「プログラミング教育」とはどういうものなのか、またその背景にある「STEAM(スティーム)教育」とは何なのかを、わかりやすく紹介します!

「STEAM教育」とは何か、など、「プログラミング教育」について様々なテーマをZ会プログラミング講座の責任者がやさしく解説します。

2021年01月18日更新

STEAMって、アイロンじゃないんだから! 【第1回:蒸気じゃないよ、STEAMだよ】

「STEAM教育」という言葉があります。
「スチームって……蒸気? アイロンのスチーム……?」
蒸気のsteamとつづりは同じですが、こちらのSTEAMは、Science、Technolody、Engineering、Arts、Mathematics の頭文字を取ってつなげたもの。って、それは一体何なのよ!?

教育の世界でも日々、新しい言葉が登場しています。一見して意味がわかるもの、わからないもの、誤解を招きかねないものも多々ある中で、最近では、横文字の言葉もだいぶ増えてきました。それどころか、アルファベットの用語も着々と増えています。本コラムでご紹介する「STEAM教育」もそのひとつ。説明されてわかったような気になるものの、結局なんだかよくわからないこの言葉、Z会プログラミングシリーズの責任者が解説します。

●STEAMとは?

まずは、お約束のこの説明から紹介しましょう。

STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(工学)、Art(s)(芸術/人文科学)、Mathematics(数学)等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育
*文科省『新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育についてー「総合的な探究の時間」と「理数探究」を中心にー』
https://www.mext.go.jp/content/1421972_2.pdf

この説明で、納得できますか?
もちろん表面的な意味はわかります。なるほど、確かに数学だけ見ても、何の役に立つのとよく言われます。実社会で使えるとわかれば教科の学習意欲も高まるでしょうし、学んだ知識の活用方法を知ることは不確実な社会を生き抜くためにも必要なことでしょう。しかし、こうした考え方は理数系科目だけに必要なことではありません。STEAMだ何だと言わず、国語や社会や体育も含めてやるべきではないのでは、というもっともな意見も聞こえてきます。

いやいや、このSTEAMの「A」に国語や社会の観点が入っているし、最近ではSTEAMにスポーツのSをつけたSTEAMSという言葉もあるんですよ!!

……ここまで来ると、結局「なんでもアリ」に見えてきます。学校で行われている「総合的な学習の時間」はまさに「教科の学びを実社会で生かす」ことを目的に作られたはずです。これまでの学校で行われてきたことを、STEAMという横文字で表現し直しただけのようにも思えてしまいます。それではなぜ、ここまで「STEAM教育」が言われるようになったのでしょうか。

●始まりはアメリカ

20世紀は科学技術が大きく発展した世紀でした。そしてご承知の通り、21世紀に入った今でも科学技術は進化を続け、私たちの生活の中に深く入り込んでいます。電化製品を見ても交通機関を見ても、あるいは仕事のスタイルを見ても、50年前と同じものが今、どれだけあるでしょうか。特にコンピュータ関係の進歩は驚くべきものです。20年前にはiPhoneが存在しなかったなんて、これだけ普及した今から考えると、にわかには信じがたい思いを持つ人も少なくないでしょう。

このような時代に入りつつあることを見据え、アメリカでは1990年代後半から、Science(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)に関する教育が必要であるとの認識が高まりはじめました。高度な技術を支える人材にはこのような知識が必要であること、これらを統合的に教えるカリキュラムが存在しないことなどに対する危機感が背景にあったようです。こうして、まず「STEM」という表現が誕生しました(もともとはSMETという表記だったそうですが、『汚れ』を意味するsmutを連想するとのことでSTEMという並びになったようです)。

●じゃあ、どの教科で?

なるほど、STEMを学校で教えなければならない、それはそのとおりかもしれません。では、どの教科で教えればよいのでしょうか。この疑問について考える前に、アメリカの教育システムを知っておく必要があります。

日本では「この教科ではこの科目を設け、それぞれの科目では最低限この内容を教える」ことが学習指導要領で定められています。教科書は学習指導要領に適合しているかのチェックを受けなければなりません。もちろん、教える先生によって教え方に差は出るでしょうが、日本全国どこに行っても教わる内容は同じです。「北海道では小学3年生は掛け算を教わるが、沖縄では小学3年生ですでに方程式を教わっている」などということは、「学校」で授業を受けている限り、ありえません。

ところがアメリカでは(そこまで極端なことはないにしても)州によって、もっといえば、教える先生によって教える内容が異なります。アメリカには、日本と同じような「学習指導要領」はありません。このような力を身に着けておくべきという基準はあるのですが、具体的な内容は学校の、先生方の裁量に任されています。ですから、同じ教科であったとしても、学んだ内容は「いつ、どこの州のどの学校で学んだか」によって違うことは珍しいことではありません。

良し悪しではなく、アメリカの教育にはこのような自由度があるため、まずは「STEMの各要素をベースにして教える内容を組み立てていこうよ」と考えられます。ところが日本ではその逆で、「どの教科のどの部分にSTEMの考え方を取り入れようか」という考え方になります。

【第2回:日本のSTEAMは?】につづく

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