出題校
千葉県の中高一貫校では、千葉県の共通問題を使用して、適性検査が実施されます。
各学校の問題は、次の表の通りです。
(共通=千葉県共通問題、独自=学校独自の問題)
1-1 |
1-2 |
2-1 |
2-2 |
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千葉県立千葉中学校 | ||||
千葉県立東葛飾中学校 |
1-1 |
1-2 |
2-1 |
2-2 |
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千葉県立千葉中学校 | ||||
千葉県立東葛飾中学校 |
※1-1・1-2が「一次検査」、2-1・2-2が「二次検査」となります。
全体的な傾向
問題の構成や傾向について、前年度からの大きな変化はありませんでした。
・適性検査2-1
2問構成で、大問1は雨にぬれる量を考える問題、大問2は不思議な図形について考える問題が出題されました。
・適性検査2-2
3問構成で、会話文の聞き取りと文章の読み取り、作文が出題されました。
一次検査と同様、試験時間に対して問題量が多いため、時間内に内容を十分に理解したうえで解答するのは難しいかもしれません。
しかし、大問全体の意味が十分につかめなくても誘導に乗れば解答できる小問がふくまれていることが多いので、それを見つけ出し、得点できるように対策を講じる必要があります。
問題ごとの分析
適性検査 2-1(45分)
共通問題(理科分野)
〇テーマ
雨にぬれる量
〇内容
雨の日に傘をささずに走るときと歩くときのぬれる量について考える。
また、雨にぬれないような傘のさし方を考える。
◆概要
この問題では、順を追って、人が雨にぬれる量を考えていきます。
(1)人の前側が雨にぬれる量についてのみ考える
(2)さらに人の上側(頭)が雨にぬれる量についても考える
(3)さらに風がふくことによる影響も考える
(1)
雨が下へ降り、人が前へ移動するとき、人の前側がぬれる量を考える問題です。
図で示されている雨はスタートしたときのものなので、ゴールしたときにあたる雨は、ゴールの地面ではなく空中にある雨になります。
それゆえ、人が走ったり歩いたりしたときにぬれる雨の量は、平行四辺形で囲まれた面積になることがポイントです。
(2)
(1)の条件に加えて、人の上側がぬれる量を考える問題です。
一見すると(1)よりもさらに複雑なことが書いてあるように見えますが、誘導に乗って
きょり「き」=速さ「は」×時間「じ」
の関係を用いて記号を使った式を変形すると解答を導くことができます。
記号が多いと抽象的になり題意をつかみにくくなりますが、それぞれの式が何を表しているのかを考える習慣をつけておくとよいでしょう。
(3)
(2)の条件に加えて、風がふく場合、つまり雨がななめに動く場合を考える問題です。
ここでポイントになるのは、雨は風によって速さ「か」で前へ移動し、角さんも速さ「か」で前へ移動しているので、角さんから見ると雨は下に移動するように見えるということです。
そのため、角さんから見ると、丸さんが雨にぬれる量は、風がふいていない場合の(2)と同じように考えられます。
◆問題ピックアップ!
※差がついた1問や必ず得点しておきたかった問題などをご紹介します。
(2)②
人の速さ「は」を横軸、人が雨にぬれる量を縦軸にとった関係を表すグラフを選ぶ問題です。
(2)の問題文と①から、人が雨にぬれる量は、次の2つの量の合計であることがわかります。
人の上側が雨にぬれる量:△×「あ」×「き」÷「は」
人の前側が雨にぬれる量:☆×「き」
まず、人の上側が雨にぬれる量が、どのような形のグラフとなるのかを考えます。
問題文に、△・「あ」・「き」は変化しないとあるので、△×「あ」×「き」も変化しないことがわかります。
よって、人の上側が雨にぬれる量は、「は」が大きくなればなるほど小さくなり、「は」が小さくなればなるほど大きくなることがわかります。
これは、反比例の関係になります。
次に、人の前側が雨にぬれる量について考えます。
これは問題文にグラフの破線は☆×「き」を表しているとあり、つねに一定の値であることがわかります。
以上のことから、反比例のグラフを☆×「き」の分だけ縦軸方向に移動させたグラフが正解だとわかります。
共通問題(算数分野)
〇テーマ
不思議な図形
〇内容
ある操作をくり返して作られる立体や平面の図形について考察する。
◆概要
(1)はペロブスカイト構造、(2)はフラクタル構造を題材とした問題で、くり返しの操作によりできる図形や図形量について考察する問題です。
(1)
①・②
操作前のペロブスカイト構造の立体について、ある断面で切ったときの断面の面積比や体積比、立方体の面の数や頂点の数を考えます。
③・④
操作後の立体と操作前の立体の体積比や、さらに操作を1回行い、ある断面で切ったときの断面図を考える問題です。操作後の立体を正確にイメージする必要があります。
(2)
①
正三角形に操作を1回だけ行って作られる図形の面積は、元の正三角形の何倍で、何㎠になるかを求める問題です。
②
1回の操作によって、辺の数や増える正三角形の数と面積がどうなるか説明する問題で、ルールを見つけて自分の言葉でまとめて説明する力が必要です。
③
操作を4回行って作られる図形の「辺の数」と「面積」を求める問題です。
◆問題ピックアップ!
