「プログラミング教育」とはどういうものなのか、またその背景にある「STEAM(スティーム)教育」とは何なのかを、わかりやすく紹介します!

STEAM教育・プログラミング教育について、専門家の方々や社会で活躍されている方々にお話をうかがっていきます。

2021年02月03日更新

「好き」で熱中していたものが、仕事にできる“武器”になった

「好き」で熱中していたものが、仕事にできる“武器”になった

世界各国で運営されている子どものためのプログラミング道場「CoderDojo」の一つ「CoderDojo Kashiwa」を高1で地元・千葉県柏市に立ち上げ、高2でテクノロジーを基盤とした未来のための教育をデザインする会社・株式会社Innovation Powerを起業。社長、一般社団法人理事、大学院生という3足のわらじを履き、「テクノロジーを基盤とした新しい教育をつくる」という目標に向かって邁進している宮島さん。小学生のときに出合ったプログラミングの魅力や、学び方などについてうかがいました。

[プロフィール]

宮島衣瑛(みやじま・きりえ)

株式会社Innovation Power代表取締役社長CEO、一般社団法人CoderDojo Japan理事、CoderDojo Kashiwa Champion、学習院大学大学院人文科学研究科教育学専攻(在学中)。ブロックを使って学ぶ教室で、小学校中学年からプログラミングを学ぶ。高校1年次に「CoderDojo Kashiwa」(千葉県柏市)を立ち上げ、高校2年次には株式会社Innovation Powerを起業。柏市教育委員会との協業で市内の小学校のプログラミング教育のカリキュラム開発を手がける。テクノロジーを基盤とした新しい教育をつくることをめざして、プログラミング、ICT、STEAMなどに関する各種教材の研究・開発に取り組んでいる。

※2021年2月時点

高校時代に、プログラミングで地元のお祭りを演出

私が初めてプログラミングと出合ったのは、小学3年生ぐらいのとき。通っていたブロックを使って学ぶ教室に、プログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」を学べるカリキュラムが導入され、おもしろそうだなと思ってやってみたのが始まりです。

実際にやってみると、ブロックとモーターやセンサーを組み合わせて動くものを作ることよりも、それらを動かすプログラムを組む方が好きだと感じました。教室の友だちを見ていると、組み立てることが得意な人がたくさんいたので、自分はプログラムを組む方に力を入れていきました。

ただ、好きだけど得意だったというわけではなく、自分で本当にプログラミングができると思えるようになったのは、高校生のとき。その間、中学受験のためにブランクができて友だちに遅れをとり、中学入学後に集中的にプログラミングをする機会を得てやっとScratchを習得しました。高1で「CoderDojo Kashiwa」を立ち上げたことでプログラマーの方たちと出会え、そこでWebサイトの構築方法を教わることができました。ほかにも、アプリ制作に独学で挑戦する過程で複数のプログラミング言語を学び、これらの経験をとおして、ようやく「どんな言語でも勉強すれば使いこなせそうだ」という感覚を得ました。

そこから後は、プログラミングを使って何かをつくることが本当に楽しかったですね。高校生の間は、ずっと何かをつくって遊んでいた気がします。いちばん楽しかったのは、高校3年生の夏に地元のお祭りのステージ演出をしたこと。「CoderDojo Kashiwa」の立ち上げを通じて地元の方々とのつながりがたくさんできて、お祭りの実行委員会の方々から「ITを使ってステージを華やかにしてほしい」という依頼をもらうことができたんです。うれしかったですよ。

当時は、チームラボさんやライゾマティクスさんなどによるステージ演出が注目されていた時期。自分も、「観客のみなさんのスマートフォンに画面の色を変えられるアプリを入れてもらって、ステージ上の演者がその色を制御できたらおもしろそう…」という構想をもっていました。そこに依頼が来たので、友人たちとこれはトライしてみよう!と。

当時の自分たちの知識と技術ではかなり難しいことで、しかもかなり短期間で実装までこぎつけないといけませんでしたが、連日夜遅くまで試行錯誤を重ねてアプリを完成させ、DJやポリッドスクリーン(透過型スクリーン。屋内外に設置してキャラクターや映像を投影することができる)などと組み合わせて演出を実現することができました。この成功は今でも忘れられない思い出です。

好きだから、熱中してやりきる力がついた

プログラミングを使って何かをつくることを積み重ねてきて、私個人としては、ある種の粘り強さというか、1つのことに熱中して取り組む力がついたと思います。私はすごいプログラマーではないので、一発でうまくいくことはなく、「ああでもない、こうでもない」と失敗や試行錯誤を重ねながらつくりあげていきます。その過程で「これは無理だな」と思わずに、最後までやりきる力がついたような気がします。

いつも原動力になっているのは、「好き」という気持ちです。やりたいこと、形にしたいものをめざして試行錯誤する瞬間が楽しくてたまらないんです。高校時代を振り返ってみても、友だちの家に集まって夜遅くまでプログラムを書いているのがすごく楽しい時間でした。形は違えど、部活動に熱中するのと同じだと思います。そうやって「好き」なプログラミングを磨いてきたからこそ、今私はもう一つの「好き」である教育とかけあわせて、プログラミング教育のカリキュラムづくりやプログラミング教育に関する講演などの仕事をさせてもらえているんだと思います。「好き」を磨くといずれ“武器”になるということは、この数年間ですごく実感しています。

