「プログラミング教育」とはどういうものなのか、またその背景にある「STEAM(スティーム)教育」とは何なのかを、わかりやすく紹介します!

STEAM教育・プログラミング教育について、専門家の方々や社会で活躍されている方々にお話をうかがっていきます。

2021年03月10日更新

プログラミングを学べば、論理的思考力や俯瞰する力も鍛えられる

プログラミングを学べば、論理的思考力や俯瞰する力も鍛えられる

紙などのシート状の材料に、電子回路やエネルギー源などロボットの要素を印刷することでロボットを作製する「ペーパーメカトロニクス」の研究に取り組んでいる重宗さん。ご自身の研究や、大学で教鞭を取る中で感じるプログラミングの魅力、またプログラミングをとおして培うことのできる力などについてうかがいました。

[プロフィール]

重宗宏毅(しげむね・ひろき)

芝浦工業大学工学部電気工学科助教/早稲田大学先進理工学部卒業。早稲田大学大学院 創造理工学研究科博士後期課程早期修了。博士(工学)。大学時代に所属した研究室でペーパーメカトロニクスに出合い、研究を続ける。2020年11月にはインクジェット印刷によって紙に印刷した溶液により紙が自律的に折り畳まれる方法を発表。現在は、この方法とすでに成功している「電気配線を普通のプリンターで紙に印刷する方法」とを組み合わせて電子部品や紙製ロボットを製作する方法を追究している。

※2021年3月時点

自律的に動く紙をつくる「ペーパーメカトロニクス」

子どものころから動くものが好きで、その仕組みに興味をもっていました。同時に、「なんで世の中は、こんなにモノが止まっているんだろう?」「家具や鉛筆が人間の指示で動くようになれば、自分は動かなくていいし、何か便利なことやおもしろいことが起こるんじゃないか?」とも思っていました。

そこで、大学は機械系の学科を受験。結果的に応用物理学科に進学しましたが、学んでいく中で、モーターを使ったような機械的な動きよりも、自律的な動き、例えば、触れると動くオジギソウの葉のような動きをモノに取り入れられないか?と考えるようになったんです。そして、研究室の先生の「カップラーメンって、お湯をかけたら麺ができるけれど、器もお湯をかけてできちゃえばおもしろいんじゃないの?」という言葉から、紙にプリンターで特殊な溶液を垂らすと紙が勝手に折れ曲がるとおもしろいのでは?と着想を得て研究を進めています。

ものをつくれるようになることだけが、プログラミングを学ぶ目的ではない

私自身は、パソコンに触れたのもプログラミングを学んだのも大学に入ってからで、学部の授業でCなどのプログラミング言語の概略を学んだのち、大学院で研究を進める際に必要に駆られてjavaやC#を独学で勉強しました。

プログラミングを学び、今、研究で使っている中で感じているいちばんのおもしろさは、その知識と技術があれば、自分がつくりたいものがつくれる、ということ。電子回路の構造を設計するためのソフトウェアをつくるにはプログラミングが必要ですし、回路の解析をするのにもデータを検出するプログラムを書きます。もちろん、ソフトウェアの研究においても、PythonやMATLABなどの言語でディープラーニングのプログラムやニューラルネットワークを組んだりするので、プログラミングは欠かせません。

一方で、プログラミングを学ぶことは、プログラミングを書くため、ものをつくるためだけに役立つものではないということも感じます。例えば、プログラミングでは「動く」という結果を出すために、どのような手順を組めばいいのかを論理的に考える必要がありますから、その過程で論理的思考力が鍛えられます。動かすための方法を知るための情報収集力や、考えた手順が組み合わさったときにどう動くかを俯瞰して見る力も鍛えられます。また、自分がつくったものを自分の中に第三者の目をもって見直し、バグを見つけ出すことも必要ですから、物事を客観的に見る力も培われるでしょう。

さらに、ものづくりだけに限らない、プロジェクトを包括的に見て、優先的に進めるべき箇所や自分が担うべき役割を考え、判断する思考力も鍛えられますし、パソコンそのものや、各種のアプリ、ツールを使いこなすといったテクノロジーリテラシーも身につきます。

したがって、小学生のお子さんがプログラミングを学ぶにあたっては、その目的を「プログラミングができるようになるため」とだけ考えるのではなく、論理的思考力や物事を俯瞰する力などを培うためととらえられると、この先の可能性を広げられるのではないかと思います。

