ねこの名前

出たばかりの新刊から保護者にも懐かしい名作まで、児童文学研究者の宮川健郎先生が、テーマに沿って子どもの本を3冊紹介していきます。 
今月のテーマは【ねこの名前】です。

 

『ぼくのねこ ポー』中面画像
『ぼくのねこ ポー』より

 放課後(ほうかご)クラブからの かえり(みち)(しろ)い (いえ)の かどを まがったところに、あのねこが いた。
 しましまもようの ねこが、へいの (うえ)に、せなかを (まる)めて ねている。

 

 すずしげなワンピースを着た、銀髪(ぎんぱつ)のおかっぱ頭のおばあさんが出てきた。
「こ、こんにちは。オレ……、じゃなくてぼくたち、ねこを(さが)してて……」
「親分っていうの。ぼくの親友なんだよ」
「トラがらの、ぽっちゃりしたねこです。ふてぶてしい顔つきだけど、人には()れています」
 (みどり)伊吹(いぶき)も言ってくれた。
 おばあさん――安西さんは考えるように首をかしげた。
「きっと、ルノアールちゃんだわ」

 

 


 

『ぼくのねこ ポー』書影

『ぼくのねこ ポー』
岩瀬成子 作、松成真理子 絵 
PHP研究所、2024年 
森くんのねこは、トムという名前で、去年の誕生日にパパがプレゼントしてくれた。「ぼく」は、森くんとあまり話さなくなる。いなくなったねこの話を聞きたくないのだ。家に帰った「ぼく」は、ポーをだきかかえて、「ポーは、ぼくの ポーだよね」という。

 

『きさらぎさんちは今日もお天気』書影

『きさらぎさんちは今日もお天気』
古都こいと 作、酒井 以 絵 
Gakken、2024年 
如月さんちは、商店街で開業している鍼灸院だ。3年前に事故で母さんをうしなった家族、鍼灸師のオヤジと3人の異父兄弟が、お互いのきずなを確かめていく全4話である。「印堂」「大陵」といった鍼灸のツボがもち出されることによって、登場人物の「心」が「身体」のこととして語られていく。
紹介したのは、第3話「七月 うちの親分知りませんか?」。3人がさらにさがしていくと、親分は、伊集院くんという名前でも呼ばれているという手がかりを得る。
第32回小川未明文学賞大賞受賞作品。

 

『きいろい ばけつ』書影

『きいろい ばけつ』
もりやま みやこ 作、つちだ よしはる 絵 
あかね書房、1985年 
きつねのこは、火曜日も水曜日も、何度もまるきばしのところへ行って、黄色いばけつがそこにあることを確かめる。草原にすわって、うっとり黄色いばけつをながめたり、ばけつの横で丸くなって、うたたねをしたり。――「げつようびまで あると いいんだけど。」

 

宮川先生プロフィール写真

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)


1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

 

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