「小学校で英語の授業が始まったというのは聞いているけど、結局何をするのかイマイチ分かってない…」「授業のために、早めに準備をしておいた方がいい?」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、英語必修化だけでなくその後の変化についてもご紹介。英語必修化に関する疑問にお答えします。
結局「英語必修化」って何?
つまるところ、小学生は必ず3年生から英語の授業が始まるということです。
2020年度から小学校で完全実施となった学習指導要領に則り、小学校では外国語(主に英語)の活動・授業が行われています。2020年度以前も、5・6年生を対象に外国語活動が行われていましたが、2020年度以降は明確に、英語学習の開始は中学校ではなく小学校で担う形となりました。
現行の学習指導要領のうち、外国語部分については大きな変更だったため、2018年度より先行実施の期間が設けられていました。そのため、実際には2018年度より、全国の多くの小学校で、3年生以上に何かしらの形で英語に触れる機会が設けられていたということができます。
年間の授業時間、
学習目標や授業内容
小学3・4年生は「外国語活動」、小学5・6年生は「教科」と定められているように、同じ英語の授業でも学年によってそれぞれ違いがあります。
ここでは以下の3項目について、解説します。
・学習目標
・授業内容
・年間の授業時間
学習目標や授業内容、
年間の授業時間
小学3・4年生「外国語活動」
<学習目標>
・「聞く・話す」を通じて、言語に慣れ親しむ
<授業内容>
・自分の考えや思いを伝えるといった言語活動がメイン
<授業時間>
・週1コマ程度、年間35時間相当
小学5・6年生「教科」
<学習目標>
・日本語と英語の違いに気付き、知識として定着
・英語のコミュニケーションに活用できる基礎的な技術の定着
<授業内容>
・「聞く・読む・話す・書く」の体系的な中学以降につながる授業
<授業時間>
・週2コマ程度、年間70時間
小学3・4年生「外国語活動」の詳細
小学校学習指導要領の「外国語活動の目標」は以下の通りです。
「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次の通り育成することを目指す。」
引用:小学校学習指導要領、太字は筆者によるもの
学習指導要領では、小学校~高校まで全教科を通して「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱で児童・生徒を育成することを主眼としており、外国語活動についても、この3つの柱に関わる外国語特有の資質・能力の育成を目指しています。
なお、3つの柱は一体で育成されるものですが、ここではその基礎となる「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」について詳しく見てみたいと思います。
「知識及び技能」:
外国語を通して、言語や文化について体験的に理解を深め、日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。「思考力、判断力、表現力等」:
身近で簡単な事柄について、外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝えあう力の素地を養う。(学びに向かう力、人間性等の項目省略)引用:小学校学習指導要領、太字は筆者によるもの
つまり、3・4年生では外国語(主に英語)を体験的に使い、「聞くこと」「話すこと」を通じて言語に慣れ親しむことを目標とします。2年間を通して、I’m ~.「わたしは~です。」 や I like ~.「ぼくは~が好きです。」 などの表現に段階的に繰り返しふれたり、気持ちを伝えあう道具として使用したりしますが、知識としての定着は目標としていません。
実際の授業では、小学生が先生や友達に自分の考えを伝えたり、気持ちを伝えたりする「言語」を使った活動が行われており、単語や表現の定着ではなく、「言語活動」に重点が置かれています。
「外国語活動」の授業時間は週1コマ程度、年間35時間相当と設定されています。学校や自治体によっては、例えば朝の15分で外国語活動を行う等のモジュール授業※を行っているところもあります。
※モジュール授業:10分、15分程度の短い時間で行う学習・授業のこと。
小学5・6年生「教科」の詳細
5・6年生の「外国語科の目標」は以下の記述になっています。
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
引用:小学校学習指導要領、太字は筆者によるもの
3・4年生の外国語活動と同様、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「知識及び技能」の3つの柱は一体で育成されるものですが、ここではその基礎となる「知識及び技能」の目標を取り上げます。
