皆さんこんにちは。「問題解決」とは何かについてお話ししていくコラムの第2回目です。今回からは、「問題解決」が行われるプロセスにしたがって、お話を進めていきます。まず、前回のコラムでお伝えした「問題解決の流れ」の図を振り返ってみましょう。

ある問題が解決される際には、概ね上記のようなプロセスを辿ります。このうち、①~③は問題に含まれる課題点を検討する段階、④が具体的に課題の解決策を検討する段階です。そして、①~④で忘れてはならないのが、「多様性の受容」「合意の形成」「社会規範への意識」といった、独りよがりにならず俯瞰的に物事を見つめる姿勢です。これらによって検討された解決策は実行に移され、振り返りを繰り返しながら解決に至ることになります。
今回はこのうちの①~③、すなわち解決策を考える前段階にあたる「課題を検討する」段階について、一緒に考えていきましょう。
前提の理解~まずは「解決」すべき問題を正確に理解する
何を当たり前のことを……と思われるかもしれませんが、まずはどのような問題なのかを正確に理解することが大切です。たとえばあなたが上司に呼ばれ、「工場の生産性を阻害している要因を分析してほしい」というオーダーを受けたとします。あなたは「わかりました」と答え、1週間後、上司に分析結果を提出します。上司の表情は曇っています。
「あのさ、生産性って言ったよね?」
「え? 工場内の就業環境でよくない点を挙げるのかと思っていました」
「申し訳ないけど、また1週間後に報告して」
「はあ……」
あなたが上司のオーダーに応えることができなかったのはなぜなのでしょうか。おそらく「生産性」という言葉が何を指しているのかを理解できず、確認を行わないまま「わかりました」と答え、分析に入ってしまったことでしょう。
また、与えられたオーダーをいったん理解したにせよ、調査を行っていくにつれ次第に本題から外れていってしまうこともよく起こります。結果、レポートにまとめてみたら、あれ、何だか最初に与えられたオーダーから外れているような……まあいいや、時間もないしこのまま提出しよう。これではいけません。
このような不幸な事態を避けるためには、次の2点に注意するのがよいでしょう。
- 調査や分析に入る前に、「何について」なのかをブラッシュアップする
→ 疑問点があれば、5W3Hをもとに質問を繰り返し、何について明らかにするのかを正確に理解する
→ 文書等で問題が課される場合には、条件を表す箇所や重要な情報となる部分に線やマーカーなどを付けておく - 「何について」を理解したら、作業前に必ず見直し、方向がブレない検討を行う
問題解決の起点が定まっていなければ、その先の調査や分析、そして解決策の方向すべてが外れてしまうものです。当たり前だと思わず、早合点せずに、まずは明らかにすべき命題を捉えましょう。
情報の収集~調査の段階で留意すべきことは?
何に対する解決策を検討すべきなのかを正確につかんだら、次に情報を収集します。ここで大切なのは、次の①~③です。
- 信頼できる情報を収集すること
- 情報を多角的に収集すること
- 情報のソースを明らかにしておくこと
まず①についてです。「信頼できる情報」とはどのようなものなのでしょうか。ここで押さえておきたいのは、「量」と「質」という2つの条件です。
アンケートの調査結果を情報として調べてみるとします。このとき、「量」の観点では、サンプル数が多ければ多いほど、信憑性は高いということになります。ただし、サンプル数が多ければそれでよいのかというと、そうではありません。たとえばサンプルとなる対象(標本といいます)に偏りがあるのでは、信憑性が高いとはいえません。年齢、性別、居住地の基本項目に加え、職業、年収、婚姻状況や家族属性などの、社会的・経済的な偏りがないかについても留意する必要があります。また、時代の変化が激しい現代、調査年月が古すぎては意味を持たなくなってしまう点にも注意しましょう。
このように説明すると、そんな完璧な調査結果があるのだろうか……と思いますよね。確かに、調査主体が望む、完璧な調査結果などなかなか見つからなかったりもします。そこでおススメしたいのは、まず、国が公表しているデータを優先することです。たとえば国民全体の消費動向や産業分類別の動向を調査したいのであれば総務省統計局が公表しているe-Stat、市区町村ごとの経済動向を分析したいのであればRESASなどはおススメです。これに加え、民間の調査会社が公表しているデータを並行して収集してみるのがよいでしょう。信憑性の高い調査結果には、必ず基本項目に関する記述が付記されているはずです。また、専門的な調査であれば、査読付きの学術論文をあたるのもよいでしょう。
②の多角的な情報について。情報の収集を行っていて陥りがちなのは、一面的な情報収集に留まってしまうことです。たとえば「スマホゲームが好きな人」について調べていると、好きな理由やどのようなゲームが好きなのか、トレンドはなにかという点に終始してしまい、「好き」を掘り下げていくことを優先してしまうかもしれません。しかし、その裏にあたる情報「好きではない人」まで幅広く情報を収集しておくと、カバー範囲の広い調査となります。次のような樹形図をもとにイメージしてみるとよいと思います。

③は、忙しい中で調査を行うと、調べた情報をとりあえずそのまま書き留めたり、画像として保存したりということが起こるものです。そして数日後、いざ情報をまとめようとした際に、「あれ? この情報ってどこから持ってきたんだっけな……」となってしまう。これは時間的に大きなロスとなってしまいます。情報を調べたら、調べたときに必ず情報のソースを残しておきましょう。ソースを残しておくことは、読み手の再現可能性を担保するためにも必要です。
正確な分析~イメージを疑え!
情報の収集が終わったら、次に収集した情報の分析に入ります。ここでは「分析」の際に陥りやすい例を挙げて説明します。
たとえば、ある企業の売上高と営業利益を表した、次のグラフがあったとします。このグラフからわかることは何でしょうか。