※差がついた1問や必ず得点しておきたかった問題などをご紹介します。
(2)③
ある操作を正三角形に4回行って作られる図形の辺の数と面積を求める問題です。
(2)②で見つけたルールをもとに、4回の操作を行ったときまでに変化する「辺の数」や「増える正三角形の数と面積」を、1回目の操作から4回目の操作まで丁寧に順を追って考えなければいけません。
特に、4回の操作で作られる図形の面積については、操作で変化する3つの要素「辺の数」、「増える正三角形の数」、「増える正三角形1つの面積」全てを用いて、操作の前後における図形の面積の関係式を立てる必要があります。
操作を4回行ったときまでの、操作の前後における面積の関係式を1つずつ丁寧に立てて、根気強く計算していく力が求められます。
適性検査 2-2(45分)
共通問題(国語分野)
〇放送音声
セシル・ロブラン、ジャン・ロブラン/伏見操訳『天才のら犬、教授といっしょに哲学する。人間ってなに?』より
◆概要
(1)
会話文の内容を簡単にまとめた図を見て、図の中の空欄にあてはまる言葉を書く問題です。聞き取りをしながら、重要なことを適切にメモに取っておくことが必要です。
(2)
会話の内容にあてはまる自分の体験を具体的に説明する問題です。
◆問題ピックアップ!
※差がついた1問や必ず得点しておきたかった問題などをご紹介します。
(2)
哲学者とレオが、「働くこと」について会話をしています。レオの「人間はなぜいつも誰かと一緒にいるのか」という問いかけに答える形で、哲学者が働くことの意味について語っています。この会話が放送内容です。
哲学者が語った内容をふまえて、会話の内容にあてはまる自分の体験を作文します。
音声放送は一度だけで、問題を先に読んでおくことはできないため、音声を聞き取りながら、話している内容のポイントを確実にメモすることができるかが重要だといえるでしょう。
(1)の解答も参考にしながら、指定された範囲で文章をまとめましょう。
共通問題(国語分野)
〇出典
文章【1】糸井重里『こどもは古くならない。』より
文章【2】平山美希『「自分の意見」ってどうつくるの?』より
〇内容
2つの文章の読み取り。
◆概要
(1)
文章【1】についてまとめた文章の、空欄にあてはまる言葉を書く問題です。
文章【1】は論理的というよりも感性的な文章なので、文中の言葉をぬき出すだけはうまくいかないでしょう。
書かれていることが具体的に何を意味しているのかをつかんだうえで、空欄にあてはまる言葉を考えましょう。
(2)
文章【1】で考えたことを、さらに文章【2】をふまえて深め、それを図にしたものの空欄にあてはまる言葉を書く問題です。
いずれも「【1】をもとに」「【2】をもとに」書きなさい、とはありますが、文中の言葉をぬき出すだけはうまくいきません。
文章の内容を的確につかんだうえで、自分の言葉を使って書く必要があります。
◆問題ピックアップ!
