出題校
神奈川県の中高一貫校では、神奈川県の共通問題を使用して、適性検査が実施されます。 各学校の問題は、次の表の通りです。
(共通=神奈川県共通問題、独自=学校独自の問題)
令和5年度 出題情報 | ||
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平塚中等教育学校 | ||
相模原中等教育学校 |
令和5年度 出題情報 | ||
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平塚中等教育学校 | ||
相模原中等教育学校 |
共同作成問題の全体的な傾向
問題の構成や傾向について、前年度からの変化はありませんでした。
◆適性検査Ⅰ、Ⅱ
それぞれ大問4問構成で、いずれも会話文や表・グラフ、資料などの情報を読み取る問題で、あたえられた情報の中のどこに注目すればよいかを判断する必要がありました。
問題ごとの分析
適性検査Ⅰ(45分)
共通問題(社会分野)
〇テーマ 解決したい社会問題
〇内容 水力発電に関する資料の読み取り。解決したい社会問題や、思考力を育成する方法を説明する。
◆概要
(1) 様々な会話文や資料を参照し、選択肢の正誤を判断する問題です。 資料と選択肢で単位が異なり、計算の必要がある選択肢もあるので、注意深く問題を読む必要があります。このように選択肢の正誤を判断する問題は、選択肢の中の間違っている部分をどのように訂正すればよいかまで考えられるようにしておくと、自信のある解答を作成できます。
(2) 自身が考える社会問題と、思考力を育てる方法の2点を説明する問題です。 資料の要点を押さえる力や、自分の考えを書く力などが必要になります。
いずれの問題も、問題文や選択肢、資料に書かれてる内容を正確に読み取る必要があります。解答作成に必要な値や文章には、印をつけるなどの工夫をするとよいでしょう。
◆問題ピックアップ!
(差がついた1問や必ず得点しておきたかった問題などをご紹介します)
(2) この問題では、説明する内容が2点あります。 「解決したい社会問題」は、問題中にヒントとなる資料がないため、自分の考えを書く必要があります。このような問題に対応できるよう、毎日の学習やニュースの中で取り上げられた社会問題に、関心をもっておくとよいでしょう。 「思考力を育成するための方法」は、日常の中で考える機会が少なく、難しく感じるかもしれません。しかし、資料の中に「思考力を育てる立派なトレーニング」について書かれた部分があるので、これをヒントにして解答の方向性を定めると、スムーズに解答を作成することができます。 このような問題を解くためには、様々な形式の問題を解き、総合的な力を養うとよいでしょう。
共通問題(算数分野)
〇テーマ 線対称、場合の数、整数の性質
〇内容 しきつめ模様、さいころの組み合わせを考える。
◆概要
(1)は、正方形の板を枠の中にしきつめて、線対称になる模様を何通り作れるか考える問題です。
(2)は、2個のさいころを組み合わせて、目の数の奇数・偶数に関する条件を満たす場合を考える問題です。 (1)、(2)ともに条件はわかりやすく取り組みやすいため、確実に得点しておきたい問題といえます。しかし、回転して同じ模様となる図形を同じものとして数えたり、さいころのさまざまな向きを検討したりする中で、ぬけもれや重複を起こしやすいので、注意して数え上げなければ得点につながりません。
◆問題ピックアップ!
(2) ポイントは以下の通りです。 ① さいころの向かい合う面の目の数は、片方が奇数で片方が偶数 ② 2つの整数の和が奇数となるとき、整数は片方が奇数で片方が偶数 この2つのポイントに気がつけば、条件にあったさいころの向きをしぼりこむことができて、ぐっと数え上げやすくなるでしょう。
共通問題(社会分野)
〇テーマ 温室効果ガスの排出量
〇内容 温室効果ガスの排出量に関する資料の読み取りと活用。
◆概要
(1) 3つの資料を参照して選択肢の正誤判定をする問題です。「すべて」選ぶという点に注意し、1つ1つの選択肢を正確に吟味する必要があります。
(2) 資料や会話文の値をもとに計算して答えを求める問題が2題出題されています。答えを求めるにあたって、まずはどの値を用いて何を求めるかを整理し、計算の筋道を立ててから計算にうつることが解答作成のポイントとなります。
今回の問題のように、資料の読み取りや活用が必要となる問題では、資料の題名や単位などを見ることで、その資料が何を示しているのかを押さえておくようにしましょう。いずれも問題文や選択肢を正確に読み取ることで正解できるので、得点源にしたい大問です。
◆問題ピックアップ!
