Z会 × ワコム 新タブレット特別対談
一貫して「書いて、学ぶ」ことを大切にしてきたZ会が、
ペンタブレットの分野で業界をリードし続けているワコムとタッグを組んで開発した、「Z会専用タブレット(第2世代)」。
開発をリードした両社の2人が「かくこと」に込めた双方のこだわりと、ここに至るまでの道のりを語ります。
(構成・文/生沼有喜)
「Z会専用タブレット(第2世代)」が登場し、
Z会の学習体験がさらにスムーズになりました。
祝部 憲孝(ほうり のりたか)
株式会社Z会
通信教育事業本部 中学生事業部
事業部長
中高生向け数学教材作成から教室事業担当まで歴任。生徒の学習体験を知り尽くした上で、アプリ改善プロジェクトや通信教育事業の舵取りを担う。Z会専用タブレット(第2世代)では、ユーザー調査からワコムとの連携・開発まで幅広く手掛けている。
能美 司(のうみ つかさ)
株式会社ワコム
テクノロジー・ソリューション・ビジネス・ユニット
セールス2 グループ1 マネージャー
ワコムのコア技術であるデジタルペンとタッチパネルの技術を顧客に提供する部署に所属。近年は、ペンデータを活かした新たなコア技術としてのデジタルインクの訴求及び、その代表的な活用分野である文教分野でのデジタルペン活用促進に取り組む。
手書きだからこそ
無限に広がるクリエイティビティ
──そもそもZ会がタブレット開発のパートナーとしてワコムを選んだ決め手は何だったのですか。
祝部(Z会) Z会は、「思考し、論理的に伝える力」の習得を重視して、書くことにこだわった教材をずっと提供してきました。デジタル学習でもそこは絶対に変えられない。そういった観点からパートナーを探していたところ、手書きの価値を重んじて、「書く(描く)」ことに非常にこだわった技術開発をしていらっしゃるワコムを知り、ぜひ一緒にやりたい、と。ワコムとなら、Z会が実現したいサービスを一緒に実現できると確信したのが、決め手でした。
──Z会の添削問題というと記述式で長い解答を書くものが中心ですが、「書くこと」にこだわってきたのはなぜなのでしょうか。
祝部(Z会) Z会としては昔から、最終的にアウトプットを出したところをきちんと評価していくことが、学力を伸ばすためにも、教育的観点からも、一番重要だと考えて教材づくりをしてきました。択一式や短答式の問題なら、単なる知識の暗記でなんとかなる。しかし、将来にわたって使えるような応用する力、活用する能力となると、きちんと自分の言葉でアウトプットしていかないと身につかないのです。
──タブレットでもキーボードで文字や数字を入力することはできますが、実際に「手で書く」ことにはどんな意義があるとお考えですか。
能美(ワコム) 手は第二の脳とも言われ、手を使っていろいろなものを創ってきた人類だからこそ、実際に手を使って何かをすることの脳に対する影響というのは大きいと思うんです。キーボードで入力するより、手を動かして文字を書いたり、線を引いたり印をつけたり、図形を描いたりすることのほうが、頭の中が整理されて考えや意見がまとまりますし、記憶にも残りやすい。
祝部(Z会) そうですね。ある程度全体像が見えたものを書いてまとめるにはキーボード入力のほうが効率的な場合もありますが、矢印を引いて関係性を明確にしたり、途中で補足を加えたり図表を加えたりといったことは、やはり手書きのほうが柔軟にできる。思考やアイデアを整理する、まだ頭の中で言葉にならないものを言語化していく過程では、自らの手を動かして書くということは非常に重要な意義があると思います。
能美(ワコム) それに表現、アウトプットという観点から見ても、キーボードでは入力できるものが限られてしまうので、どうしても表現のアウトプットに制約がかかってしまうんですよね。ところが手書きとなると制限が一切なくなって、たとえばグラフや図表、絵など多彩な表現ができますから、クリエイティビティの可能性が無限に広がる。さらにその「手書き」がデジタルな特徴(測定、再生、複製、分析のしやすさなど)を持つことで、もっと新しい付加価値を生む可能性もあるのではないか、と考えています。
ワコムの技術で実現した
紙とペンのような書き心地
──書いて学ぶことを重視した「Z会専用タブレット(第2世代)」では、ワコムのどのような技術が活かされているのでしょうか。
