さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)
こんにちは、久しぶりに豚バラブロックを買った小田です。Stage70のあとがきで触れていた、圧力鍋で角煮を作る用です。とはいえ、当面その時間は取れそうにないので、ひとまず冷凍庫に突っ込んだだけではあるのですが。時間の余裕ができてから、と言っていると、せっかくの肉が冷凍庫に眠ったままになってしまいそうなので、逆にこちらから時間の余裕を生み出すべく、頑張ってみたいと思います。
さて今回は、計算のパズルです。いつも通り、気軽にチャレンジしてみてください!
それではさっそく行ってみましょう。
Stage72:数のパズルを楽しもう
例題
数字の書かれたパネルがあります。このパネルのマスをいくつかぬりつぶし、残った数字の和が、縦・横どの列も5になるようにしてください。

例題の答え

まずはやはり、問題の意味が理解できているかを確認してあげましょう。あまりわかっていない様子であれば、1列一緒にやってあげてください。たとえば、一番上の段(3,6,2)に注目してもらい、「合計を5にしようと思ったら、どれがいらないかな」と聞いてみます。「6」だと答えられたら、それをぬりつぶすよう伝えてあげましょう。他の数を答えた場合は、その数を隠して(たとえば3と答えた場合は)「残りの6と2をあわせるといくらになる?」と聞いてみます。「6を消したら、残りが3と2であわせて5になる」ことを理解できれば、あとは「縦も横も、同じように全部5になるようにする」と伝えればいいでしょう。「1つもぬらない列があってもいい」ことや「同じ列で2つ以上ぬってもいい」ことも、確認してあげてください。「斜めの列」を気にしているようであれば、「それは今回は考えなくてもいい」と伝えてあげてください。
問題の意味がわかったようであれば、あとは温かく見守ってあげましょう。列の数が増えてくると難しくなりますが、頑張っているところを応援してあげてください。お子さまが答えにたどりついたようなら、1列ずつ「残った数の和が5」になっているか確認してあげます。すべて5になっていれば正解です。5になっていないところがあれば、「この列は○○になっているね」と伝えてあげてください。お子さまが頑張っている間は、1列ずつ答え合わせをしたり、部分的にあっているところについて「ここはあっている」と伝えたりする必要はありません。余計なヒントは出さず、邪魔をしないよう、温かく見守ってあげてください。
レベル1・2・3の問題に挑戦!
難度別に3段階の問題を掲載しています。ぜひ、親子で挑戦してみてくださいね。
解答を確認しよう!
さんすう力UPのポイント
今年度の初め、Stage61で、「“問題を解けるようになること”が目的ではない」というようなことをお伝えしましたね。その回に限らず、いろいろな問題をご紹介してきましたが、そのいずれも、「この問題を解けるようになってほしい」という意味で紹介したわけではありません。その都度お伝えしてきたように、あくまで問題を解いてもらう目的は、その問題に取り組む中で「算数」にいろいろと触れてほしい、ということでしたね。
日々子ども達に算数の指導をしていく中で、算数を学ぶというのは、そもそもとても難しいことなんだなと痛感しています。子ども達が一度授業を聞いただけで、一度教科書を読んだだけで「算数ができる」ようになったら、私の仕事もずいぶん楽になるのにな、と思ったりすることもあります(まあ、それはそれで逆に、私の仕事がすぐになくなってしまい、困ることにもなりそうですが)。「算数を学ぶ」ということの中には、もちろん「知識を得る」ことや「技術を習得する」という要素もあるでしょう。知識は正しい内容の話を聞けば得られるかもしれませんし、技術は訓練を繰り返せば習得できるかもしれません。しかし算数の学習において重要な要素は、それだけではないのです。それらに加えて、「概念を理解する」ことや、さらに言えばその概念を理解したことによって「新しい“視点”を獲得する」こともとても大事なのです。
新しく概念を学び、それに付随する新しい視点を獲得することは、これからその概念を学ぶ人にとっては、とても難しいことです。人は、基本的には、見えていないものについては想像することも難しい生き物です。その時点で自分が見えている世界が、おそらくその人にとってのすべてでしょう。新しい概念を学ぶ、というのは、端的に言って、その世界の外にあるものを理解する、ということなのです。今まで見てきた世界では起こり得ないようなことが普通に起こる世界が、その外にひろがっているのです。それは大きな戸惑いも生むでしょう。場合によっては拒否反応も出るかもしれません。それらをどうにか乗り越えて、新しい世界へ勇気をもって踏み出していく、というのが、「算数の学習」なのです。
すでに「新しい世界」に慣れている人にとって、その“壁”はあってないようなものに見えるかもしれません。一度理解してしまった概念は、「言われてみれば当たり前」と感じてしまうことも多く、そこにつまずく子ども達を見ていると、「なんでそんなことがわからないんだろう」と思ってしまうかもしれません。人間の過去の記憶はけっこうあてにならないものなので、「自分がわからなかったころを思い出せ」とは言いませんが、今、まさに“新しい概念”と向き合う子ども達は、そういった困難に懸命に立ち向かっているんだ、ということは、ぜひご理解いただけたらな、と思います。
新しい世界へ踏み出すためには、その世界のものと少しずつ触れ合い、「意外と大丈夫そうだ」という経験を積んでいくのがいいでしょう。これまでご紹介してきた問題も、これからご紹介していく問題も、その経験を積むためのきっかけ作りが主な意図です。保護者の方には、お子さまがそれらの“新しいもの”と触れ合う様子を見て、その反応も楽しみつつ、その様子を温かく見守っていただけると嬉しいです。
いかがでしょうか。
今年度も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました! 今年度は今回で一区切りですが、また来年度も引き続きいろいろな問題を紹介していこうと思います。年や年度などが切り替わるたびに、なんだか目標も新たにしないといけないような気になったりはしますが、近年は「健康に気をつける」みたいな話しかしていない気もしました。1年を振り返って、そんなに不健康な生活もしていないつもりではありますが、引き続きほどほどに健康的な生活を送っていこうと思います。
それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)
数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。
公式サイト:http://kurotake.net/
主な著書
- 「算数のセンス」の具体的な中身を知りたい方はこちら
『できる子供は知っている 本当の算数力』(日本実業出版社) - 試行錯誤しながら、計算や図形のセンスを鍛えたり、考える力を育んだりしたい方はこちら
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 基礎編』(幻冬舎)
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 計算編』(幻冬舎)
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 図形編』(幻冬舎)
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 論理・文章題編』(幻冬舎) - 中学入試の問題の内容や、その本質が気になる方はこちら
『本当はすごい小学算数』(日本実業出版社)
