計算力を鍛えよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)


こんにちは、話題のゲーム機はまだ抽選に当たっていない小田です。欲しいソフトの発売が秋ごろとのことなので、それまでに入手できればいいかな、とのんびり構えているところです。宝くじなどもけっこうよく買っていたりするのですが、抽選ってわくわくしますよね。まあ、当たることは少ないので実際に得をするわけではないのですが、発表前の時間を楽しめれば、それはそれでいいかな、と思っています。
 
さて今回は、計算の塗り絵です。足し算ができれば取り組めますので、気軽に挑戦してみてください。

それでは早速行ってみましょう。

 

Stage64:計算力を鍛えよう

図のマスの中で、書かれた数の和が10になっているところを、好きな色でぬりつぶしてください。

問題の意味は、大丈夫でしょう。「和」の意味がわからなそうなら、「足して10になるところをぬればいいよ」と伝えてあげてください。あとは温かく見守ってあげましょう。
 
お子さまが答えを出したら、まずはぬってあるところが本当に「決められた数」になっているかを確認します。例題であれば、「10になっていないところ」をぬっていたら、「ここは足すと○○になるね」と伝えてあげてください。ぬってあるところに誤りがなければ、次に「ほかにぬるべき場所がないか」を確認します。ほかにもぬれる場所があるようなら、「ほかにもまだあるよ」と伝えます。その際、あと何個あるかは基本的には具体的に伝える必要はありません。お子さまの様子を見ていただき、心が折れそうであれば、あと何個あるかを具体的に伝えてあげてもいいでしょう。
 
ぬってあるところの和がそれぞれ「決められた数」になっており、ほかにぬるべき場所がなければ、正解です。

 

難度別に3段階の問題を掲載しています。ぜひ、親子で挑戦してみてくださいね。


▲画像クリックで拡大します(PDFファイル)
 

解答はこちら 
 

ふだん、とくに低年齢の子どもたちには、今回のような問題をけっこうやってもらっています。そういった子どもたちの様子を見ていると、いろいろと面白いことに気づきます。

その中でもとくに大事だと思うのは、“計算”というものにはいろいろなやり方があり、どの方法で計算するかは本来は自由である、ということです。今回の問題のゴールは、「ぬり絵を完成させること」ですね。計算をするのはその過程であって、計算することそのものはこの問題の目的地ではありません。よくよく考えてみると、それはふだんの算数の学習でも同じです。計算ドリルなどの問題は計算するだけですが、それ以外の場面では、問題を解いている途中、知りたい値を求めるために計算することが多いでしょう。その意味では、計算をするときに一番大事なことは、その過程(どう計算するか)ではなく、結果(正確に計算できるか)だと言うことができますね。
 
大人になると、足し算などはあまり「どう計算しているか」は意識しなくなってしまっているでしょう。しかしそれは、単に計算に慣れて、意識しなくても正しく計算できるようになった、というだけの話ではあります。子どもたちを見ていると、そのときどきで自分なりに考えて、いろいろな計算をしてくれます。指で数える、という方法で計算する子もいます。ひとつ「決められた数になる計算」を見つけたら、同じ数のペアを探していく子もいます。「5と6であわせて11なら、片方を減らしてもう片方を増やした4と7もあわせて11のはず」と考える子もいます。どの計算がよりいいか、ということではありません。そうやって、“計算”についていろいろな面からとらえて、そのイメージを豊かにしていくことそのものが大事なのです。
 
5月号で図形のセンスのお話をしましたが、数や計算にも“センス”はあります。数や計算の“センス”も、やはり、数や計算に対するイメージの豊かさです。毎回同じような面でしかそれらと接する機会がなければ、数や計算に対する理解を深めていくことは難しいでしょう。今回のような問題に取り組む中で、自分なりにいろいろな方法を考えながら計算することで、数や計算のいろいろな面を知り、それらと仲良くなっていってほしいと思います。

 


いかがでしょうか。

ちなみに、宝くじがあたったら株をいろいろと買うつもりです。件のゲーム機の会社の株も買いたいのですが、まあ株主になったとしても、抽選で忖度はしてくれなさそうですよね。家電量販店の株はすでに持っているところもあり、そちらの抽選にも一応応募してみたのですが、普通に外れました。世の中そんなもんですよね。日々善行を積みながら、当選を待ちたいと思います。

それではまた来月!

 

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書


「小田先生のさんすう力UP教室」の記事一覧はこちら