心に、いも判!

出たばかりの新刊から保護者にも懐かしい名作まで、児童文学研究者の宮川健郎先生が、テーマに沿って子どもの本を3冊紹介していきます。
今月のテーマは【心に、いも判!】です。

 

『しかたなし日記』中面画像
『しかたなし日記』より

①1時間目国語の音読あてられた→しかたない
②3時間目算数ドリルわすれた。きのうちゃんと宿題やったのに!→しかたない
③となりのかつやが「ほんとはやってないんだろ」ってヒソヒソ言ってきたけど、やってあるってしょうめいできない。→しかたない
④きゅうしょくがまーぼー春雨だった→しかたない

 

 すると、ひろきくんは ひっくりかえった カブトムシみたいに、(あし)を ばたばたさせます。
「やだ、やだ、やだー!」って おおさわぎ。
 それで、ほのかちゃんが、「はばぬき、やめようか」って いいました。
 りんは、やっぱり (なに)も いえません。
 (なに)か いおうと すると、のどの おくで ことばが (いし)みたいに かたく なって、つっかえてしまうのです。

 

 


 

『しかたなし日記』書影

『しかたなし日記』
市川宣子 作、堀川 真 絵
童心社、2026年
なこちゃんと、ゆうちゃんと、こうくんは、「しかたない」と「しかたなくない」について、いろいろな例で話し合う。こうくんは、近ごろ、このことについて考えていたようだ。こうくんは、書きかけの日記を見せる。もう、消しゴムで作った簡単版の「し」のはんこが押してある行もある。――「おかんのけんさけっか×だったこと にゅういんしてしゅじゅつすること 飛行機に、のっておばあさん、がくる、こと」こうくんのシングルマザーのおかあさんが病気なのだ。
急に大人のことばで書くけれど、子どもは大人の経済的基盤のもとで暮らしているから、大人の事情に振りまわされて、さまざまな「しかたない」状況におちいる。子どもたちは、現実との「折り合い」をさがしていく。

 

『いいたいことがありすぎます!』書影

『いいたいことがありすぎます!』
工藤 純子・作、武田 美穂・絵
金の星社、2026年
りんは、いつも、しかたないと思ってしまう。いいたいことをいう、ひろきくんが、少しだけだけれど、うらやましい。
おいしそうなサンドイッチが出来上がったとき、学童に、りんのおかあさんが飛び込んでくる。――「きょう、歯医者さんに 行く 日だったの!」予約をわすれていたという。いますぐ行かないと間に合わないという。とうとう、りんの貝みたいだった口がぱっかんと開く。

 

『ベルンカとやしの実じいさん 366日のおはなし』上 1月から6月のまき、下 7月から12月のまき書影

『ベルンカとやしの実じいさん 366日のおはなし』上 1月から6月のまき、下 7月から12月のまき
文 パベル・シュルット、絵 ガリーナ・ミクリーノワ、訳 大沼有子
福音館書店、2015年
ベルンカといっしょにいるのは、やしの実のぼうしをかぶった小さな小さなおじいさん。このあいだのクリスマスに届いた小包に入っていたのだ。おじいさんは、南の島のハイチの郵便局で自分でたのんで送ってもらったという。
毎日の小さな話をどんどん読んでしまってはいけない。できれば、毎日一つずつ。きのう読んだのと、きょう読むあいだの時間が、お話の世界をふくらませる。最後は、翌年の元旦の話だ。

 

宮川先生プロフィール写真

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)


1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

 

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