大学入試改革を経て 総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜はどう変化した?

2023年8月2日

カテゴリー : 教育情報全般

大学入学共通テストが初めて行われた2021年度の入学者選抜から、従来の「一般入試」「推薦入試」「AO入試」は、それぞれ「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」という呼び方に改められました。
それにともない、すべての入試区分で各大学が実施する方法(小論文やプレゼンテーション、各教科・科目にかかわる試験、資格・検定試験の成績など)や大学入学共通テストを用いて学力を評価することが必須に。
推薦入試やAO入試の一部が「書類だけで入れる」ような誤解を招きかねないものになっていたため、どんな選抜方法でも学力評価は欠かせないという原則を明確にしたのです。
2020年に掲載した以下の記事では、新しい入試区分のそうした趣旨を解説しています。

 

新大学入試の新しい入試区分とは?学力は必須、多様な評価軸を導入。(2020/05/24)

 

一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜という新しい入試区分になってからすでに4年目。入試の現状はどうなっているのでしょうか。

 

総合型選抜の割合が増加 全定員の2割に

2023年3月末に文部科学省が公表した調査結果*1によると、2022年度入試で定員全体に占める一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜の割合はおよそ5:3:2。
2020年度入試と比べると一般選抜と学校推薦型選抜の割合が減ったのに対し、総合型選抜は13.4%から19.8%へと大幅に増えました
総合型選抜の特色を知るために、国立大学で初めてAO入試を導入し(2000年)、重視してきた東北大学のケースを取り上げてみましょう。
東北大学の2024年度入学者選抜*2におけるAO入試(総合型選抜)の募集人数は659名。一般選抜での募集人数は1,689名なので、総合型選抜での割合は全体の3割近くに達しています。
AO入試を最初に導入した学部の一つで、その後も積極的に募集規模を拡大してきた工学部を例にとると、2024年度入学者選抜での入学定員は800名余り。そのうちAO入試(総合型選抜)の定員が228名を占めます。(共通テストを課さないタイプの選抜が112名、共通テストを課すタイプが116名。)
工学部で実施されているAOⅡ期(共通テストを課さないタイプの総合型選抜)の出願条件は、調査書の学習成績概評がA評価であること。高校での一定以上の成績がまずは求められます。また、筆記試験の配点300点に対して出願書類と面接の配点がそれぞれ150点もあり、学力だけでなく「意欲」をかなり重視。高い学習意欲を持って、入学後も大学での学びに意欲的に取り組む学生を獲得したいという意向が見られます。

 

学校推薦型選抜では理工系学部に「女子枠」を導入する事例も

学校推薦型選抜(あるいは総合型選抜)は、対象者を限定した特別な入試を行おうとする場合にもしばしば用いられます。
たとえば、2010年代、地域医療に従事する医師を確保するねらいで全国的に広がり、今では医学部定員の2割近く(2020年)を占めるに至った「地域枠」も、学校推薦型選抜の枠組で実施されています。
現在、社会的に大きな注目を浴びているのは、理工系学部における「女子枠」の導入があげられます
たとえば、東京工業大学*2は2024年度入試から学校推薦型選抜と総合型選抜で新たに「女子枠」を設けます。 初年度は合わせて58人の規模です。
他にも名古屋大学*2や富山大学*2の工学部が学校推薦型選抜で「女子枠」を導入。
また、「女子枠」での入試を先駆けて実施してきた名古屋工業大学*2、芝浦工業大学*2も今年度以降、定員や規模のさらなる拡大に踏み切ります。
日本の大学の理工系学部では、世界各国と比べても女子学生が非常に少ないのが現状です。文部科学省は令和5年度大学入学者選抜実施要項(2022年6月通知)において、入学者の多様性を確保する観点から「理工系分野での女子」等を対象とする選抜方式の導入を促しました。一般選抜では対象者を大胆に限るのは難しいため、「女子枠」は学校推薦型選抜や総合型選抜の枠組で実施されることになります。国の後押しもあり、「女子枠」の導入は広がっていく可能性が高く、今後は社会的認知を得られるかがポイントです。

 

一般選抜の試験内容はどのように変化したか

総合型選抜や学校推薦型選抜で学力評価が求められる一方、一般選抜では学力以外の多様な評価基準が取り入れるようになりました。
実際、一般選抜でも総合型選抜・学校推薦型選抜と同様に、生徒自身が作成した書類の提出を求めるケースは増えています。しかし、「小論文」「面接」を一般選抜でも課すなど、試験内容・試験科目を大きく変えるまでには至っていません。(特に国公立大学の一般選抜にいて、小論文や面接を実施する割合は2019年度と2023年度ではほぼ横ばいで推移。)
ただし、専攻によっては注意が必要です。一般選抜で小論文を課す国立大学は全体の6%と決して多くありませんが、教育学部では小論文が課せられるケースは珍しくないのです。
たとえば、東京学芸大学*2や横浜国立大学*2の教育学部では一般選抜前期から小論文が課せられます。将来の進路に教員を想定しているのなら、一般選抜であっても小論文が課せられるケースを想定し、早めに対策しておくとよいでしょう。

 

高校時代に心がけるべきこと

総合型選抜や学校推薦型選抜では、出願要件として学校での評定平均が高いこと、課外活動で成果を上げていることが求められる傾向があります。
したがって、これらの選抜方式での受験を考えるのなら、高校生としての日常的な学習習慣がカギを握ります。
とくに、苦手科目(評定平均を下げる科目)を作らないことがポイント。定期テストで良い点数をとるようにする。得点できなかった箇所は必ず復習し、苦手が積み上がらないようにする。学校の宿題、課題をきっちりとこなした上で、できればプラスαの学習を積み重ねていく。そうした日頃の努力が重要です。言うまでもないですが、日頃からコツコツ学習する習慣が身についていれば一般選抜で受験する場合にも有利です。
また、選抜方法を問わず、入試で「学習意欲」を積極的に評価しようとする動きはいっそう強まってきています。(とくに総合型選抜や学校推薦型選抜では顕著。)
だとすると、自分が目指す職業、学びたい学問分野について高校時代から積極的に調べ、将来に向けた明確な目的・目標をもつようにするということも重要です。

 

*1:文部科学省 「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」より

*2:入試に関する情報は更新される場合がございます。各大学の最新の入試情報については、各大学のホームページなどをご確認ください。

 

 

 

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