※差がついた1問や必ず得点しておきたかった問題などをご紹介します。
(3)
文章【1】の「自分らしく生きる」ことについて、文章【2】もふまえて図の説明を完成させます。
まず、文章【1】が「みんなちがって、みんないい」と主張し、文章【2】が「みんなちがって、みんないい」けれど、「みんなちがって、みんなどうでもいい」はだめだ、と主張していることをつかみましょう。
文章【1】と文章【2】は対立するのではなく、【1】を発展させた形で【2】が書かれている、ということです。
したがって図は、「みんなちがって、みんなどうでもいい」という形ではなく、「みんなちがって、みんないい」を表現していることになります。
あとは、図中の「それによって」「その結果として」という言葉や、空欄の前後の言葉にも注意して、空欄にどんな内容を入れるのが適当かを考えていきましょう。
共通問題(国語分野)
〇出典
山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか?』より
〇内容
2つの文章(問題3の文章と問題2【2】の文章)の読み取り。問題2・3をふまえての読解と作文(15~20行)。
◆概要
(1)・(2)
文章中の1フレーズについて、問題2【2】の文章から同内容の言葉を探す問題です。2つの文章に共通する考え方を読み取りましょう。
(3)
文章中の「より正しい正しさを実現する」ことについて話し合っている会話文の内容について考える問題です。
会話文の中の空欄はA~Cの三か所で、Aが5~10字、Bが20~25字、Cが35~40字。
いずれも「問題3の文章中の言葉を使って」とはありますが、使えるのは単語レベルであって、それを表現レベルまで組み立てるには、自分の言葉をかなり補わなければなりません。
会話の流れも考えながら、適切な表現を考えることが重要です。
(4)
国際会議で「世界の人々が安心して生活できる社会を築くためにはどうしたらよいか」について発表するための原稿を作る作文問題です。
作文の内容は「実際に話す言葉づかいで書く」「実際に取り組んでいる活動でその目的にかなうと考えられるものを具体的に書く」「なぜその活動がその目的にかなうと考えるのかを説明する」「問題2・3で考えたことをその活動に生かすのかを説明する」といった条件があたえられています。
15~20行と字数にゆとりはありますが、あらかじめ書くことを整理して、論理的にわかりやすい文章を書くことが求められている問題です。
◆問題ピックアップ!
※差がついた1問や必ず得点しておきたかった問題などをご紹介します。
(4)
設定に沿って、15~20行の作文をする問題です。
自分の考えをただまとめるだけでなく、問題2・問題3の文章の考え方を取り入れて書くことに難しさがあります。
書き始める前に、それぞれの文章のどのような考え方に注目するのか、その考え方を自分の意見にどのように取り入れるのかということを考え、文章の構成を整理してから作文しましょう。
また、段落の構成と内容についても条件で指定されているので、それぞれの段落で書きたいことや文章の量のバランスなどもあらかじめ考えてから書き始められるとよいでしょう。
とくに伸ばしておきたい力
千葉県の二次検査では、「5つの力」をバランスよく伸ばすことが求められますが、とくに伸ばしておきたい力として、論理的思考力が挙げられます。
・適性検査問題2-1
【大問1】
教科基礎力、論理的思考力が必要な問題です。図形の基本的な知識が必要な問題はよく出題されるため、必ず身につけておきましょう。また、あたえられた条件でどうなるかを考える力も大切です。
【大問2】
論理的思考力が必要な問題です。ある操作を行う前と後における図形や数の変化から、規則を読み取って考察する力が求められます。
・適性検査問題2-2
【大問1】
情報整理・運用力、論理的思考力が必要な問題です。聞き取った内容や、資料から読み取ったことから重要なことを図やメモにまとめ、活用できるようにしましょう。
【大問2】
国語的な教科基礎力、論理的思考力が必要な問題です。読み取った資料について、文章の内容や筆者の主張を論理的にまとめられる力をつけておくことが重要です。
【大問3】
論理的思考力、表現力が必要な問題です。あたえられた条件に従って、自分の考えをだれが読んでもわかりやすい文章で書くことのできる表現力を伸ばしておきましょう。
おすすめの学習法
ルールやきまりを資料から読み取り、より複雑な条件でどうなるかを考える力を身につける必要があります。
難度がそれほど高くない問題もあるため、それらの問題で点を落とさないことが重要です。
過去の適性検査を複数年研究して、どの問題を解くべきかを見極め、時間配分について考える練習を積んでおきましょう。
問題ごとに、おすすめの学習法を紹介しますので、参考にしながら学習を進めていきましょう。
・適性検査問題2-1
【大問1】
問題文から物事のしくみやルールを理解し、あたえられた条件でどうなるかを論理的に考える練習をしましょう。
Z会の公立中高一貫校適性検査講座6年生11月号では、初めて見るような物事や現象を題材に、論理的思考力をきたえる問題にちょうせんします。
【大問2】
読み取った条件をもとに試行錯誤しながら、答えにたどり着く練習をしておきましょう。
Z会の公立中高一貫校適性検査講座6年生8月号では、問題であたえられている数や図形の変化から規則を読み取り、推理する問題にちょうせんします。
・適性検査問題2-2
【大問1】
聞き取った音声や資料をもとに重要なことをメモにまとめる練習をしておきましょう。矢印や図の使い方など自分なりのメモの取り方を決めておくと、短い時間でわかりやすいメモを作ることができます。
Z会の公立中高一貫校適性検査講座6年生9月号では、聞き取りの問題に取り組みます。
【大問2】
説明文や資料を読んで、内容や筆者の主張を図や文章に論理的にまとめる練習をしておきましょう。
【大問3】
読み取った内容や自分の意見の中で作文に必要なポイントをまとめ、全体の構成のメモをつくる練習をしましょう。