っています。
本記事では、2024年の調査結果をご紹介します。

▼高校生の平日の学習時間

大学入試を控えた高校3年生は、全体の約60%以上が平日に2時間以上学習に取り組んでいることがわかりました。
逆に、大学入試までまだ期間のある高校1、2年生は、2時間未満が多数派となりました。
学習時間には、宿題に取り組む時間も含まれているため、課せられたものにのみ取り組んでいる生徒もいるでしょう。
総合型選抜や学校推薦型選抜で大学に進学する高校生は、それらの選抜方式が受験資格として評定平均が求められることもあり、学校の宿題・課題に高校1年生から十分に取り組んでいると考えられます。

高校2年生は、学習時間の短い人と長い人の二極化傾向が見られました。
高校生活に慣れ、同時に大学入試までまだ時間的余裕のある時期であり、その時期においても目標を上手に設定し、学習意欲を維持できる人と、そうでない人が分かれていることが見受けられます。

▼高校生の休日の学習時間

休日の学習時間についても見ていきましょう。
高校3年生は、5時間以上学習する生徒が約40%と多数派となりました。
高校2年生までの学習時間に対し、高校3年生の学習時間がかなり伸びていることがわかります。
大学入試まで1年を切っていることに加え、部活動・課外活動を引退し、休日に学習時間を設けやすくなっていることも要因として考えられます。

高校2年生までの学習習慣の有無が影響を与えることはもちろんですが、「目標達成のための時間」は新たな目標が設定されたときに、再分配されることが推測されます。
部活動や課外活動において、目標を設定しながら取り組む高校生は多く、その達成に使っていた時間は、引退後は次なる目標、つまり大学入試に向けての学習時間にあてられていると考えられます。

目標設定が与える学習時間への影響

「目標を設定し、その達成に向けて取り組む習慣」はとても大切です。
一方で、「燃え尽き症候群」という言葉が一般に知られているように、大きな目標を達成した後、次なる目標を見失ってしまうことは、珍しいことではありません。
「部活動・課外活動」や「大学入試」は目標としては大目標となりやすいですが、一方で、同水準の目標を、自ら考えすぐに設定することはとても難しいことです。
大学入学前教育においては、小さな目標、次のステップにつながる目標を、周囲がサポートしながら設定することも、効果的でしょう。

高校生のスマートフォンの利用時間

▼高校生の平日のスマートフォンの利用時間

こちらは、高校生の平日のスマートフォンの利用時間の調査結果です。
高校2年生の利用時間が他の2学年と比較すると長い傾向にあり、「高校生活への慣れ」と「目標までの猶予」があることが影響していることが考えられます。

高校生は、スマートフォンの利用時間をどのようにねん出しているのでしょうか。
スマートフォンを利用することによって、どの時間が減ったかの質問に対し、以下の回答が得られました。

1位
テレビの視聴時間
47.9%
2位
学習時間
45.2%
3位
睡眠時間
38.6%

(複数回答可)

ストレスを発散することは大切なことです。
そのため、余暇時間の使い方として、スマートフォンを選択することは悪いことではありません。
一方で、学習時間や睡眠時間を削ってしまう高校生もかなりの割合でいることがわかりました。

この傾向を踏まえると、大学合格後、新たな目標がない状態になると、スマートフォン利用も含め、余暇時間が伸びることが想像できます。

大学入学前教育で大切なのは、次の目標への導線を作ること

総合型選抜・学校推薦型選抜などで早期に合格が決まったあと、時間を有効活用しながらこれまでできていなかったことにチャレンジし、残りの高校生活を充実したものにすることができると理想的です。
一方で、大学合格は大きな目標になりやすいため、新たな目標をすぐに設定し、主体的に取り組むことは容易ではありません。学習時間についても、入試という目標をクリアした状態で、受験期水準の学習時間を維持することは困難です。大きな仕事のあとに、休暇を入れる社会人も珍しくなく、これはごく自然なことでしょう。

とはいえ、大学入学後の学習を念頭に置くと、高校1、2年生水準の学習時間を維持することは必要です。
大学での学びにスムーズに対応できるようにすることが、大学入学前教育の目的であることを踏まえると、学習習慣そのものを途切れさせないことも求められます。
つまり、単純に課題を与えるだけでは、数日集中的に取り組んで終わらせることもでき、学習習慣の維持につながらないことも起こりえます。
学習時間・習慣を維持し、大学教育に円滑につなげることを踏まえると、短期で取り組める目標を設定しつつ、その目標達成に有効な教材を提供することが重要だと考えられます。

学習時間の変化の傾向からも見て取れるように、「目標達成に向けて、努力した経験のある高校生」が多数います。目標を見失いがちな時期であるからこそ、課題を課すのではなく、小さな目標を示すことが効果的でしょう。

本記事の情報が、入学前教育の設計のお役に立てますと幸いです。

 

Z会では、TOEIC®L&R TESTを目標に設定しつつ、その対策講座としてAdaptieという英語教材を入学前教育の教材として提供しています。
短期的な目標として設定しやすいだけでなく、留学や就職活動において、そのスコアが活用できることから、入学後にも取り組み続けやすく、学習の習慣化に効果的です。
ぜひ、入学前教育の教材として、Adaptieをご活用ください。

講座・お役立ち資料のご紹介

企業・大学向け英語研修 TOEIC®対策講座 ADAPTIE 英語講座 Asteria for Business お役立ち資料 

▼生活学習調査 調査概要
Z会生活学習調査(調査実施機関:株式会社Z会)
調査目的:スマホの利用状況・利用時間の把握や、校外(学校以外)学習、家庭学習の状況の把握
調査期間:2024年6月~7月
調査対象:中学生・高校生
調査方法:Web上のアンケートフォームで集計
上記手法で調査を実施したうえで、本集計においては大学進学志望者に限定。
有効回答数
2024年度高校1年生~3年生:1,887件

本記事内容、調査結果を許可なく転載、複製することを禁じます。
調査に関するお問い合わせはこちらよりお送りください。

お問い合わせ

お問い合わせ

【Z会キャリアアップコースカスタマーセンター】

 

インターネット接続環境、動画再生に関するご質問等

【Z会テクニカルサポートセンター】

0120-636-322

月〜土 午前10:00〜午後8:00
(年末年始を除く、祝日も受付)