能美(ワコム) 今回採用していただいた技術はAES(Active Electrostatic:アクティブ静電結合方式)という、タッチパネルを使ってペンを検出する技術なのですが、ペンとタッチの両方を微細に調整してコントロールすることで、軽い筆圧でも書ける、ペン先の摩擦感、ペンを傾けて書いてもしっかりとペン先とインクがズレずに書ける、手のひらを誤検知しない、といった点が実現しまして、紙とペンと同じように、手のひらを画面につけながら、なめらかで精度の高い記述を体験できるようになっています。
さらに、デジタルインクにワコムのソフトウエア技術を使っており、ペンが画面に接したときの様々な情報がインクの中にしっかり格納されますので、そうしたデータの蓄積を新たな価値に繋げていただけるのではないかと思っています。
祝部(Z会) 書くことがストレスになるようであっては学習に支障が出てきてしまいますから、レスポンスの速さ、なめらかさというのはZ会としても追求したところです。それと今回、従来機に比べてバッテリー容量、CPU性能ともにアップして、5時間連続して使えるようになりました(※)し、テキストや添削問題、映像授業の読み込みも速くなって、スムーズに学習を進めることができるようになりました。
※内蔵電池の状態や周囲の温度や使用条件により、本機の充電時間と電池駆動時間は変わります。
──紙媒体と比べて、タブレットの利点はどのようなところだと思われますか。
祝部(Z会) そうですね、拡大縮小ができたり、編集ができるというのはすごく大きな利点ではないかと思います。紙の答案ですと、一枚の紙に解答を書ききれなくなって、端っこにすごく小さい字で続きを書いていることがよくあるのですが、タブレットでは書き込む線の太さを変更したり、書いた図表を選択して移動したり、レイアウトを自分で編集しながら解答できるので、会員の方々にも非常に喜ばれています。
それからデジタルならではの良さとして、画面に方眼紙のような罫線を表示できるので、数学などでグラフや図表を書き込む際に便利ですし、いきなり真っ白な解答用紙を見ると困惑してしまうという会員の方にとっても「補助線」的な役割を果たしてくれるのではないかと思っています。
──答案をボタン一つで提出できるというのはすごく便利だなと思いました。
祝部(Z会) そうなんですよ。郵送だと添削されて返ってくるまでに一週間ほどかかっていたのが、タブレットなら、添削者が一枚一枚丁寧に添削しても約三日で返却可能です。作成中の答案も一時保存できるので、時間をかけてじっくりと問題に取り組んでいただくこともできます。
あと大きいのは、タブレットでは全単元のどこからでも取り組めるという点ですね。たとえばある単元を飛ばして、先の単元に取り組むこともできる。この「オープンカリキュラム」が今回の狙いで、答案の提出が止まるとやはり後ろめたい気持ちになって学習が続かなくなってしまうんですよね。その点、詰まったらひとまず置いておいて先に進むことができるというのは、学習を継続させる上で大きなプラス点だと思います。
「値段と性能」「制限と利便性」
バランスの追求に苦労あり
──開発中に悩まれた点や苦労された点はありますか。
能美(ワコム) 今回、画面をB5サイズに大きくしたいというご要望をいただきまして、画面が大きくなるとその分扱わなければいけない面積が大きくなる中で、「これは指、これは手のひら、これはペン」と切り分けてシビアに検知を行なわなければいけないという大変さがありました。弊社のエンジニア部門はかなり頑張ってくれたと思います(笑)。
祝部(Z会) いや本当に、ありがとうございます。画面が一回り大きくなったおかげで、映像授業もいっそう見やすくなりましたし、問題と解答欄を左右に配置しても十分にゆとりがあるので、従来機より書き込みがしやすくなりました。
──Z会側としてはどんなところに苦労されましたか。
祝部(Z会) 書くということに関してはワコムに絶大なる信頼を置いていますのでまったく心配なく進めてきたのですが、従来機においてお客様方からいただいていた「セキュリティソフトが使いにくい」「学習以外には使用できなくする制御(ペアレンタルコントロール)をしてほしい」といったご要望に応えるため別の規格を搭載する必要があって、これが初めてのことで難航しましたね。