(2) まずは、問題文や会話文をよく読み、問題で求められている値を確認しましょう。その上で、計算に必要な値を資料や会話文から探します。今回の問題では、計算に必要な値が資料中に書かれておらず、それを求めるための計算も必要でした。 計算が多く時間がかかるように感じますが、資料中の必要な値に印をつけておくこと、計算の筋道を立ててから計算にうつることなどの工夫をすることによって、問題にかかる時間を短縮することができます。 資料の読み取り問題はよく出題される問題の1つです。ときには、(2)のように計算が必要になることもあるので、普段から問題を解く際に正確な資料の読み取り・計算を意識しておくとよいでしょう。
共通問題(算数分野)
〇テーマ 場合の数
〇内容 経路の問題。
◆概要
校外学習で4つの施設を見学するときの回り方を考える問題です。 資料の中から必要な情報を選び出す問題で、多くの資料があるものの条件は易しいので、(1)のア、イと(2)のアまではスムーズに取り組めるでしょう。しかし、(2)のイは計算量が多く、何通りもの場合について検討するのに骨の折れる問題でした。 そのため、(2)のイはほかの問題を見直して確実に得点できるようにしたあとで、落ち着いて取り組むべき問題だったといえます。
◆問題ピックアップ!
(2)イ 最も早く学校へもどる施設の回り方について考える問題です。 時間の計算は簡単なたし算ですが、8つの駅と4つの施設を電車と徒歩で行き来し、駅での停車時間や待ち時間なども考慮することにより計算量が爆発的に増えます。 さらに、最も早く学校へもどる回り方を考える問題なので、条件に合う回り方を見つけても、それより早い回り方がないか確かめなければなりません。 すべての場合をしっかり調べるととても時間がたりませんが、資料からある程度、条件に合わない回り方を予想することができます。 たとえば、それぞれの施設に開園時間が設定されているので、開園するのがおそい施設は先に行くと開いていないと予想できます。 そうした予想をしておけば正確な計算をしなくても、がい算により条件に合わないことがすぐに確かめられます。 また、電車の発着時間には規則性があり、「何時」の部分が変わっても「何分」の部分は同じです。 施設のある駅での発着時間についてまとめた時刻表を作れば同じ計算を省くことができ、時間帯が変わっても使うことができます。 正確に計算を行うべき部分とがい算で済ませるべき部分を見きわめて、手際よく情報を処理する必要のある手強い問題でした。
適性検査Ⅱ(45分)
共通問題(国語分野)
〇テーマ 漢字の成り立ち
〇出典 資料1 『漢字の歴史』笹原宏之著より ※一部表記を改めたところがある。 資料2 『漢字が日本にやってきた!』阿辻哲次 髙木まさき 棚橋尚子監修 青山由紀 岸田薫 鈴木一史編集より ※一部表記を改めたところがある。 資料3 『「国字」字典』世界文化社発行より ※一部表記を改めたところがある。
〇内容 3つの資料の読み取り。
◆概要
(1) 3つの資料から読み取れることとして正しいものをすべて選ぶ選択問題です。 難易度はそれほど高くありませんが、資料が3つあるので、どの資料で述べられている内容なのかを適切に判断し、それぞれの選択肢が正しいかどうかを判断していく必要があります。
(2) 3つの資料の内容をふまえて、日本の国字について40~60字で説明する問題です。 字数が多くない中で書くべきことが2つ指定されているので、必要なことを過不足なくまとめることが求められます。
◆問題ピックアップ!
(2) 資料の内容をふまえ、日本の国字について「どのようなことを表した漢字か」「何に着目してつくられたか」ということを40~60字でまとめる問題です。 限られた字数の中で書くべきことが2つ指定されており、それぞれの内容について簡潔にまとめる必要があります。 共通したテーマについて3つの資料があるので、解答に必要な内容がどの資料に書かれているかを適切に判断しましょう。
共通問題(算数分野)
〇テーマ 円周、小数の計算、表の整理
〇内容 グラウンドにひいたトラックの長さ、チーム分け。
◆概要
(1)はグラウンドにひいたトラックの長さについて求める問題です。(2)はチーム分けについての問題です。 基本的な算数の知識で解けるため、教科基礎力をしっかりに身につけておけば(1)のア、イと(2)のアまではスムーズに取り組めるでしょう。 しかし、(2)のイはひとひねりされた問題です。チーム分けについて「チームポイント」というものが設定され、学年ごとの人数、チームごとの人数の条件と合わせて答えを求めます。 どこから手をつけてよいか見えにくいですが、工夫すればスマートに解くことができるので、差がつく1問といえます。
◆問題ピックアップ!