一見すると「売上は伸びているのに、営業利益は伸びていないんだな」、そう思ってしまうのではないでしょうか。では、ここから営業利益率を計算してみると、どうなるでしょう。
2024年度:売上=100百万円 営業利益=10百万円 → 営業利益率=10.0%
2025年度:売上=150百万円 営業利益=20百万円 → 営業利益率=13.3%
2026年度:売上=200百万円 営業利益=30百万円 → 営業利益率=15.0%
あれ? と思った方も多いのではないでしょうか。実は営業利益率、すなわちこの企業の稼ぐ力は伸びているのです。「売上」「営業利益」のそれぞれについて、2026年度が2024年度の何倍になっているのかを考えれば、確かにそうだなとわかりますね。売上は2倍ですが、実は営業利益は3倍になっているのですから。
もちろん、このようなデータであれば棒グラフで表すべきだ、と指摘する方もいるでしょう。売上に占める利益の比率を示すのであれば、並列型の棒グラフで表現したほうがもちろん適切です。しかし、情報の発信側が常に適切な表現方法を考えて発信しているのかといえば、そうでないことは多々あります。そのため、情報の受け手側には、「まず何を明らかにするのか」(この例の場合であれば、「増減金額」なのか、「伸び率」なのか)を意識し、そのうえで「表された数字に立ち戻って」解釈を行うことが求められるのです。
図表などに表されたデータを用いる場合に注意したいのは、必ずしもそこに事実がそのまま表現されているとは限らない、ということです。他にもよくあるケースとしては、非常に増えているor減っているように見えたのに、よく見直したらy軸の原点が0から始まっていなかった……などが挙げられます。解釈を加える際には、「イメージ」で判断するのではなく、おおもとの数値情報に立ち返る、解釈した内容を言葉で表現する際には、数値情報を含めて説明してみる、これは「正確な分析」を行う際の基本中の基本といえます。
課題点の発見~情報の「定義」に注意しながら、比較の上で課題を特定する
ここまでで情報の収集が終わり、各資料を正確に解釈できました。これらの情報をもとに、いよいよ課題点を検討していきますが、その前に今一度、「前提」を思い出しましょう。「何について」の課題点を探すのか、作業前に再確認することが大切でしたね。
課題点を検討するうえで、いちばんしてはならないことは、収集した情報を序列化し、最も重要だと思われる情報のみに依拠してしまうことです。「この資料から読み取れる課題点を検討すればよいだろう」ではなく、「この資料とこの資料を比較すると、このような課題点が見えてくるな」という、「A×B→Z」「A×B×C→Z」という意識で検討することが大切です。そのほうが、複数の情報を高い位置から確認できるため、より大きな解決策に結びつきやすいという特性があります。
複数の情報を比較・検討する際、念頭に置いておかなくてはならないのが、「情報の定義が揃っているとは限らない」ということです。たとえば、学校のテストなどでは言葉を揃え、比較に際しての前提条件を明らかにしているものです。しかし、現実の世界はそうではありません。上場企業の財務諸表などは情報の管理上、必ず定義がなされた言葉を用いての報告が義務付けられていますが、業種や商品種、サービスの範囲には多かれ少なかれ、誤差があります。一例を挙げると、「ドローン」という商品は、国土交通省の書類では「無人航空機」という言葉で表現されていたりします。そうであれば、「ドローン」と「無人航空機」という言葉が定義する範囲に留意して、比較・検討を進めることが必要になるのです。
さて、情報を比較しながら課題点を見出していくわけですが、絶対にこれだという課題点が一義に定まるケースはごくまれといってよいでしょう。比較・検討を行えば、さまざまな課題点が見出せるはずです。したがって、まずは比較・検討の結果見出された課題点を、その粒度・レイヤーを問わずにひたすら書き出してみることをおススメします。思いつく限りの課題点をひととおり出しきったら、それらの情報を眺め、「AはBに含まれるな」「AとBのおおもとの原因はCだな」などと、論理的な関係性を検討します。すると、解決されることで大きな影響をもたらすであろう根本的な課題点が特定されてきます。これを抽出し、解決策を考えていけばよいのです。次のような図をイメージして、整理するとわかりやすいでしょう。

ここまで、今回は「課題を検討する」段階で必要な考え方や姿勢について解説してきました。
次回は、大きな問題の解決につながるクリティカルな「課題」を見出す方法について、深掘っていきたいと思います。
記事執筆者

株式会社オホーツク教育研究所
代表取締役 瀬戸 裕一郎
サレジオ工業高等専門学校 高専事務局 教務学生部 スーパーバイザー
1972年東京生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科教育学専修卒業。
1999年増進会出版社(現Z会)に入社。国語科教材編集や大学生・社会人向け新規事業開発などに携わる。
退社後、2024年に北海道紋別市に移住。2026年にオホーツク教育研究所を設立。
年間支援企業者数35社、社会人指導・評価人数約5,000名。
企業・個人の問題意識に寄り添う支援が持ち味。趣味は北海道内をあてもなく車で走ること。