「プログラミング教育」とはどういうものなのか、またその背景にある「STEAM(スティーム)教育」とは何なのかを、わかりやすく紹介します!

「STEAM教育」とは何か、など、「プログラミング教育」について様々なテーマをZ会プログラミング講座の責任者がやさしく解説します。

2021年09月22日更新

中学校のプログラミング教育の「今」

中学校のプログラミング教育の「今」

小学校で「プログラミング教育」が必修となったのはよく知られていることでしょう。それでは、小学校を卒業したら、中学校や高等学校ではどのようなプログラミング教育が行われるのでしょうか。今回は中学校でのプログラミング教育について解説します。

中学校では10年以上前から必修だった

「2021年度より、中学校でもプログラミング教育は必修となった」といった表現を見かけることがあります。しかし、それは間違いです。実は中学校では、10年以上前からプログラミングは「必修」でした。2012年度より施行された学習指導要領には、「技術・家庭科」の技術について、次のような記載があります。

プログラムによる計測・制御について,次の事項を指導する。
 ア コンピュータを利用した計測・制御の基本的な仕組みを知ること。 
 イ 情報処理の手順を考え,簡単なプログラムが作成できること。

かつて技術・家庭科は「男子は技術科、女子は家庭科」と分かれていましたが、現在では男女ともに技術分野、家庭分野をともに学んでいます。つまり、男女ともに中学校では「プログラミング」がすでに教えられていたのです。

それでは、小学校でのプログラミング教育必修化を受け、中学校ではどのような変化が起きたのでしょうか。2021年度からは、これまでの「プログラムによる計測・制御」に加え「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」についても扱うようになりました。そして、より具体的に「安全・適切なプログラムの制作、動作の確認及びデバッグ等」が身につくような指導をすること、といった記載が加わっています。つまり、これまでもプログラミングが扱われていたが、より広く、より具体的な内容まで扱うようになった、というのが2021年度以降の中学校です。

中学校のプログラミング教育の目的

小学校では、算数や理科といった教科のなかでプログラミングの体験が行われています。ところが中学では、技術・家庭科のなかで「プログラミング」そのものを扱うことになります。その目的は何なのでしょうか。そもそも、技術・家庭科をなぜ中学校で学ぶのかを考えれば、明らかとも言えます。

学習指導要領では、技術・家庭科の「目的」を次のように定めています。

生活の営みに係る見方・考え方や技術の見方・考え方を働かせ、生活や技術に関する実践的・体験的な活動を通して、よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、生活を工夫し創造する資質・能力を(中略)育成することを目指す。

端的に言えば、「身の回りの生活に関する技術について知り、社会をよりよくしていくことを考えるベースを作る」ことが技術・家庭科の目的と言えるでしょう。

ご承知の通り、わたしたちは情報通信技術に囲まれて生活しています。義務教育である中学校で、わたしたちの生活を支える情報通信技術について学ぶのは、時代の流れからしても当たり前のことなのです。もちろん、全員が情報通信技術のプロになるわけではありません。しかし、ここでの学びをきっかけに、プロを目指す子どももいることでしょう。技術の普及の裾野を広げることが、将来的に高度IT人材を確保することにもつながるのです。

中学校のプログラミング授業の事例

理念はわかりました。それでは、実態はどうなのでしょうか。「これまでもプログラミングは必修だった」といいながら、本当にプログラミングが扱われていたのでしょうか。

残念ながら、学校によって、もっといえば、担当する先生によって差があった、というのが現実です。技術・家庭科にあてられる時間は、中1・中2で週に2時間、中3で週に1時間です。この時間内で、例えば家庭科の調理実習も行わなければなりません。技術科で教えるべきすべての内容を扱わなければなりません。とても時間は足りません。さらに、先生の得意・不得意もあります。木工や金工に時間を多く割き、情報に関する技術は「ワードやエクセルをちょっと使う」程度しか扱えない学校は珍しくなかったことでしょう。

