秘密を教えるとき

出たばかりの新刊から保護者にも懐かしい名作まで、児童文学研究者の宮川健郎先生が、テーマに沿って子どもの本を3冊紹介していきます。 
今月のテーマは【秘密を教えるとき】です。

 

『ひみつだけど、話します』中面画像
『ひみつだけど、話します』より

 何日(なんにち)(まえ)(しゃ)(りょう)()(なか)()いてある、(しゃ)(りょう)形式(けいしき)()(ごう)()もうとしてたら、 
   カチッ 
 とつぜん電車(でんしゃ)()まって()えたんだ。(どう)()(せい)()()みたいにね。 
 (はし)ってる電車(でんしゃ)のドアと、まどがくっきり()えた。 
 へ? いまのなに!?って、どきどきした。 

 

 計画した地下トンネルの真上にあたる地面に、鉄板などで「ふた」をして、その下を()り下げていくことを()(ほん)とした工法だ。 
 ()り下げていって、予定の深さに地下鉄トンネルを構築(こうちく)したら、その上は()めもどす。

 

 


 

『ひみつだけど、話します』書影

『ひみつだけど、話します』
作・絵 堀川理万子 
あかね書房、2023年 
「ぼく」が小川さんに電車の見方を教えたとき、「あっ、いわなきゃよかった、ぼくだけのひみつにしときゃよかった」と後悔したけれど、すぐに、「まぁいっか、小川さんには教えてあげても。」と思う。小川さんは、1年生のとき、鈴重くんにけられて、いたくて泣いていた「ぼく」をおんぶして、家まで帰ってくれたのだ。つぎの話は、「小川まやさんと、ひもあめ」。

 

『東京メトロ 大都会をめぐる地下鉄』書影

このプロジェクトを追え!『東京メトロ 大都会をめぐる地下鉄』
深光富士男=文 
佼成出版社、2013年 
東京には、13の路線の地下鉄が走っている。そのうちの九つが「東京メトロ」の運営だ(そのほかは都営地下鉄)。少し前の本だけれど、2008年に開通した副都心線を最後に、「東京メトロ」はもう新線建設を行わないとのことだから、現在の東京の地下鉄も、本の刊行時と同じネットワークだ。建設工事のことだけでなく、運転士をはじめ、地下鉄ではたらく様々な人の仕事についても、くわしく知ることができる。

 

『ともだちのときちゃん』書影

『ともだちのときちゃん』
作 岩瀬成子、絵 植田 真 
フレーベル館、2017年 
日曜日、「わたし」が、れなちゃんといっしょに、ときちゃんの家にお呼ばれしたとき、ときちゃんがピザを食べながら、首をかしげていう。――「あのね、カメのね」「カメのこうらの(なか)に、なにがあるとおもう?」わたしは「きっとからっぽだとおもうよ」とこたえるのだが、ときちゃんは、「おもいでがつまってるんじゃないかなあ」という。――「むかしの、たのしかったことや、うれしかったこと。」

 

宮川先生プロフィール写真

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)


1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

 

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