お話は「希望」

出たばかりの新刊から保護者にも懐かしい名作まで、児童文学研究者の宮川健郎先生が、テーマに沿って子どもの本を3冊紹介していきます。 
今月のテーマは【お話は「希望」】です。

 

『希望を運んだ図書館 馬に乗って本をとどけた女性たち』中面画像
『希望を運んだ図書館 馬に乗って本をとどけた女性たち』より

わたしがケンタッキー(しゅう)図書館(としょかん)(はたら)いていたときの(はなし)をしましょう。
それは、たくさんの(ひと)仕事(しごと)(うしな)い、未来(みらい)不安(ふあん)(かん)じていたときのことです。
政府(せいふ)(あたら)しい仕事(しごと)(つく)り、人びとの希望(きぼう)(ゆめ)につなげようとしました。
そのひとつが、(うま)(ほん)をとどける図書館(としょかん)仕事(しごと)でした。
この図書館(としょかん)目的(もくてき)は、たったひとつ。
(とお)いところに()(ひと)たちの世界(せかい)(ひろ)げること。
すばらしい言葉(ことば)物語(ものがたり)にふれてもらい、(こころ)のささえになるように。(太字原文)

 

たぬはらさんは ワゴンに なりました。
はっぱが ぜんぶ ほんに かわっています。
どこでもいける どこでもとしょかん。
カタ カタ カタタン。
のはらに しゅっぱーつ!

 

 
子どもたちのなかには、学校にも行けず、読み方を習わない子もいたから、ナフタリはそういう(おさな)い子たちを何人か集めては、馬車に乗せ、お話を聞かせてやった、それは、ほんとうの話のこともあれば、自分で作った話のこともあった。

 


 

『希望を運んだ図書館 馬にのって本をとどけた女性たち』書影

『希望を運んだ図書館 馬にのって本をとどけた女性たち』
作 ローレン・H・カースティン、絵 ベッカ・スタッドランダー、訳 中井はるの 
くもん出版、2026年 
騎馬図書館員の「わたし」は、時には川を横切り、時には雨でぬかるんだ坂道を馬をおりて歩いた。その先には、本を待つ子どもたちや大人もいるのだ。――「根気強く本や読み物をとどけるにつれて字を読める人がふえてくると新しい考えもどんどん生まれました。まるで、花がひらくように……。」(太字原文)
騎馬図書館員たちは、9年のあいだに、150万人に本を(希望を)届けたという。当時のケンタッキー州東部の識字率は、人口の31パーセントだった(巻末「騎馬図書館計画とは?」)

 

『たぬはらさんのどこでもとしょかん』書影

『たぬはらさんのどこでもとしょかん』
はやしますみ 
偕成社、2025年 
たぬはらさんは、図書館をおしまいにするとき、かならず昔話を語る。野原では、おむすびがネズミの穴に落ちる話、池のなかでは、タニシが長者になる話……。

 

『お話を運んだ馬』書影

『お話を運んだ馬』
I.B.シンガー作、工藤幸雄訳 
岩波少年文庫、1981年 
シンガー(1904~1991年)は、ユダヤ系アメリカ人の作家。幼少年期をポーランドの首都ワルシャワですごす。1978年、ノーベル文学賞受賞。最初の「お話の名手ナフタリと……」は、自伝的な物語である。お話好きの子どもは、お話の本を読む、そして、お話の本を書くという希望をいだくようになる。幼いナフタリが聞いたのは、妖精や小悪魔の話だったが、収録された、そのほかの7編も、ふしぎな物語だ。妖精の話を語るイェンツル伯母さんは、「あたしのころは、どんなことだって、りくつじゃ片づかないってことがだれにもわかっていたのさ。」という(3番めの話「ランツフ」)

 

宮川先生プロフィール写真

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)


1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

 

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