つまずきの「早口ことば」

出たばかりの新刊から保護者にも懐かしい名作まで、児童文学研究者の宮川健郎先生が、テーマに沿って子どもの本を3冊紹介していきます。 
今月のテーマは【つまずきの「早口ことば」】です。

 

『早口ことばがじゃまをする』中面画像
『早口ことばがじゃまをする』より

かえりの(かい)で 先生(せんせい)が いった。
「はーい、あしたから (さん)れん(きゅう)やけど しゅくだいが ありまーす。
早口(はやくち)ことばを かんがえる、ええか~」
「え~っ!!」

(みち)に ミニチヂミ (みち)に ミニチヂミ (みち)に ミニチヂミ

 

拙者親方(せっしゃおやかた)(もう)すは、お()()いの(うち)にご存知(ぞんじ)のお(かた)もござりましょうが、お江戸(えど)()って二十里上方(にじゅうりかみがた)相州小田原(そうしゅうおだわら)一色町(いっしきまち)をお()ぎなされて、青物町(あおものちょう)(のぼ)りへお(いで)なさるれば、欄干橋(らんかんばし)虎屋(とらや)藤右衛門(とうえもん)只今(ただいま)剃髪(ていはつ)いたして、円斎(えんさい)()のりまする。

 

「よおし。じゃあ、これにしよう。アバイケポン!」
「な、なに? それ」
「だからあ、アホのア。バカのバ。イミわかんないのイ。けっとばしてやりたいのケ。ポンコツのポン」

 


 

『早口ことばがじゃまをする』書影

『早口ことばがじゃまをする』
原作 桂 三実、文・絵 あおき ひろえ 
理論社、2025年 
コウタとおとうちゃんが病院へいそいでいるのに、今度は、すごい人だかりで前に進めない。お坊さんが路上パフォーマンスをしているのだ。――「坊主が 屏風に 上手に 坊主の 絵を 描いた⁉」いいにくくて、つまずく早口ことばと、なかなか先に進めないことが重ねて描かれている。ふたりは、おかあちゃんの出産に間に合うのだろうか。若手の上方落語家、桂三実の創作落語が原作の絵本だ。

 

声にだすことばえほん『外郎売』書影

声にだすことばえほん『外郎売』
長野ヒデ子・絵、齋藤孝・編 
ほるぷ出版、2009年 
「「外郎売」は、日本に昔からあった早口言葉をてんこ盛りに詰め合わせた歌舞伎の芸だ。(中略)
この外郎売は、歌舞伎役者・市川團十郎の十八番の一つになっている演目だ。江戸時代に市川團十郎が、ういろう(または透頂香)と呼ばれる中国伝来の丸薬によって自分の持病の咳がとまったことに感謝して、1718年に初演したのがはじめと言われる。」(巻末の齋藤孝「外郎売は早口言葉のお徳用詰め合わせセット」より。カッコ内原文)

 

『あいことばはアバイケポン』書影

『あいことばはアバイケポン』
ばんひろこ 作、羽尻利門 絵 
新日本出版社、2025年 
「春はカマキリ」「夏は夕立」「秋は思い出」「冬はねつを出す」の四つの章でできている。「アバイケポン」「アバイケポン」と言い合いながら、めいとたいき、それに、ふたりが仲良くなっていく、しんごくんの物語が展開していく。

 

宮川先生プロフィール写真

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)


1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

 

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