(2)イ 4年生、5年生、6年生の混じったチーム分けの問題です。不明な数が4つありますが、学年ごとの人数、チームごとの人数の条件から、1つの数が決まれば残りの3つの数も決まります。 4つの数がたがいに関係して変化するため、1つの数を変えたら「チームポイント」を何度も計算し直さないといけないように見えますが、人数の変化にともない「チームポイント」がどう変化するかをつかむことができれば、最低限の計算量で答えを求めることができます。 この問題は、いわゆる「つるかめ算」の応用問題としてとらえるとよいでしょう。 まず、Cチームの4年生を0人として計算すると、CチームとDチームの「チームポイント」の差は50ポイントになります。 そして、Cチームの4年生が1人増えるごとに「チームポイント」の差は2ポイント縮まることが計算で求められるので、「チームポイント」が同じという条件を満たすのは、Cチームの4年生が、50÷2=25(人)のときだとわかります。 地道な試行錯誤や数え上げが必要なことが多い適性検査の問題の中で、めずらしく明確な解法があるので、しっかりと得点しておきたい問題です。
共通問題(理科分野)
〇テーマ 電球の光
〇内容 電球が照らす範囲を読み取り、迷路の中で電球を置く場所を考える。
◆概要
(1) 電球を置く場所によって照らす範囲がどのくらいちがうかを考える問題です。 会話文と図から電球が照らす範囲の条件を読み取り、実際に図4で電球が照らす範囲をかきこむことで、整理して考えることができます。
(2) 迷路の中すべてを照らすために最低限必要な電球の数を考える問題です。 電球が照らす範囲をふまえた上で、最も効率よく迷路の中を照らすことができる場所を1つずつ考えていく必要があります。
◆問題ピックアップ!
(2) 迷路の中すべてを照らすことができる電球の配置を考えます。電球の数が最も少なくてすむように、より広範囲を照らすことができる場所を見つけ出すことがポイントです。 迷路は複雑な形をしているので、電球が照らす範囲を丁寧にかきこんで考えていくとよいでしょう。 まずは、入り口と出口の周辺に必ず電球を置く場所が示されているので、それらの電球が照らす範囲をかきこみます。 そしてまだ照らせていない部分を最も効率よく照らすことができる電球の場所を考え、そこに置いたときの照らす範囲をかきこみます。 これをくり返し考えていくことで、迷路の中すべてを照らすことができる電球の配置を見つけ出すことができます。
共通問題(算数分野)
〇テーマ 場合分け
〇内容 さいころをふってこまを動かすゲームで経路と得点を考える。
◆概要
さいころをふって出た目の数にしたがい、こまを動かすゲームを題材にした問題です。 こまを動かすルール、得点の計算ルールなどの条件が複雑で、条件に合う経路を正確に数え上げるのが難しく、答えが出せたと思っても本当に正しいと確信がもちにくいでしょう。 3つの設問に一通り取り組むことでルールへの理解が深まるので、ざっと取り組んだあと、もう一度細かい部分を確かめながら取り組むといった戦略を立てるとよいでしょう。
◆問題ピックアップ!