最終的には外部のアプリケーションを、お客様の必要に応じて追加でご契約いただく形になりました。学習の妨げになるような機能をどこまで制御するかはお客様にもよりますし、学年が上がるにつれて変わってくるとも思いますので、各自で調整ができるようにしています。
利用対象が小学生から高校生までと幅広いので、安心安全を確保するための制御を行なう一方、GooglePlayで巷のアプリをダウンロードできるなど利便性を上げて、通常のAndroidタブレットとしても長く使っていただけるものになっていると思います。
能美(ワコム) このタブレット、スペックに詳しい方が見たら、「このスペックでこの値段なの!?」と驚かれると思いますよ。今の日本(2023年12月時点)で販売されているAndroidタブレットとしては、値段と性能のバランスがおかしい(笑)。
祝部(Z会) Z会はタブレットで儲けようとはまったく思っていないんですよ。多くの会員の方にZ会の添削を体験していただき、学習を継続していただきたいというところに重点を置いています。ですので、タブレットが入会時のハードルにならないよう、円安で部材が高騰する中、料金を抑えながらもいかにスペックを上げていくか、かなり苦労しましたね。
時間・筆圧・傾きの情報が
格納される「デジタルインク」技術
──先ほど能美さまから「デジタルインク」というワードが出てきましたけれども、どのような技術的特徴があるのか、ぜひ伺いたいです。
能美(ワコム) 中学生と高校生のタブレットコースでは、『WILLTM』(※)というデジタルインクのテクノロジーを提供させていただいているのですが、これは書いたインクごとに時間・筆圧・傾きといった情報を格納する技術なんですね。今回のZ会のタブレットでは、インクをいつどれくらい書いたか、どれぐらいのペースで書いたか、どこで止まったか、後から、何年後に見返したとしてもすべて解析できる形になっています。つまり、会員の方がどの問題のどの部分にどれだけの時間を要したのか、どの部分で深く考え、迷い、ためらい、勢い良く書き進んだのか、学習の軌跡を読み解くヒントになるわけです。
※WILLTM(Wacom Ink Layer Language)は、株式会社ワコムの登録商標または商標です。
祝部(Z会) 復習って、前にやったときの記憶と紐づけないとなかなか次に活かせないというところがあると思うんですね。その点で、記述に時間をかけた箇所、ペンが止まったところがわかる、この「リプレイ・ヒートマップ」機能が役に立つのではないかと考えています。
能美(ワコム) 現段階では時間の情報のみが可視化されていますが、実はペンの筆圧や、画面に対するペンの傾きのデータもすべてデジタルインクの中に格納されているので、そうしたデータをどうやったら会員の方に活かしていただけるかというのは、今後Z会と一緒に取り組んでいくべきトピックになっています。
祝部(Z会) そうなんですよ。実際に対面で指導をしていれば、生徒さんの手が止まった瞬間、考えているのか、それとも詰まってしまったのか、先生は生徒さんの顔色を見ながら、次のヒントを出すかどうかの判断をするわけです。そういった細やかな指導をタブレットでどこまでできるか。今後、筆圧であるとかその他のデータによる分析を加えることで、より個々の会員の方に合った、新しい指導の形が考えられるのかなと期待しているところです。
能美(ワコム) それともう一つ、デジタルインク情報を活用して、筆記量を振り返ることができる「インクジャーニー」という機能があるんですよ。書いた量が増えていくにつれて、東京を出発点にして旅が進んで行くんですけれども、途中途中にランドマークがあって、そこに到達すればそのランドマークにまつわる知識が学べる。「これは知らなかった!」というようなトリビアもあって、かなり面白いんです。
祝部(Z会) 昔受験勉強をしているときに、使っているボールペンのインクがどんどん無くなっていったなぁというところから発想して、せっかく書いて学んでいるのだから、自分が頑張った成果を可視化して何かプラスに働くようなことはできないか、というのがこの企画のベースになっています。
添削問題を解いて、提出して、筆記量を増やさないと見ることができない知識ですので、これを楽しみに学習を頑張ってもらいたいという願いを込めて作りました。