しかしそのような中でも、情報の技術に関する指導を厚くしている学校もあります。2021年度からの新学習指導要領の実施にあわせ、プログラミング教育の研究授業を行ってきた学校もあります。例えば、2018年に相模原市の中学校で行われた研究授業では、「クラス内でオンラインゲームを作ろう」といったテーマで授業が行われました。

オンラインゲームの仕組みを再現したもので、ボスキャラについてのプログラムが書かれた「ホスト」に、プレイヤーがアクセスをするためのプログラムを作る、という授業でした。

このような実践は、2020年度までに様々な学校で行われてきました。文部科学省でも、技術・家庭科におけるプログラミング教育の実践事例を集めて紹介しています。興味のある方はぜひ、ご覧ください。

参考:中学校技術・家庭科(技術分野)におけるプログラミング教育実践事例集

2021年度以降、状況がすぐに大きく変わることは考えづらいでしょう。しかし、プログラミング教育の重要性が知られるようになってきた昨今、少しずつ、「プログラミング」も扱われるようになっていくものと考えています。

中学校でのプログラミング教育の課題と対策「受験はどうなる?」

中学生にとっての――もちろん保護者にとっても――関心事のひとつに、「高校受験」があります。中学校でもプログラミング教育が充実してきたことで、高校受験になにか影響は出るのでしょうか。

結論から言うと「間接的には影響がある」でしょう。

まず、わかりやすいものとして「内申点」があります。多くの公立高校では、技術・家庭科も含めた9教科の内申点を入学者選抜に用います。あるいは、私立高校でも内申点を重視するところがありますので、高校受験においては技術・家庭科の成績も大切です。

筆記試験にも影響があることでしょう。「技術・家庭科の試験」が行われることは考えづらいものの、数学や理科、社会などの教科で、融合問題として出題されることも考えられます。あるいは、推薦入試の材料として「プログラミング」が用いられることもあるはずです。検定やコンテストなどの結果、自身がプログラミングした作品が評価される可能性は十分にあります。

それでは、中学生の間に何をしておくべきなのでしょうか。

機会があればプログラミングに積極的に取り組んでおくことが大事です。相模原市の学校の事例のように、公立でもハイレベルな取り組みをする学校があります。そうした経験の有無は、ボディーブローのように、高校での教科「情報」への取り組みや、大学の選択などにも効いてくるはずです。自身で体験することができるのであれば、学校で十分に扱われなくとも対応することができます。

また、プログラミングの経験は技術・家庭科の授業への取り組みにも影響するでしょう。評定には意欲・関心・態度も大きく関わるため、例えばプログラミングのことがわからないならばわからないでもよいのですが、積極的に取り組むことが必要です。「まったくわからない」状態で取り組むのと、「見たことがある」状態で取り組むのでは、後者のほうがよい結果につながることが多そうです。また、高校の教科「情報」では、情報端末の設定などをした「経験」が生きます。「ここまでのことをしておく」ことを考えるよりは、「少しでも触れておく」ことが大事だといえるでしょう。

中学生の間に「何」を学んでおくべきか?

それでは、具体的に「何」に取り組むべきなのでしょうか。

お子さまご自身が興味をもったものにまずは取り組んでみるのがよいと思います。小学生に多く使われているScratchでもよいでしょう。Scratchも思うほど簡単ではなく、工夫次第では、機械学習などハイレベルな内容まで扱うことができます。Webサイトを記述するためのHTML/CSSでもよいでしょう。「プログラミング」ではありませんが、プログラミングを行う際にHTMLやCSSの知識が必要になることがあります。あるいは、「このようなサイトを作りたい」という思いから、Webコンテンツでよく使われるJavaScriptを学ぶことにもつながるかもしれません。また、JavaScriptは、Googleのサービス(GmailやGoogleスプレッドシートなど)を自動化したりする際に使われる「Google Apps Script」のベースにもなっていますので、応用範囲も広がります。

関連記事:【2021年度】プログラミング必修化による小学校・中学校・高校の現状と未来

【完】

 

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