バーバラ・クーニーのクリスマス

出たばかりの新刊から保護者にも懐かしい名作まで、児童文学研究者の宮川健郎先生が、テーマに沿って子どもの本を3冊紹介していきます。 
今月のテーマは【バーバラ・クーニーのクリスマス】です。

 

『世界をもっとうつくしく 絵本作家バーバラ・クーニーがのこしたもの』中面画像
『世界をもっとうつくしく 絵本作家バーバラ・クーニーがのこしたもの』より

バーバラは、からだのぐあいがわるくて(いえ)にいる()(だい)すきでした。ずっと()をかいていられるからです。おかあさんは、自分(じぶん)のどうぐをなんでもかしてくれました。えんぴつ、(かみ)、パレット、えのぐ。
かきかたも、きまりもありません。つかった(ふで)はあらっておくように、といわれるだけでした。

学校で美術を学び、大人になったバーバラは、本の挿絵を描く仕事をはじめる。

ある()のゆうぐれどき、バーバラは、なやのとびらのまえで()ちどまりました。
ななめにさしこむ(ひかり)をあびて()つオンドリのうつくしさに()をうばわれたのです。
それをもとにした、絵本(えほん)のアイディアが(かたち)になったのは、(ちい)さいころとおなじように、ぐあいがわるくてベッドにねているときでした。

 

 ずっとむかし、いまから2000(ねん)ほどまえに、はるか(とお)くの(まち)馬小屋(うまごや)で、ひとりの(おとこ)()()まれました。
 この()はイエスと()づけられ、(おお)きくなると、かしこく、りっぱになって、(ひと)びとに(かみ)さまを(うやま)うことや、おたがいに(あい)しあうことを(おし)えました。その(おし)えは、キリスト(きょう)という宗教(しゅうきょう)になって、世界(せかい)(ひろ)まりました。

 

 


 

『世界をもっとうつくしく 絵本作家バーバラ・クーニーがのこしたもの』書影

『世界をもっとうつくしく 絵本作家バーバラ・クーニーがのこしたもの』
アンジェラ・バーク・クンケル 文、ベッカ・スタッドランダー 絵、福本友美子 訳 
ほるぷ出版、2025年 
バーバラ・クーニーは、2度、コールデコット賞を受賞している。2回めは、ドナルド・ホールぶんの『にぐるま ひいて』(1979年/もき かずこ やく、ほるぷ出版、1980年)だ。
伝記絵本のおしまいには、最晩年のバーバラが新しい図書館の建設を計画したことが書かれている。彼女は、建設工事のはじまる1か月前に亡くなったのだが。

 

『クリスマス』書影

『クリスマス』
バーバラ・クーニー さく、安藤紀子 やく 
ロクリン社、2015年 
絵本は、イエスの降誕の物語を語り、世界各地でどんなふうにクリスマスが祝われてきたのか、その歴史もたどる。サンタクロースは、いつから贈物の運び手になったのか。

 

『クリスマスのくつした』書影

『クリスマスのくつした』
エリナ―・ファージョン 詩、石津ちひろ 訳、ほりかわりまこ 絵 
のら書店、2025年
この絵本のとびらの右のすみには、大きめの字で24と記されている。とびらを開いて、ページをめくっていくと、23、22、21……。クリスマスの朝、靴下のなかのプレゼントを見つけるまでのカウントダウンだ。

 

宮川先生プロフィール写真

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)


1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

 

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