(1)ア (1)ア、イ、(2)の3つの問題が出されました。 (1)アの問題はシンプルで簡単に思えますが、複雑な条件に合う経路の中には見落としやすいものもあります。 あとの問題ほど難しくなっていくので、この問題はしっかり得点しておきたいところです。 マス目の対称性に注目することで、条件に合う経路をもれなく見つけ出しましょう。
とくに伸ばしておきたい力
神奈川県では、より伸ばしておきたい力として、情報整理・運用力、論理的思考力が挙げられます。 あたえられた多くの情報の中から問題を解くために必要な情報を探し出したり、情報を読みかえたりする力が求められます。
◆適性検査Ⅰ
【問1】 情報整理・運用力が必要です。 表やグラフの読み取りはもちろんのこと、この問題では会話文など文章の資料を読み解く力も重要です。どんな資料でも、要点を整理できるようにするとよいでしょう。
【問2】 情報整理・運用力、論理的思考力が必要な問題です。 条件を読みかえて順序立てて整理していく力が必要です。
【問3】 様々な資料や問題文に書かれた情報を整理して、要点をおさえるための情報整理・運用力が必要です。 複数の資料を参照する問題であっても必要な値を探し出すことができるとよいでしょう。また、今回の問題では、複雑な計算をするときに計算の筋道を立てる論理的思考力も重要な力となります。
【問4】 情報整理・運用力、論理的思考力が必要な問題です。 多くの資料から必要な情報をぬき出すのはもちろんのこと、情報のあたえ方から問題のポイントを予想しないと時間がたりなくなるでしょう。
◆適性検査Ⅱ
【問1】 情報整理・運用力、表現力が必要です。 複数の資料から必要な情報を探し出し、文章にまとめる力が求められます。限られた字数の中でわかりやすく伝えられるよう、書くべきことを整理する練習しておきましょう。
【問2】 教科基礎力、論理的思考力が必要な問題です。 算数の基礎がしっかりできていれば解ける問題で確実に得点するとともに、こうした問題で時間を短縮し、他の問題に時間をかけるとよいでしょう。
【問3】 情報整理・運用力、論理的思考力が必要です。 会話文や図から読み取れることを整理したうえで、より複雑な条件でどうなるかを考える力が求められます。
【問4】 情報整理・運用力、論理的思考力が必要な問題です。 複雑なルールを理解することが第一に求められます。さらにさまざまな経路の検討と点数の確認でねばり強く取り組む力が必要とされます。
おすすめの学習法
複数の資料の読み取りが必要なため、手がつけにくい印象を受けますが、比較的解きやすい問題もあります。 読み取った情報を文章や図などに整理する練習をしっかりしておくとよいでしょう。 問題ごとに、おすすめの学習法をしょうかいしますので、参考にしながら学習を進めていきましょう。
適性検査Ⅰ
【問1】 自分の意見を述べる問題に適応できるよう、資料をもとに自分の意見を考え、説明するという流れを練習する必要があります。 Z会の公立中高一貫校適性検査講座6年生10月号では、社会問題に関するさまざまな種類の資料をもとに、解決策を検討する問題に取り組むことができます。
【問2】 図形や立体の性質をよく理解し、条件に合うパターンを見つける練習をしておくとよいでしょう。 Z会の公立中高一貫校適性検査講座6年生5月号では、立体図形をとらえる問題に取り組みます。
【問3】 資料の読み取り問題は、たくさん練習することで解く力をつけられる問題です。 Z会の公立中高一貫校適性検査講座6年生11月号では、いくつかの資料から適当な値を選んで計算するという複雑な資料の読み取り問題に取り組むことができます。
【問4】 多くの情報を効果的に使う練習をしておくとよいでしょう。 Z会の公立中高一貫校適性検査講座5年生9月号や1月号では、条件に合った駅やパビリオンの回り方を考える問題に挑戦します。
適性検査Ⅱ
【問1】 複数の資料を読み取る問題を解いて、書くべきことをメモなどに整理する練習をしておきましょう。 整理したメモをもとに指定の字数に合わせて作文することで、だれが読んでも論理的にわかりやすい文章を作ることができます。
【問2】 教科の基礎知識を使う問題の中でも少し応用的な問題に数多く取り組んでおくとよいでしょう。 Z会の公立中高一貫校適性検査講座6年生5月号では、単位量あたりの考え方を中心に教科基礎力を固める問題に取り組みます。
【問3】 実際に手を動かしながら考える練習をしておくとよいでしょう。限られた時間の中で問題を解くには、図にかきこんだり、読み取った情報からわかることを書きだしたりすることが大切です。
【問4】 ゲームのルールをよく理解し、ねばり強く数え上げを行う練習が必要です。初めて見る複雑なルールにひるむことなく、場合分けの検討を重ねることに慣れておきましょう。 Z会の公立中高一貫校適性検査講座5年生12月号では、複雑なルールのゲームを行う問題に取り組みます。
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