クリティカルな課題点を発見する

クリティカルな課題点を発見する

皆さんこんにちは。「問題解決」とは何かについてお話ししていくコラムの第3回目です。「問題」を解決するためには、「何を解決するべきか」を絞り込み、明確にする必要があります。ここでは「問題」に紐づくさまざまな解決すべき事象のことを「課題」と定義します。では、大きな問題の解決につながる「課題」を見出すためにはどのような姿勢が必要なのでしょうか。

まずは、これまでのコラムでお伝えした「問題解決の流れ」の図を振り返ってみましょう。今回のお話は問題解決のプロセスのうち、「③課題点の発見」にあたります。

 

一歩引いてみると、別の姿が見えてくる

中学1年生の教科書(光村図書版)に、「ちょっと立ち止まって」という文章が掲載されていたのを覚えている方もいるのではないでしょうか。この文章で紹介されているのは、1915年ごろにデンマークの心理学者・エドガー・ルビンが考案した「ルビンの壺」という次のような絵です。

一見すると壺の絵に見えるのですが、視点をずらして見てみると、左右に人の顔が浮かんできます。いわゆる「多義図形」「だまし絵」「トリックアート」などと称される作品です。著者の桑原茂夫氏はこのような絵をいくつか取り上げることで、視点を変えてみると物事の別の一面が発見できることを説いています。

私たちは、ともすると一度見えた像に囚われすぎてしまうことがあります。ある問題の解決方法を模索している際、すぐにひとつの課題点が見つかったとします。しかし、その課題点が本当に大きな解決を導くものなのかは、この時点ではわかりません。大きな問題というのは、実はさまざまな課題を含んでいるものです。「これを解決すればすべてがうまくいく!」といった課題点をすぐに発見することなどは稀有でしょう。したがって、すぐに見つかった課題点を唯一無二であると決めつけてはなりません。「ちょっと立ち止まって」、すなわち一歩引いて物事を俯瞰的に眺めてみることで、どのような課題点が含まれているのか、そのなかでより大きな効果を及ぼす課題点を特定していくことが、課題点を発見するときに求められる基本的な姿勢になるということを、まずは意識しておきましょう。

 

よりよい課題点の発見は、収集した情報どうしの「掛け合わせ」から生まれる

前回のコラムで、情報を収集する際にはできるだけ多角的な視点で収集することが大切である、というお話をしました。よりよい課題点を発見するためには、収集した情報を多角的な視点で「掛け合わせて」解釈し、収集した情報に通底する広い「課題点」を発見することが大切です。ここでは実際のデータを参照しながら、考えてみましょう。

日本経済の問題点を探るために、実質GDP成長率に着目したとします。すると、内閣府が公表している次の統計資料が見つかりました。

この統計資料をもとにすると、2024年の実質GDP成長率は前期比でプラスに転じており、経済が成長していると解釈できそうです。では、日本経済は成長に転じており、問題ないと考えてよいのでしょうか。さらに資料を探してみると、日本銀行が公表している次の資料が見つかったとします。

先ほどの実質GDP成長率と同様に、2024年の数値に着目してみましょう。すると、同じ期間における「需給ギャップ」はマイナス0.6%となっています。「需給ギャップ」のマイナスは、供給が需要を上回っていることを意味します。すなわち、「供給超過」の状態が続いていることがわかるのです。

この二つの資料を掛け合わせることで見えてくる事実はどのようなものでしょうか。「実質GDP成長率はプラス」であるが、「需給ギャップはマイナス」であるということですので、平たく言えば「工場や企業は動き始めているが、買う人・使う人の勢いはまだ弱い」、すなわち「需要を喚起する」ことが日本経済において重要な課題点であるという結論を導くことができるでしょう。

このように、ある問題点(ここでは、日本の経済成長)を探るのであれば、ひとつの資料に依拠するのではなく、複数の資料を参照し、比較対照することで、より現実に近い解釈が可能になるのです。

 

「連関図」を描くことで、よりクリティカルな課題点を発見できる

収集した情報をもとに重要な「課題点」を見出すための手順をまとめると、次のようになります。

  1. 単一の資料から読み取れることを、できるだけ多く箇条書きで書く
  2. 複数の資料を掛け合わせた課題点を、できるだけ多く箇条書きで書く
  3. 2. で発見された課題点の関係性を検討する
  4. 中心となる課題点を特定する

では、3. の「課題点の関係性を検討する」ためには、どのようなことを行えばよいのでしょうか。ここで覚えておくとよいのが「連関図」という情報の整理方法です。

たとえば、ある地域における人口減少の問題について、いくつかの資料をもとに検討を行ったとします。資料どうしを比較し、見出された課題点が次のようなものだったとしましょう。

これらの課題点から、解決すべき大きな課題を特定するとどうなるでしょうか。そこで、各課題点どうしの関係性を考え、矢印でつないでみると、次のように整理できるでしょう。

つまり、解決すべき大きな課題は「若年層の流出」であり、「雇用機会が少ない」「進学先が少ない」といった要因を解決できる解決策が必要、と整理できるわけです。「結果」の部分は「大きな原因」が解決されることによって改善が見込まれるのですから、「課題点の発見」のフェーズにおいてはいったん横に置いておき、解決策を立案する際にその影響を検証するのがよいということになります。

ここでひとつ、注意したい点を述べておきます。このようなフレームワークは、ともするときれいに作成することに腐心してしまうことが多いのですが、きれいにまとめる必要はありません。自分の思考が整理できればよいのですから、大きな紙に、フリーハンドで書き散らかすイメージで十分です。粒度が揃っているのか否かについても、気にすることはありません。関係性がわかればよいのです。「図を仕上げる」ことが目的なのではなく、「思考を整理し、特定すること」が目的なのです。ビジネスにおけるフレームワークに共通していえることなのですが、完成度を求めるのではなく、整理するための道具として使ってみる、このような姿勢で、積極的に使ってみることをおススメしておきます。

さて、次回からは発見された課題点に対して、どのような観点で解決策を立案しておけばよいのかについて解説していきます。

記事執筆者

記事執筆者

株式会社オホーツク教育研究所
代表取締役
 瀬戸 裕一郎

サレジオ工業高等専門学校 高専事務局 教務学生部 スーパーバイザー

1972年東京生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科教育学専修卒業。
1999年増進会出版社(現Z会)に入社。国語科教材編集や大学生・社会人向け新規事業開発などに携わる。
退社後、2024年に北海道紋別市に移住。2026年にオホーツク教育研究所を設立。
年間支援企業者数35社、社会人指導・評価人数約5,000名。
企業・個人の問題意識に寄り添う支援が持ち味。趣味は北海道内をあてもなく車で走ること。

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