仕事がら、「プログラミングを学んで得られるものは何か?」ということをよくきかれますが、これは答えるのが難しい質問です。ただ、少なくとも子どもにとってプラスであることは間違いないと思います。私の例も含めて、プログラミングを学んだからこそ実現できることや、今までできなかったこと、なかったものをつくってきた人の例が世の中にたくさんありますよね。プログラミングを学ぶ意義の一つは、そこにあると思います。

また、子どもたちが育むべき力として最も大事な力は創造力だと私は考えますが、プログラミングは創造力を育むのにとても向いていると思います。ブロックプログラミングならブロックを組み立てたりバラしたり、また書いたプログラムの一部を変えてみたり、うまくいかなかったら修正したり、という試行錯誤を経て、創造力が育まれていきます。

テキストどおりにやってみたあと、自分で改造してみよう

プログラミングを学ぶ小学生に必ずオススメしているのが、先生の話やテキストのとおりにやってみたあとに、何でもいいのでそのプログラムを改造してみることです。例えば、文字の色を変える、動きの速さを少しだけ速くしてみる。それくらいのことでもいいんです。そうやってちょっとでも自分で改造してみることによって、「なぜ色が変わるのか」「なぜ動きの速さが変わるのか」など、仕組みや構造の理解が深まります

初めてのことを学ぶときって、「テキストに書かれていること以外やっちゃいけないんだろうな」と思いがちですよね。でも、その考えは壊しましょう。私自身、アプリをつくったときにこのことを感じました。本を買って勉強しながらつくったのですが、本に書いてあることを組み合わせたり、本に書いてあることから少しパラメーターを変えたりしてみたことで、少しずつ機能の全容を理解することができたんです。

テキストに書かれていることは、完成というゴールに向かう無数の道筋のなかの一つにすぎません。ほかにもさまざまな道筋があるので、いろいろと触っていくなかで、仕組みや構造の理解を深めていってほしいと思います。

保護者は、子どもの環境を整えることに専念を

保護者のみなさんに対してお願いしたいのは、お子さんの学びに口や手は出さず、環境を整えてあげることに徹していただきたいということです。

プログラミングのワークショップを開催するとよく目にするのが、お子さんの隣ですぐにマウスを取り上げ、自らやってしまおうとする保護者の方。これは本当によくないこと。お子さん自身がやってみて学ばないと意味がありません。手出しはせず、見守っていただきたいと思います。

子どもにとって必要なことは、好きなことをみつけてひたすら取り組む時間と環境です。プログラミングに限らず、保護者のみなさんにはお子さんの「好き」を広げ、深めるためのお手伝いをしていただきたいと思います。その「好き」がやがて誰にも負けない“武器”となり、どんな時代を生きようともポジディブに立ち向かっていくことができるようになるのではないでしょうか。私自身もそのように思い、いまだに「好き」を追い求めています。「好き」を極めたもの同士であれば、いずれどこかで会うこともあるはず。そのときを楽しみにしています。

宮島さんにQ&A!

Q1.
もし今小学生だったとしたら、プログラミングを学んで挑戦してみたいことはありますか?

A1.
私はハードウェアにすごく苦手意識があるので、小学生に戻れるなら、ロボットづくりにトライしたいですね。今なら入門的に使えるハードウェアがたくさんあるので、もう一度挑戦して、苦手意識を払拭したいと思います。

Q2.
ブロックを使って学ぶ教室に通っていらっしゃったとのことですが、どんなところにおもしろさを感じていましたか?

A2.
何もないところから自分の好きなものを思いどおりにつくれることがすごくおもしろかったです。街をつくって街の人になりきって遊ぶことをよくしていましたが、そのときどきで街並みを変えたりして楽しんでいました。
戦隊モノのおもちゃだと、そのグッズを使った遊びしかできませんが、ブロックだと自分で想像したものをつくり、改良することもできます。制約がないなかで自分が思い描いたものを形にするという感覚を磨けたことは、今仕事にしている「プログラミングを使って新しいものをつくること」にも役立っていると思います。

Q3.
小学生・中学生・高校生時代に培った力のうち、今役立っているのはどんな力ですか?

A3.
高校時代、「CoderDojo Kashiwa」の立ち上げと運営や、「Innovation Power」の事業などを通じて大人と接する機会が多く、いい意味で大人との距離感がわかったような気がします。
大人は何でもできるスーパー人間だと思っていましたが、高校時代にたくさんの大人と出会い、大人には大人の悩みがあり、葛藤しながら生きていて、決して完璧なわけじゃないんだと知りました。そこから、自分にも戦えるフィールドがあるのではないかと思うようになりました。それが、私の場合は「プログラミング×教育」だと気づけたことは大きかったですね。

 

 

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