──2024年夏から中学理科と中学社会でサービスが始まる「学び検索チエノワ」というのは、どのようなものなのですか。
能美(ワコム) 情報同士をグラフ形状で可視化する「ナレッジグラフ」という技術を使ったサービスで、Z会の資産ともいえる膨大な教材をもれなく落とし込んでデータを作り、会員の方が何かわからないことや知りたいことがあったときにワード検索すると、関連性のある知識がつながり合って出てくるようになっています。検索したワードから、当初想像もしていなかった他分野の内容にまでリーチできるので、幅広い探求ができるのではないかな、と。
祝部(Z会) 学習の最終的なゴールというのは、学んだことが体系的に全部頭の中に入った状態だと思うんですね。そういう意味では、これとこれが有機的につながっているんだ、ということが可視化できると、好奇心にもつながりますし、学びの深さもどんどん深まっていくのではないかと期待して、まずは体系的なつながりが直感的にわかりやすい中学理科と中学社会から展開していきましょう、ということになりました。
今後のAI時代でより価値が増す
「書いて、学ぶ」Z会の教育
──タブレット学習が当たり前になり、ChatGPTなどのAIが教育分野にも導入されるなど、教育現場での大きな革新が起こっていますが、学習や教育の在り方は今後どう変わっていくと思われますか。
祝部(Z会) 振り返れば、過去にいろいろなものが教育革新につながってきたと思うんですね。電子辞書しかり、Googleなどの検索エンジンしかり、おかげで知識を調べたり、情報をインプットする部分がどんどん速くなってきた。でも、「アウトプットするために学ぶ」という本質の部分はあまり変わっていないと思うんです。今後AIがどれだけ教育現場に入ってきても、人が学ぶことをやめるということはなくて、その時そこにあるツールを使って新しいことをクリエイトしていくために、インプットした様々な知識を有効活用していくんじゃないかと思います。インプットの時間が圧縮できれば、その分、人はアウトプットに時間をかけ、その分量を増やすことができる。そういう意味でも、アウトプットを重視するZ会の教育はこれからも変わらないだろうし、より大事になっていくのだろうなと思いますね。
能美(ワコム) まさにその通りだと思います。私は、AIが広く普及してくると、前後のプロセスが大切になってくると思うんですよ。まず「何をするか、どんなことをしたいのか、して欲しいのか」を考え、それに基づいてどのようにAIに指示を出すか。そこには、発想する力、想像力、独自性などが求められますし、言葉でだけではなく、自分の頭の中にある言語化できないものを絵や図表も合わせて的確に表現し、AIに伝える能力も必要になってきます。そしてAIが出してきた結果に対しても、「これでいいのか、何がいけないのか、どうすればいいのか」と判断し、考え、新たな指示の出し方を試行錯誤しなければならない。こうした能力、技能は、まさにZ会が進められてきた、解答用紙に一から書いて積み上げて考える学習によって培われる部分が大きいのではないかなと思います。
──最後にZ会のタブレットコースを検討されている方々へのメッセージを。
能美(ワコム) 手書きの技術をご提供する道具屋として、この最高のタブレットと最高のペンで書き尽くしていただきたい。実際に体験して、「書くこと」を通じてこれだけの学びができるのだということを発見してほしいなと思っています。
祝部(Z会) Z会としては、添削ってこんなに気づきがあるんだということにびっくりしてほしいですね。そしてたくさん書いていただいて、「インクジャーニー」でどこまで旅ができるか。一緒に旅を頑張りましょう!
能美(ワコム) うまく締まりましたね!
祝部(Z会) Z会のタブレット学習はまだまだ進化していきますので、入会後にぜひ「こうなったらいいのに」「こういう機能が欲しい」といったご意見をいただければと思っています。
──ありがとうございました。
製品仕様
Z会専用タブレット(第2世代)
29,960円 (税込)
Active ES®ペン(専用デジタルペンシル)付属
※Active ES®は、株式会社ワコムの登録商標または商標です。
まとめての受講でお得に手に入る!
実質9,960円で購入できる条件 ▽
※中学生・高校生向けコース対象
✓ 12カ月一括払いで1年間受講
✓ 以下の講座受講条件を満たす