「プログラミングをとおして学んだことは、プログラムを書くことにしか使えないのでは?」と考えがちですが、それは、「ロボットの知識があるからロボットのことしかやらない」などと自分のできる範囲を勝手に決めてしまうのと同じこと。もちろん、お子さん自身に「楽しいから」という思いがあれば十分ですが、保護者の方は、お子さんがプログラミングを学ぶことで培った力がこれからどのように生かせるだろうか?どんなことに結びつくだろうか?と想像力を働かせながら、お子さんの学びを見守っていただけるといいのではと思います。

小・中・高校で培われた、情報処理能力と物事を俯瞰する力

私自身は、今、仕事で発揮できている論理的思考力やプロジェクト全体を俯瞰する力、情報処理能力などは、特定の経験からではなく、小学校から大学、現在にいたるまでのさまざまな経験の積み重ねで培ってきたものだと思っています。

ただ、2つ、小・中・高校時代の経験が今発揮できている力につながっているかなと感じるものがあります。

1つめは、情報処理能力の面です。小・中・高校での勉強の積み重ねで量をこなしてきたことで、「読み書きそろばん」のスキルがついただけでなく、そのスピードも上がりました。今は、論文を読む速さや計算のスピードが人よりも少し速い自覚があります。論文を読むスピードが速ければ速いほど情報収集スピードが上がりますし、そのぶん思考することに割ける時間をつくり出せます。「読み書きそろばん」は速くできるに越したことはないと感じています。

2つめは、個人の特性を見極めること、また、全体を俯瞰する力です。研究室を運営するにあたっては、所属学生の特性を見極め、誰にどのプロジェクトを割り振るかといったことを行いますが、これには、小・中・高校で取り組んでいた野球が役に立っています。監督がなぜそのサインを出したのか、なぜこの打順を組むのか、なぜその人にそのポジションを任せるのか…といったことを考えたり、聞いたりすることなどをとおして、メンバーの中で自分の立ち位置を見極めたり、1人ひとりの良さや特徴を把握してうまく引き出し、最大化するにはどうすればいいか?と考える視点や発想が磨かれました。

「できるようになった!」という経験を積んでほしい

これから学び、育っていくお子さんを持つ保護者の方にぜひやっていただきたいことは、お子さんが「できるようになれるんだ」と実感できる経験を少しでも積めるように、接し、声をかけることです。

例えば、今までできなかったことに挑戦してできるようになったときに「3カ月前にはできなかったことが、できるようになったね、すごいね!」「これを続けるとどうなるかな?」などと声をかけてほしいですね。そうすれば、子どもたちは半年後、1年後にはどうなりたいか?と目標を立ててまたがんばれますし、がんばることで努力を積み重ねることの大切さを知ることもできるのではないかと思います。そして、その過程から、この一生学び続けなければならない時代において、学び続けるための姿勢や、気をつけるべきことも学んでいけるのではないかと思います。

加えて、子どもたちには、主体的に学ぶ経験を積んでほしいと思います。大学で教えていても、主体的に学ぶ学生とそうでない学生とでは、身につく知識量に大きな差があります。「私はこれがやりたいから、そのためにこういうことを学びたい」というものをもっている人は、自主的に学習材料を見つけて行動し、学ぶことができているように思います。主体的に学ぶ経験を、ぜひ小学生のうちから積み重ねてほしいですね。

重宗さんにQ&A!

Q1.
もし今小学生だったとしたら、プログラミングを学んで挑戦してみたいことはありますか?

A1.
コンテストなどに向けてソフトウェアをつくり、他の人と競争する経験をしたいですね。他人と競うことでより一層気持ちが入りますし、良いものをつくりたいというモチベーションも高まり、結果としてソフトウェア開発に必要な知識が身につけられるので。また、将来必要になってくる、人とコミュニケーションをとりながらプロジェクトを回していく力も鍛えられると思います。

Q2.
小学生のうちから身につけておくとよいと思うことは、ほかにもありますか?

A2.
幅広い分野への興味と基礎教養、そして、語学力ですね。さまざまな分野の本を読んだり、さまざま分野の人と話したりするという経験を小さなころから積んでおくと、より広い世界が見えて、選択肢が広がるのかなと思います。語学力については、英語で話す、聞く、読む、書くことができるようになっておくと、より多くの人とコミュニケーションがとれますし、英語の論文もスムーズに読めるので、身につけておくに越したことはないと思います。

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