「知識及び技能」:
外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについて、日本語と外国語との違いに気付き、これらの知識を理解するとともに、読むこと、書くことに慣れ親しみ、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技術を身に付けるようにする。引用:小学校学習指導要領、太字は筆者によるもの
つまり、授業の中で単に英語に慣れ親しむだけではなく、言語としての日本語と英語の「語順の違い」等に気付き、知識として定着させること。他にも、子どもたちが大人になったときに英語をコミュニケーションのツールとして活用できる力を育成するための、基礎的な技術の定着を目標としています。
また、外国語活動で実践した「聞くこと」「話すこと」に加えて、「読むこと」「書くこと」についても総合的に取り組み、「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の4つの軸をより一層重視し、体系的な学習を行っていくこと、さらには中学以降の英語の学習につなげていくことが目標とされています。
「教科」と「活動」の異なる点として、以下2点が挙げられます。
① 検定教科書の使用
② 数値による成績/評価が付く
現在、小学校英語教科書は合計7社から発刊されており、使用する教科書は自治体によって異なります。上述の「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点について評価されることになります。
「教科」としての英語の授業時間は年に70時間あります。授業は主に担任の先生が行いますが、英語専科として英語のみを教える先生が加配されている学校もあります。また、自治体によって呼び名は異なりますがALT(外国語指導助手)の先生による授業も行われています。
「英語必修化」その後の影響
2018年度より先行実施、2020年度より完全実施となった外国語(主に英語)ですが、実際に児童・生徒にはどのような変化が見られたのでしょうか。
令和3年度(2021年度)までの中学生の英語力の変化を表した文部科学省の資料※を見てみましょう。
※下記の図は、出典:文部科学省 令和3年度「英語教育実施状況調査」概要(https://www.mext.go.jp/content/20220516-mxt_kyoiku01-000022559_2.pdf)より抜粋。
CEFR A1レベル(英検3級程度)相当以上を取得している生徒の数が徐々に増えている。
以前に大学入試の民間試験での代替が示唆されていたことや、小学校での英語学習の影響もあってか、中学生の英語能力は上昇の一途を辿っている。
小・中学校の先生からは、英語の授業を受ける児童・生徒たちに変化があったという声も挙がっています。
「コミュニケーションの道具」として英語を使うことが前提となりつつある。スピーチを行う授業で1人の生徒が“Hi, class.”でスピーチを始めると、数年前は他の生徒からの反応は特になかったものの、最近はクラス全体で「Hi.」と返事をする姿が見られる。(中学校)
英語に対する姿勢が二極化しているように思う。クラスの中でもとても英語に興味がある児童と、あまり興味を示さない児童が存在する。(小学校)
小学校での授業のために
特別な準備は必要?
「小学校での学習に先立って何か家でも準備をしたほうが良いのか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的には、小学校での英語の授業に備えて、特別な準備は必要ありません。
小学校の授業で英語やほかの言語にふれることで、日本語とは異なる言語が存在する、さまざまな文化があるといったことに気づきます。お子さまのそういった気づきを大切にするとよいでしょう。
また、学校にALT(外国語指導助手)の先生がいらっしゃる時間もあると思います。先生とコミュニケーションを取ろうとする気持ちも大切にしましょう。
小学校の授業のために特別な準備は必要ないとはいうものの、小学生の時期は英語の音をスポンジのように吸収できる黄金期でもあります。お子さまが英語に興味をもち、もっと英語にふれたいという場合には、英語の学習に取りくんでみましょう。まず初めは、継続的に学習できることを目標にするのがオススメです。
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ふんだんに音声を聞く・慣れ親しんだ内容を発話する・文字を読む・書き写すのアクティビティ
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「聞く・話す」のトレーニングだけでなく、自分の言葉で直接先生と交流することで、「もっと先生に伝えたい!」「もっと丁寧に先生に説明をしたい!」と英語への興味や学習の意欲が継続していきます。
※5・6年生のみ