「プログラミング教育」とはどういうものなのか、またその背景にある「STEAM(スティーム)教育」とは何なのかを、わかりやすく紹介します!

STEAM教育・プログラミング教育について、専門家の方々や社会で活躍されている方々にお話をうかがっていきます。

2021年01月18日更新

やりたいと思うことに出合えたら、試行錯誤し、形にしていく経験を

やりたいと思うことに出合えたら、試行錯誤し、形にしていく経験を

「人々のくらしをアップデートする家電をつくる」というミッションのもと、くらしの中にある課題を探り、それらを解決する未来の家電のコンセプトをつくる仕事をしている湯浅さん。未知の課題に対する解決策を考えるうえでは、大学院時代の研究経験が生きているといいます。その経験や、テクノロジーのもつ可能性などについてうかがいました。

[プロフィール]

湯浅綺宙(ゆあさ・きひろ)

パナソニック株式会社 くらし基盤技術センター。慶應義塾大学理工学部卒業。同大学院理工学研究科修了。大学院では脳波を用いたリハビリテーションについて研究。現在は、研究開発部門にて「くらしアップデート」を実現する家電のあり方について調査・研究し、将来の商品コンセプトの策定に取り組んでいる。大学時代に始めたチアダンスは、Jリーグ・ガンバ大阪チアダンスチームのキャプテンを務めるほどの腕前。

※2021年1月時点

課題を抽出し、解決策を考える力を実践によって鍛えた

今、私が仕事で取り組んでいるのは、人々の日常の暮らしを拝見してお話をうかがいながら、「くらしの中にある課題」を見つけ、それを解決する将来の家電のコンセプトをつくること。解決策を考える過程では、社内外のエンジニアやデザイナーと議論しながらデモ機をつくり、ユーザーの方に実際に使っていただいて、さらにまた課題を抽出・改善し、実現可能なコンセプトづくりをめざしています。

このような、「実際に人を見て、コミュニケーションをとりながら課題のありかを探り、解決するための新しいものをつくる」という仕事をする上で生きているのが、大学院時代の研究経験です。

当時取り組んでいたのは、脳波を用いたリハビリテーションシステムの研究。まず、脳卒中などで重度の麻痺を負って手を動かせなくなった患者さんに、頭に脳波を測定する機器を、手には装具をつけていただきます。次に、手を開くイメージをしてもらいます。脳波が実際に手を動かすときに近い状態になったタイミングで装具を動作させ、手の動きを補助する、というものです。そうしてシステムで補助しながら手を開く感覚をつかんでいただくことで、失われた神経回路を再構築するのです。

今の仕事とは異なる分野の研究でしたが、頭の中で考えるだけでなく、形にして動かしたり使ってみたりすることで、見えてくるものやわかることがたくさんあるということを実感できる経験でした。例えば、リハビリシステムを患者さんに試していただく前までは、「脳波の閾値(いきち)をどのくらいに設定すればいいか?」など難しいことをひたすら考えていましたが、実際に使っていただくとそれ以前のところに課題があって。測定機器の着け心地をもう少し良くした方がいいよ、ということに気づかされるといったことがありましたね。

そういった気づきや、患者さん・医療従事者の方と話すことで見えてくる違和感や課題から解決策を考える経験を重ねたことが、人とコミュニケーションをとって相手を理解・分析し、課題を見つける力や、見つけた課題に対してどうアプローチすればその方たちが喜ぶことができるかを考える力となりました。これは今の仕事でも発揮できる自分の強みになったと思います。

原動力になるのは「やりたい!」という気持ち

私自身はプログラミングを勉強した経験がなく、大学院時代に数値解析ソフト「MATLAB」を少し使った程度ですが、論理立てて考えることは研究をとおして意識してきました。例えば、分析した結果を人に共有する際には、相手の知識量などに応じてどの情報・データを組み合わせ、どんな順番で伝えればわかりやすいかということを常に意識していましたし、今も実践しています。

研究や今の仕事を通じて思うのは、テクノロジーのもつ可能性はすごく大きいということ。新しいものを生み出すことは、今や科学や技術なしにはできません。実際、大学院時代の研究で、理学療法士さんなどによるリハビリでは難しかったことが、脳波を用いたリハビリシステムという科学の力を使うことでできるようになり、患者さんの生活が明るくなったことを目の当たりにして、テクノロジーのもつ可能性の大きさを実感しました。その知識や技術を身につけることは、新しいものを生み出すには大事なことだと思います。

とはいえ、いちばん大事なのは本人の「やりたい!」という気持ち。その意思がないとなかなかやる気は出ませんし、続けることもできません。逆に、自分で「これをやりたい!」というものを見つけられれば、本当に熱中できるし、楽しんでできます。

実は私は、小学生のときに親の意向で5つほど習いごとを経験しています。ただ、自分で選んだものではなかったせいか、どれも続かなくて…。初めて自発的にがんばったのは高校受験でした。受験校を選ぶにあたっていろんな高校を見学して、親から薦められた高校よりもだいぶ偏差値が高い学校に興味をもったんです。「行きたい!」と宣言してからは、必死でがんばりました。

今、仕事と並行して取り組んでいるチアダンスも、同様に自分から大学時代に始めたことです。プロサッカーチームの公式チアダンスチームのパフォーマンスを見て、「やりたい!」と思って始めましたが、ここまで長く続いて、熱中できているものがあるのは初めて。やりたいという気持ちから自発的に取り組むことの大切さを実感しています。

子どもたちに、世の中にある多様な選択肢を知る経験を

世の中が選択肢であふれ、より多様な価値観の中で生活する今こそ、さまざまなことに興味をもち、その中で自分がやりたいと思ったことを自らの意思と力で実現することが必要なのではないかと思います。そのために、まずは多様な人に会ったり、多様な経験をしたりして視野を広げ、世の中にさまざまな選択肢や興味の対象があることを知ってほしいなと思います。そうしてお子さま自身から「やりたい!」と思うことが出てくれば、ぜひ試行錯誤をしながら形にする経験をさせてあげてください。行動したり、形にしたりすることで、また見えてくるものが出てきて、さらに視野が広がると思います。

湯浅さんにQ&A!

Q1.
もし今小学生だったとしたら、プログラミングを学んで挑戦してみたいことはありますか?

A1.
簡単なゲームをつくって、家族や親戚と一緒に遊びたいですね。私は人とつながる瞬間が好きで、その機会を大切にしているので、自分がつくったゲームを母や祖母などが使うことで、家族のつながりを深められるならうれしいことだなと思います。

Q2.
今後、小学生が「プログラミング的思考」を培っていくにあたり、取り組んでおくとよいと思うことは何ですか?

A2.
世の中のことがらに興味をもち、「こうなったらいいのに」と感じたことを自ら解決しようとしてみることですね。

今は、スマートフォンを使えば疑問に思ったことは誰でも簡単に調べられて、知識を得ることができます。その分、得た知識をもとに考え、発信して変えていくことはなかなかやらないし、パワーも必要です。でも、あえてそれをやることで、発信した相手からフィードバックをもらって新たな発見を得たり、もっていた知識についてより深く理解したりすることは、すごくいい経験になるし、これからもっと必要なことではないかと思います。

もし私が今小学生なら、お手伝いをしてもらったおこづかいを管理するアプリなど、何か生活に生かせるアプリをつくって、周りの反応を見てみたいですね。自分の想定とは異なる反応が必ず出てくると思うので、自分にはない意見を知ったり、視野を広げる機会になったりするのではと思います。

 

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