「プログラミング教育」とはどういうものなのか、またその背景にある「STEAM(スティーム)教育」とは何なのかを、わかりやすく紹介します!

「STEAM教育」とは何か、など、「プログラミング教育」について様々なテーマをZ会プログラミング講座の責任者がやさしく解説します。

2021年01月21日更新

STEAMって、アイロンじゃないんだから! 【第2回:日本のSTEAMは?】

前回(【第1回:蒸気じゃないよ、STEAMだよ】)では、STEAM教育がアメリカ発のものであること、もともとは「STEM教育」から始まったこと、そして、日本とは大きく異るアメリカの教育システムでは、教える内容を組み立てるためにSTEMという考え方があることを紹介しました。それでは、日本ではどうなのでしょう。

日本でSTE(A)Mを教えるということ

前回も触れたとおり、日本の学校には「学習指導要領」があります。学習指導要領にはそれぞれの教科でどのような力を身につけるべきかだけではなく、もっと具体的に「どの学年で何を知るべきか、何ができるようになるべきか」まで記載があります。例えば、小学校2年生の算数の目標に「乗法の意味について理解し、その計算の仕方を考え、用いることができるようにする」とあります。このことから「小学校1年生でかけ算を扱うことを否定するものではないが、少なくとも2年生で身に付けさせるもの」とわかります。教科書も、学習指導要領の内容をカバーするように作られます。

すると、何が起きるか。

学習指導要領に記載のある内容は(ほぼ確実に)扱うが、記載のない内容は扱いづらいのです。教える内容を先生が自分で決められない以上、STE(A)Mの考え方は、教え方の工夫を考える際に用いるくらいしかできません。

●それでも余地がある!

ところが、日本の学校でも、先生方が教えるべき内容を考えなければならないことがあります。2000年より段階的に取り入れられた「総合的な学習の時間」で扱う内容を決める場面です。どの学校でも「総合的な学習の時間」を設けなければならず、学習指導要領には、「(提示された目標を踏まえて)各学校の総合的な学習の時間の内容を定める」と書かれているのです。これはチャンス! なのですが、ご承知のとおり、日本の学校の先生は本当にお忙しい。じっくりと腰を据えて内容を考えられる学校ばかりではありません。意欲的な学校や先生方が独自の取り組みをされた事例はさまざまあるのですが、教えるべき内容に悩んでいる学校も少なくないようです。

あるいは、高校であれば、必要に応じて学校独自の教科・科目を設定することができます(学校設定教科・科目と呼ばれます。宗教系私立高校の『宗教』は学校設定教科の、数学の『演習』は学校設定科目の一例です)。学校設定教科・科目であれば、STE(A)Mの考え方に基づいて教える内容を定めることも可能。このような場面で努力をされてきた先生方も少なくないのではと推測します。

●文科省、動く

STE(A)Mが大切であることは、日本でも認知が高まっています。文科省のウェブサイト上で公開されている文書でも、STE(A)Mの文字を見つけることができます。会議の議事録だったり、中央教育審議会の諮問だったり、教育再生実行会議の提言だったり……。そして、小学校に「プログラミング教育」が取り入れられたことを考えると、学習指導要領策定にあたってSTE(A)Mが意識されたことは間違いないでしょう。ほか、学習指導要領の趣旨をSTEAM教育とからめてどのように実現していくのか、といった検討もなされています。

STE(A)M教育について関心を寄せているのは文部科学省だけではありません。経済産業省や総務省でも、STE(A)M教育に関する支援や、実現のための取り組みを行っています。それぞれの省庁が独自に行なっているものもありますが、3省が連携して取り組んでいる事業があるなど、国としてこうした教育に積極的に取り組んでいくとの姿勢が垣間見えます。

●STEMは大事!

話を戻しましょう。
……どこまで戻すかって? そもそもSTEAM教育はアメリカのSTEM教育から始まった、というところまで戻ります。再び舞台はアメリカです。

前回も触れたとおり、スタートはSTEM教育です。学校の授業内容をSTEMの考え方で構成することにより、科学技術の発展を支える人材を増やしたい、との思いがスタート地点です。それでは、STEMとは「どこまでが」STEMなのでしょうか。

STEMが提唱されたアメリカでもさまざま見解があるようです。例えばアメリカ国立科学財団などでは、物理や化学、数学といったいわゆる科学や工学だけではなく、心理学、政治学や経済学などの社会科学も含めてSTEMと呼んでいます。国土安全保障省や移民税関捜査局では社会科学を除外しており、数学や化学、物理、コンピュータ科学、情報科学などをSTEMと考えているようです。このように、語る人によってイメージするものが若干異なるSTEMという言葉ですが、大事なものであるという意識は誰もが共通してもっています。2000年代から政策を語る場面でも「STEM」という言葉が登場するようになり、例えば2006年のブッシュJr.大統領による一般教書演説では、「米国競争力イニシアティブ」としてSTEM教育の発展がうたわれました。オバマ大統領も選挙公約でSTEM教育の拡充を訴え、2013年にはSTEM教育を重要な国家戦略として位置づけています。アメリカではSTEM教育が15年も前から国ぐるみで推進されてきたのです。

それでは、そのSTEMがなぜ、STEAMになったのでしょうか。

【第3回:STEAMの源流】につづく

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